10代のための「学び」考 中根千枝

中根千枝

中根千枝

なかね・ちえ
1926年東京都生まれ。東京大文学部東洋史学科卒業後、インドで調査活動を行う。その後、ロンドン大学で社会人類学を専攻。帰国後、東京大東洋文化研究所の講師、助教授を経て、女性初の東京大教授に就任。同研究所所長も務める。2001年、文化勲章受章。専門はインド、チベット、日本の社会組織の研究。

VIEW21[中学版] ともに語る、考える。ベネッセの教育情報誌
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10代のための「学び」考

本当に大切なのは好きな道に進むこと、
思いがあればいつか道は開ける

東京大名誉教授
日本学士院第一部部長
中根千枝

 『タテ社会の人間関係』(講談社・1967年刊)は、代表的な日本人論として今も国内外で読まれている名著だ。著者の中根千枝東京大名誉教授は社会人類学のパイオニアだが、初めから研究者を目指していたわけではなかったという。

中央アジアに思いをはせて

 私が最初に中央アジアを具体的に感じたのは、父の仕事の関係で北京に住んでいた小学生のころです。燃料に使う石炭を運んできたラクダを我が家の前で見て、島国の日本と違い、この地が砂漠へ、中央アジアへ続いていることを実感しました。そこへいつか行ってみたい――。私は幼少時から大陸や奥地が舞台の冒険小説を読むのが好きで、次第に探検家や研究者の書いた中央アジアの本に興味を持ち、「学問がなければ、いい探検はできない」と、大学に進もうと考えました。
 志望校は中央アジアの研究ができる東京大にしました。ただ、戦後間もなくのことで、東京大は女性に門戸を開いたばかり。多くの人に「合格は無理」と言われ、私は受験をやめようとしました。そんなとき、ある先生に「落ちて元々、合格したらもうけもの」と言われ、大いに勇気づけられ幸運にも合格できました。


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