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特集 全入時代の学生募集戦略

中京大学 高校訪問の徹底

1200校を応援なしでカバー 「募集活動はしない」

 中京大学は、2002年4月新設の国際英語学部を加え、10学部を擁する総合大学となるが、かつては商学部・体育学部の「男子学生でいっぱい」という雰囲気の大学だった。その後、文・法・社会・経済・情報科・経営・心理の各学部を順次増設し、学内を整備・拡充。女子学生も32%に増えた。この間の大学改革を支えたのは「徹底した高校訪問」だ。「中京大学式高校訪問」は募集活動を超えた、「大学づくり」を目的とする情報発信と収集活動だった。

■重点地区は年に5回訪問 「高校生は大学を知らない」

 中京大学は2001年4月、入試・広報の担当部署をそれまでの「入試渉外部」から「入試センター」に改称した。「高校や高校生にわかりやすい名称に」と現場から声があがり、改称することになったものだが、「入試渉外」という一風変わった名称には、中京大学の学生募集の方針がこめられていたとも言える。交渉を重ね関係を築いていくのだ。
 中京大学の志願者(推薦入試・一般入試の合計)は、1994年度以前は3万人を超えていたが、95年度から減少している。ただ、18歳人口が170万人を切った97年度を基準にしてその後の推移をみると、減少幅は小さく、安定していると言える。
 中京大学では、高校からの依頼を受けて訪問するケースを除いて、年間のべ1200校を訪問する。
 「高校生はわが中京大学のことをほとんど知っていない。身近な人物、受験情報誌、あるいはインターネットなどから一部の情報を得るくらいのもので、100人中99人の生徒は中京大学の中身を知っていないのでは? だから、高校訪問を繰り返し、高校の先生を通じて生徒に真の情報を伝達するのです」(入試センター・山崎勝則部長)
 高校訪問の対象校は、全入試の志願者・合格者・入学者を高校別に洗い出し、訪問スタッフの人数とのバランスで決定する。対象地区としては、全国を四つのグループに分け、スタッフを県担当として張りつける。
 第一グループ(第一強化地区)として、地元の愛知・三重・岐阜・静岡の東海4県。この地区は最重点地区だ。現在、愛知・岐阜・三重3県出身の学生は約70%を占める。このグループについては、一校あたり年5回訪問する。
 準地元と位置付けている第二グループは、富山・石川・福井の北陸3県に滋賀、長野を加えた計5県。年に4回訪問する。
 第三グループは、兵庫、広島、福岡の3県で年に2回訪問。
 第四グループは、岡山、山口と四国4県、これに東北6県が加わる。東北地区は全国型の体育・心理の2学部の学部広報が中心となる。このグループは年1回の訪問となる。
 以上の高校訪問以外については、主に受験情報誌を情報伝達ツールとしている。兵庫を除く近畿地区には、通学圏の大学が多いため、訪問対象地区とはしていない。

■中京大学の志願者数の推移
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■5期に分けて訪問 時期に即したテーマを持って

 訪問スタッフは入試センター入試広報課の5人が中心となり、同センター入試課メンバー6人がサポートする。のべ1200校の訪問をこなすには、年間120日程度が出張となる。4泊5日で出かけ、週末には帰宅するという日程が連続する。
 訪問時期は5期を設定(下表参照)。中京大学の中身、主にカリキュラム・教育システムについて説明するとともに、中京大学への要望をヒアリングする。そして各期の主要テーマにそって話す。そのテーマは次の通り。
(1)4〜5月:入試結果報告と入試の変更点説明(第一・第二グループ対象)
(2)6〜7月:オープンキャンパス告知(全グループが対象)
(3)9〜10月:推薦入試説明(第一・第二・第三グループ対象)
(4)12月:推薦入試結果説明と一般入試、センター利用入試説明(第一・第二グループ対象)
(5)2月:一般入試・センター利用入試結果(判明分)報告(第一グループ対象)
 第一グループについては全5期すべて、訪問することになる。
 中京大学では、事前に高校にアポを取り付けることはしない。先生に負担をかけてしまうことを懸念するからだ。
 「進路指導の先生は極めて忙しい、という認識が前提です。あらゆる人たちが訪問してくる。そんな先生に貴重な時間をいただくのだから、先生からいただける時間が5分なら5分なりの構成を、15分ならそれなりの構成を考えて臨みます。進路指導部の先生に会えないのなら学年の先生に、それが無理ならメッセージを残すなどの対応をとります」(山崎部長)

■高校グループ別訪問時期
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■「高校訪問は絶対必要」 学生募集ではなく大学づくりのため

 「募集活動をしてくるな」というのが中京大学の高校訪問の鉄則。中京大学の魅力と情報を伝え、先生から情報をもらってくることを目的にしているからだ。
 訪問の時期が近づくと、その都度、説明内容について十分な打ち合わせをする。ヒアリングするテーマも決める。
 近年、高校訪問の難しさが増している。高校の先生が多忙で時間を十分に取ってもらえないことが多い上、いつも同じ先生に会えるわけではない。したがって、他の先生や生徒に情報が伝わらない可能性がある。遠方の高校には年に1〜2回しか行けないので十分なコミュニケーションがとれない、などの問題が積み残される。
 しかし、中京大学はこれまでの方針を崩そうとはしない。「高校訪問は絶対に必要です。高校側の意見や要望を十分に聞いて、それを大学づくりに生かす。高校訪問で得た高校の意見やニーズが大学改革に結びついています。さらに先生に中京大学のファンになってもらうという目的があります。この目的を果たすためには訪問スタッフの人間性や努力が必須です。真剣勝負で熱意を持って先生に接するのです」(山崎部長)
 訪問スタッフはそれぞれの時期に応じた、進学指導や志望校選定に役立つ資料やデータを作って持っていく。
 山崎部長は言う。「生徒にはカウンセラー、先生にはコンサルタント。これができなければ高校訪問の意味はなくなります」と。訪問スタッフにはこれらのスキルが求められるため、入試センターでは、ハイタイムの時期でも他部署や教員に応援を求めることはしない。高校訪問に在校生を絡めることもしない。それだけ、スタッフの負担は大きい。
 スタッフは大学広報を入り口とし、大学づくりの情報を集約するプロ集団なのだ。

■第三者による広報が理想 社会全体に情報を

 これからの大学広報について山崎部長はこう言う。「第三者広報とでもいうのでしょうか。大学関係者でない人が、中京大学のことを、いい大学だと言ってくれる。これほど理想的な広報はないでしょう」
 そうなると、情報の発信先は高校だけではなくなる。大学広報は「社会全体に対して行っていくべきものであると痛感」している。
 入試センターに置かれている小さなリーフレット「中京大学ミニガイドブック」には入試関連の情報は一切書かれていない。大学情報の発信が広報活動のポイントなのだと、冊子は語っているようだ。

■中京大学センタービルには公開施設も多い
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