特集 移行期間の課題と対策
VIEW21[中学版] ともに語る、考える。ベネッセの教育情報誌
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いかに人員を確保し、時間を生むか

――着眼点の一つ目、教員配置に関する共通の課題には何が挙げられるでしょうか。
村松 どの学校でも苦慮するのが、授業時数が増える数学・理科・英語の教師不足でしょう。いわゆる標準法()に基づき本校の現在の教師数で計算すると、県からの加配を考慮しても、この3教科が週4、5時間ずつ不足します。
*公立義務教育諸学校の学級編制及び教職員定数の標準に関する法律
田中 奈良県では現在でも、講師を含めた教師の確保そのものが課題になっています。授業時数が増える教科の教師の負担が増えて学校経営に支障を来すだけでなく、生徒と接する時間が減ってしまいます。校務分掌や学級担任を含めてバランスを取るといっても、限界があります。
村松 行政には、まずは正規教員の配置をお願いしたいのですが、非常勤講師による対応も考えられます。学校規模や生徒数の変動など、各校の状況に応じたきめ細かな支援を期待しますし、校長も働き掛けていきたいですね。
谷合 既に週29コマで運用している学校は実質30コマになり、教材研究や研修の時間、休憩時間が更に減ります。教師の増員が見込めなくても、現行の枠組みで教師が働きやすい環境を整える工夫をしなければなりません。本校では、教師ごとに授業の空き時間に「休憩」を取らせる工夫をしています。以前は16時から一斉に休憩としていましたが、部活指導と重なり形骸化しがちだったからです。
村松 担当教科によって持ち時数に差が出る点も問題です。全面実施後は選択教科が事実上無くなりますから、実技系教科の教師の多くは持ち時数が少なくなります。静岡県では既に中学校間での兼務辞令を出すなど、臨機応変に対応しているところもあります。
谷合 自治体によっては、小学校と中学校との兼務も考えられるでしょう。兼務する教師が小中を結ぶパイプ役となり、「中1ギャップ」の解消や生徒指導や学習指導の一貫性を図れるなどのメリットもあります。
田中 前任校は単学級の小規模校でした。全教科の教師がそろうことはなく、講師か免許外教科担当教師で対応していました。専任でない教師が担当すると、教科のねらいをしっかり踏まえた指導が難しく、授業をただ消化するだけになりがちです。これは生徒の学力保障には大きなマイナスです。新課程の実施に伴い、この問題は小規模校特有のものでなく、全国的な傾向になると思います。

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