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特集 2002年度新増設

これからのIT社会を創造し、
ポストゲノム時代をリードする人材を育成

【関西学院大学】
理工学部 情報科学科・生命科学科
総合政策学部 メディア情報学科

 関西学院大学では、2001年8月、理学部を西宮上ヶ原キャンパスから神戸三田キャンパス(KSC)に全面移転。これを機に02年度4月には情報科学科と生命科学科の2学科が新設され、学部名称も理工学部へと改称されることになった。また、総合政策学部にも新たにメディア情報学科が開設されることになり、KSCでは最先端のフィールドを加えた文理2学部6学科体制がスタートする。

■理学部の発展を考えた全面移転

 関西学院大学の神戸三田キャンパスの歴史は、今田寛学長が「我々にとって忘れられない年」という阪神淡路大震災のあった1995年に始まった。「総面積は西宮上ヶ原キャンパスの7万坪を上回る10万坪で、総合政策学部1学部でスタートしましたが、当初から少なくとも二つの学部を設置することが前提として考えられていました」と今田学長。
 それが理学部の全面移転という形になった背景には、西宮上ヶ原キャンパス内の理学部の施設・建物の狭隘化と老朽化という問題があった。機材も日進月歩で発達する理学研究の特性上、将来の発展を考えると限界があると判断したわけだ。
 さらに、移転を機に生命科学と情報科学の2学科を新設し、学部名称も理工学部に改称されることになった。理学部は現在、物理学と化学の2学科で、1学年の恒常定員は計100人(臨定を含めて130人)である。今田学長は「小さいながらも基礎重視という関学の教育理念のもと、その研究成果で社会に貢献してきたと自負しています。しかし、21世紀に脚光を浴びる学問研究に関学風の色彩を加えて新たな展開をしようということになりました」と語る。

■コンテンツ創造の技術者養成

 新設3学科のキーワードは「情報」と「ポストゲノム」だ。まず情報科学科については梶田行雄入試課長が次のように説明する。
 「現在、IT不況と盛んに言われていますが、それは産業の空洞化により、生産拠点がよりコストの低い海外に移され、日本の生産現場が縮小されたためです。言い換えれば、日本では生産現場に関わる技術者はあまり多く求められていないということです。反対に、コンテンツやソフトウエアを考えられる技術者は今後、ますます必要になってきています。情報科学科ではそうした技術者養成のためのカリキュラムを組んでいます」
 具体的には、情報系学部の一般的なモデルカリキュラムから、コンピュータ・テクノロジーのハード寄りの部分が大幅にカットされているという特徴がある。その分、「ディジタルメディア&コンテンツ・クリエーション」という教育・研究領域が設けられ、コンテンツやソフトウエアなど、クリエーティブな分野に力が入れられる。また、クロスボーダー科目といって、「メディア社会論」「コンピュータ・アート」「サイバースペースの法と倫理」「ゲーム理論」など、基礎研究の情報技術を使い、どう情報政策に結び付けていくかを学べる科目も豊富に用意されている。理系の学科だからといって、科学技術を学ぶだけではなく、その技術を社会でどう使い、社会をどう変えていけるかまで学べるのが大きな特徴だ。
 これまではゲームを作るにしても、技術を担当する人間とゲームの内容を考える人間は別々だった。しかし、今後はゲームの面白さを体験し、ソフトを作りながらテクノロジーを考えるというように両方の知識をもった人材が求められるようになってくる。情報科学科では、テクノロジーを重視しながらも、文化やエンターテインメントの分野まで領域を広げ、コンテンツを創り上げられる技術や知識の習得をめざす。

■豊かなIT社会への創造力養成

 一方、情報科学科が主にテクノロジーを学ぶのに対して、社会モデルを作るのがメディア情報学科だ。総合政策学部は、環境問題、人口問題研究に重点をおいてスタートした。
 「当時は今ほど、情報やITが大きな社会課題になると見えていませんでした。ところが、この問題が急速に浮上してきたため」と、梶田入試課長は今回の学科新設の理由を説明する。メディア情報学科で特徴的なのは、従来の文系情報の学科よりも理系色が濃い点だ。「自分たちが構想する情報化社会を作る上で、具体的にコンピュータで何がやれるのかがわからないのでは、いざ政策提案をしようとしても無理です。ですから、コンピュータの中身についてもかなり学習させるカリキュラムになっています」と梶田入試課長。
 テクノロジーの部分にまで踏み込んだ教育で、ITをどう活用すれば人にやさしい豊かなIT社会を築けるかを研究し、IT社会の政策プランナーの育成を目標としているのがメディア情報学科である。
 今回、テクノロジーと政策に大別される情報系2学科が同時に誕生することで、情報の基礎から最終的な社会システム作りまで一連の教育研究ができる環境が整えられたのは画期的だといえる。
 また、2学科が同じキャンパスに置かれたことで、両者の協力がとりやすくなることも注目される。

■ポストゲノムに焦点を当てる

 理工学部には情報科学科とともに、生命科学科も新設される。生物系の学科は、40年前に理学部が開設された当時に予定されながら、諸事情で見送られた経緯があるだけに、今回の新設はある意味では悲願が達成された形だ。
 しかし、その内容は以前の生物学とはまったく違う新しい生命科学を対象とする。20世紀最大の科学イベントのひとつとして、ヒトゲノム(遺伝情報)の解読が挙げられる。しかし、遺伝子配列の解明はゴールではなく、スタートである。今や生命科学はポストゲノムの時代を迎えている。遺伝子がつくる無数のタンパク質が細胞内でどのような働きをしているのかを分子レベルで解析し、ゲノム情報の解読データを病気治療など、社会に役立つものとして活用することが今後の課題となってくる。カリキュラムも必然的にポストゲノムに重点を置いたものになる。
 また、同大学ならではの生命科学ということで、テクノロジーだけでなく、倫理、宗教、法律、経済など、幅広い分野からアプローチしていく。「計8学部を擁する総合大学の利点を生かし、他学部との連携を取ったカリキュラムを組んでいきたいと考えています」と広報室の小野宏氏。
 生命科学の分野だけにとどまらず、幅広い知識を身につけ、しっかりとした生命観と倫理観を持った上で、真に人類に貢献できる研究をリードしていける人材の育成をめざしている。

■発信型の英語教育を徹底

 これからの時代に求められる人材の育成に加え、もう一つ、3学科に共通する大きな特徴がある。それは英語教育だ。
 同大学は「英語の関学」といわれる。今田学長も「英語教育で一番効果をあげているのは総合政策学部です。2年次後半には英語での講義を理解し、コミュニケーションも図れるように、英語能力を高めるための徹底した語学教育が実施されています」と自負するように、その英語教育のレベルの高さには定評がある。
 これからは技術者も単に英語でレポートが書けるだけでは通用しなくなる。今や英語でプレゼンテーションができる英語能力が求められる時代だ。総合政策学部はもちろん、理工学部でも徹底した英語教育が行われる。具体的には、現在の日本人2人、外国人1人という構成にネイティブが5人加わり、生きた英語が学べる体制が強化され、最新鋭機器などを使っての充実が図られる。また、第2外国語の必修をなくし、英語の授業が増やされる。
 こうした発信型の英語教育の成果は、英語力やコミュニケーション能力だけでなく、積極性を培う上でも非常に効果的だという。発信型の英語力を身につけることは、とりもなおさず自分の意見をつくり上げる訓練であり、学生に自信をつけさせ、非常に活動的で積極的な学生が誕生する結果になる。これがひいてはキャンパスの活性化へとつながる。
 前述の通り、KSCは春から最先端の分野を研究する総合政策学部と理工学部の2学部6学科体制となる。今後、新設の情報系2学科をはじめ、学部の枠を超えて互いに有機的に結びつき、相乗効果をあげていくことが大いに期待されている。

■文理2学部6学科による新体制(KSC)
図


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