特集 移行期間の課題と対策

VIEW21[中学版] ともに語る、考える。ベネッセの教育情報誌
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新課程内容の理解・実践と教科を超えた枠組み作りを推進

――指導内容の質の向上については、どのように取り組んでいけばよいのでしょうか。
村松 新学習指導要領の実施は、教科の本質をとらえ直す良い機会だと思います。学習の量が増えただけでなく、内容が系統的に整理されたからです。指導計画を考えるに当たっては、(1)単元が追加されたもの、(2)部分的に追加されたもの、(3)他学年などに移行するもの、(4)年度によって移行内容が異なるもの、をそれぞれ押さえることが大切です。本校の先生方には、新学習指導要領の「指導計画の作成と内容の取扱い」を理解・実践するようにお願いしています。
谷合 移行措置段階が複雑な社会科は、注意が必要です。学年ごとに3年間を見通した指導計画を立てておかないと、学年によっては未履修の部分が出てしまいます。また、自治体によっては理科の実験器具を複数校で使い回すこともあるでしょう。その場合は他校と使用時期が重複しないよう、学校間であらかじめ指導計画を調整する必要があります。
村松 新学習指導要領では「習得・活用・探究」の三つのプロセスが示されていますが、学力を基礎・基本と活用という二層でとらえていることが大切です。そこで、特に「活用する力」をどのようにとらえて、授業づくりをするかがポイントとなります。例えば、単に理科の実験を増やせば生徒の活用力がつくわけではありません。知識と知識を統合することが活用であり、ある学習課題から、更に別の高い次元の課題が出てくるのが「活用」の授業です。先生方は皆、教科を通して生徒の成長を願っているはず。今までと同じ方法を続けるのではなく、授業の質のレベルアップを図り、授業づくりの観点を積極的に変えて欲しいと思います。
谷合 新学習指導要領では、確かに教科内容を系統的に結ぶタテ糸が出来ました。ただ、中学校は教科間の垣根が高いため、教科間をつなぐヨコ糸は弱いと思います。例えば「電気」は、理科でも技術でも取り扱うテーマですから、教える時期や内容を両教科で検討してもよいでしょう。また、指導順を組み替えやすい社会などの教科では、他教科の指導内容も考慮しながら関連する内容を集めた方が、生徒の理解度は高まるものです。生徒を中心に据え、そこまで踏み込んだ指導計画を立てることが理想ですが、まずは定期考査の問題を教師全員で検討し合うなど、互いの指導内容の理解から始めてみるとよいと思います。
田中 前任校では、全教科の相関図を含めた3年分の全体計画を作り、異教科間でチームティーチングを行っていました。こうしたことを続けると、国語や社会、数学といった教科の枠組みそのものを教師自身が考え直すきっかけにもなります。

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