特集 つながる「保護者」と「学校」

牧野カツコ

▲牧野カツコ

Makino Katsuko
まきの・かつこ◎お茶の水女子大名誉教授/客員教授。お茶の水女子大家政学部卒業。お茶の水女子大大学院人間文化研究科教授、および同附属幼稚園園長などを経て現職。著書に『子育てに不安を感じる親たちへ』(ミネルヴァ書房)、『青少年期の家族と教育』(家政教育社)など編著書多数。

VIEW21[中学版] ともに語る、考える。ベネッセの教育情報誌
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【インタビュー2】

保護者同士のつながりを再生し 一人で悩ませない環境を

お茶の水女子大名誉教授/客員教授 牧野カツコ

中学生の子どもを持つ保護者は、どのような気持ちで子育てをしているのか。保護者と良好な関係を築く上でのポイントとは―。現代の保護者を取り巻く環境に詳しい牧野カツコ先生にお話を聞いた。

学校への抗議の背景に保護者のストレス

 保護者と学校の関係を考えるときに、まず今の保護者がどのような状況で子育てをしているのかを理解することが欠かせません。
 先生方に何よりも知っていただきたいのは、保護者は強いストレスにさらされているということです。その要因はさまざまです。子どもが中学生になる時期は保護者自身の親が高齢になる時期と重なりますから、介護に追われているかもしれません。また、今の社会情勢から考えると、夫の仕事がうまくいっていないケースも珍しくないでしょう。更に、中学生は思春期の難しい時期ですから、子育てや進学問題で深刻に悩む親も多い。非行や犯罪に巻き込まれないか。きちんと学校に行ってくれるか。反抗期にはどのように対応すればよいのか。それこそ悩みは尽きません。
 以前なら、同居する自分の親や隣近所の人たちに相談して、解決策を見つけたり、ストレスを解消したりできました。しかし、核家族が増え、地域社会のつながりが弱まった今、悩みを話す相手を見つけることすら難しいのです。乳幼児や小学校低学年のころは地域の子育て教室などがあり、そこで保護者同士のネットワークが生まれることもあったでしょう。ところが、中学生の子を持つ保護者には、そうしたサポートは皆無に等しいのが現実です。保護者が孤立し、ストレスを溜め込むケースは非常に多いと思います。
 近年、学校に無理な要求をする保護者が増えていると聞きますが、その背景の一つには、そうした保護者のストレスがあるのではないでしょうか。私には、抗議や強い主張がストレスのはけ口の一つになっていると思えてなりません。孤立した保護者には我が子しか見えていないことも多く、しばしば「わがまま」としか言いようのない声も寄せられます。「上履きはこれにしてほしい」「体育祭の種目を変えてほしい」といった声はその典型です。


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