Between 2002.7・8
特集 アドミッションズ・オフィスの役割

【レポート】 「学生をいかに受け入れ、どう育て、送り出すか」を重視し
入試から卒業後までを支援

東京家政大学 進路(入試/就職)支援センター

 東京家政大学が2000年度に設置した進路支援センターは、アドミッションズ・オフィスの機能と就職支援という、従来は別々の部署が担っていた部分を統合した点で注目される。同センターの設立の狙い、背景、および具体的な活動などについて、岩井絹江課長に聞いた。


AOという名称をあえて避ける

 入試広報室と学生部の就職関連部門を統合した進路支援センター。入試も扱う部署でありながら、アドミッションズ・オフィスという名称をあえて避けた理由について、同センターの岩井絹江課長は次のように語る。
 「アドミッションというと、どうしても志願者を集めるための戦略的な組織というイメージになります。本学は、学生支援、つまり学生をいかに受け入れどう教育し、社会に送り出すかという視点に立ち、入学段階だけでなく、学生の一生を支援していこうということで、この名称にしました」
 学生募集環境が大きく変化していることを指摘し、「それぞれの大学の教育に共鳴する学生を入学させ、責任をもって教育し社会に送り出す。さらに、在学中だけの関係に終わらず、卒業後も支援し続ける。大学としてそういうメッセージを発信していきたいのです」
 実際、進路支援センターの業務は、中学・高校を対象とした入試広報から就職、卒業生の再就職まで、多岐にわたる。在学生のキャリアアップに関しても、生涯学習センターや国際交流センターと連携し資格取得・留学支援などに積極的に取り組む。入試だけでなく、大学生活や就職など入学後、さらには卒業後の情報も縦割組織でなく連携して提供できるため、進路に悩む高校生にとっては自己の将来像を具体化しやすく、大学に対する信頼度も自ずと高まる。また、現在の就職動向など生の情報を提供できるため、高校の進路指導担当者にも興味を持ってもらえるという。



高校にも「学生の声」を届ける

 同センターの広報戦略や学生支援において要となるのが、毎年、全学生を対象に実施しているアンケートだ。これは大学生活や授業、進路に関する後輩へのアドバイスなどを自由記述させるもので、すでに約10年分の回答が蓄積され、職員は折に触れて読みなおすという。アンケート結果は整理した上で教員や関連部署にフィードバックし、教育改善の一助としている。
 また、このアンケートは、生の声のままで入試形態別の『合格応援BOOK』として受験生に配布。進路支援センターのスタッフが高校訪問する際の有効なツールにもなっている。
  「以前は、『家政大学』というだけで、なかなか興味を持ってもらえないこともありました。現在では、その高校の出身学生が書いたアンケート用紙を持参するようにしています。その学生の意識が在学中にどう変化しているか、教育効果の表れを生の声で示すことにより、本学の教育方針や現状を理解してもらえます」と、岩井課長は語る。



職員間の意識共有化を図る

 進路支援センターの発足には、もう一つ別の狙いもあった。  「入試関連の部署は常に外部からの評価にさらされ、少子化の中で危機感を抱いています。それに対して、就職関連の部署は、就職希望者を対象とした数字とはいえ、例年100%という就職実績に満足しがちです。そのため、学内でどんなに議論しても、両部門の危機感がまったく違うのです。きちんとした教育をして学生を送り出すには、共通の認識を持つことが大切です。そこで、入試と就職部門を統合し一体となって業務にあたることで、危機意識の共有化を図ろうと考えたのです」



所長以外はすべて職員で運営

 現在、同センターには、所長、課長のもと、就職関連4人、入試関連6人のスタッフが常駐するが、所長以外はすべて職員である。しかし以前の事務組織は、教員主体だったという。改革に取り組んだのは昭和40〜50年代にかけてで、職員自身が法規の知識やカウンセリング・交渉能力などを備えるため、積極的に外部の研修会に参加。努力が認められ、次第に業務を委譲されるようになった。
 ただし、完全に職員だけの組織にしてしまうのは、問題があると岩井課長は指摘する。「教育との一体化、教授会との連携を図ることが大切ですから、所長は教員が務め、実務は職員が担う形にするのが自然だと考えています」
 入学後のケアと結びつけた形での学生募集という視点がこれからの大学には求められる。東京家政大学の場合は、就職、卒業までをトータルに支援するという独自のポリシーが確立されていれば、「アドミッションズ・オフィス」という名称にこだわる必要もないということを教えてくれるケースといえそうだ。


東京家政大学

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