指導変革の軌跡 保育園から中学校までが連携し、地域ぐるみで学校の荒れをなくす

VIEW21[中学版] ともに語る、考える。ベネッセの教育情報誌
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地域学校協議会を立ち上げコミュニティ・スクールを推進

 生徒は少しずつ、しかし着実に変わっていった。02年春の卒業式、ついに刺繍服姿の生徒はいなくなった。そんな折、文部科学省の「新しいタイプの学校運営の在り方に関する実践研究」の指定を受けることになった。これが05年からの「コミュニティ・スクール」指定にもつながる。同校は、いきいきスクール推進委員会を発展的に継承する形で「地域学校協議会」(図3)を設置。月1回のペースで取り組み内容を議論していった。その結果、03年9月から、全国初となる「シニアスクール」が開講した(写真1)。生徒減によって生じた空き教室を利用し、20名前後の高齢者が週3日、1日5時間、社会人講師の授業を受けている。朝は自主的に掃除や挨拶運動を行い、中学生と一緒に給食を食べる日もある。今では野球部の応援団まで誕生し、生徒との日常的な交流が行われている。

図3
 「当初は高齢者と学校が互いに力んでいた部分もありましたが、今では自然な形で交流しています。とりわけ不登校の生徒やコミュニケーションが苦手な生徒にとって、高齢者は安心して心を開ける存在になっています」(森谷校長)
 「シニアスクール」の設置については、当初は学校と地域との間で意見の違いがあった。「今取り組んでいることで精一杯」という学校側に対して「ぜひ設置したい」という地域の人たち。講師の確保を巡って押し問答になったが、最終的には学校が対応できないことを納得し、地域の側が動き出した。学校を積極的に開き、教師の多忙な実状を知ってもらっていたことが、こうした議論を可能にしたのだろう。
 コミュニティ・スクール指定終了後も、協議会が年3回発行してきた地域情報誌『ちくたく』は、NPOの運営に切り替え、広告掲載を募るなど工夫しながら継続している。協議会にはパイロット地区指定から10年以上かかわっている地域のメンバーもおり、学校や教育委員会の現状もよく知っている。学校人事にどのようにかかわれるかまで踏み込んで議論を深めている。
写真1
写真1 全国に先駆けて2003年にスタートしたシニアスクールの様子。校区の2つの小学校でも開かれている

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