長引く不況の影響で超氷河期といわれる就職戦線が続いているが、職業観の多様化など学生側の意識も変化しつつある。多彩な資格講座や企業とのインターンシップに取り組む愛知淑徳大学進路支援センターでは、そうした学生の進路意識の向上を目的として、2001年10月から1、2年生を対象に、「PDC(Plan-Do-Check)サイクル」を核とした早期進路教育「キャリア教育」もスタートさせた。
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31の多彩な資格・対策講座を開催
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愛知淑徳大学は、1905年に開設された中部地域を代表する伝統校だ。95年度に女子大学から共学に移行し、現在は文学部、現代社会学部、コミュニケーション学部、文化創造学部の4学部8学科のほか、大学院3研究科を擁する。
同大学の01年度の就職内定率は約95％。4年制大学、特に文科系大学卒業者の就職率の低下が指摘される中で着実に実績を挙げている。その背景には、4、5年前から開設している各種資格取得・対策講座や、夏期長期休暇を利用した企業などへのインターンシップの実施などがある。
資格取得・対策講座は計31講座と全国でも有数の多さ。専門学校から講師を招いているが、受講料は学外で受ける場合の半額以下に設定している。ラインアップには一般旅行業務取扱主任者をはじめ、実用英語技能検定、word、excelといったパソコンソフト試験（MOUS試験）、行政書士、ファイナンシャルプランナーなど24の資格取得対策講座、公務員、マスコミといった五つの業界別講座、そして就職試験対策を目的とした2講座が並ぶ（図表1）。一方、インターンシップでは、トヨタ自動車、東海総合研究所など中部圏の代表的な企業と連携をしており、毎年50人程度の学生が参加している。
このように出口指導に力を入れる中、00年度は「就職課」の名称を「進路支援センター」と改めた。「大学卒業後の進路は、就職ばかりでなく進学、あるいは公務員試験のための浪人など様々です。名称の変更には、それらの学生の出口すべてを掌握しバックアップしようという意図があります」と、同センターの犬飼昭式所長は説明する。
職員数も数年前から少しずつ増やしており、就職課時代の8人から現在では16人になっている。そのうち10人が学生からの相談に常時応対している。こうした体制の強化もあって、01年度に同センターを訪問した学生は4年生だけでのべ約2300人。平均して学生一人あたり2、3回ほど相談に足を運んだことになる。
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PDCサイクルで学生に自発的なレベルアップを促す
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相談体制の充実に加えて、低学年の進路指導にも目を向けた。昨今、大学を卒業しても就職しない学生が増加しているが、低学年における進路問題への関心の希薄さが就職対策の遅れにつながっている部分もある。
そこで、早くから進路に対する学生の意識を高めようと、昨年10月から「キャリア教育」という早期進路教育プログラムを導入。同センターの職員や外部の企業家などが講師となり、進路に関連した授業などを1年生に1回、2年生秋から3年生夏にかけて10回にわたって行っている。学生自身が自分の進路適性を見極めるための自己分析の授業・実習や、政治・経済の動向、給与、税金といった社会システムの知識、対人関係や自己表現法など組織の中での対人ノウハウを学ぶグループワークなどがテーマに掲げられている（図表2）。このプロセスを経ることで、3年生から行われる業種別研究や、企業のエントリーシート作成など実際の就職活動に向けた進路支援ガイダンスへの移行もスムーズになる。
キャリア教育の核となっているのは企業の管理・運営に用いられる「PDCサイクル」というマネジメント手法だ。2年生のプログラムの初期に、学生自身に年間の目標を立ててもらい、その実行結果を修了時に自己評価させることで、自主的なレベルアップを促す。
目標をクラブ活動、アルバイト、資格取得や講習会参加など知的活動、趣味・ボランティアといった余暇の過ごし方や、貯金額、進路選択など学生生活全般にわたる8項目について設定する。その実行状況は学生自身が評価した後、目標の立て方や評価が適切だったかを同センターの職員がチェックし、学生にフィードバックする。
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2回の適性テストで成長過程を振り返らせる
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このPDCサイクルに積極的に活用されているのが適性テストだ。1、2年生に各1回ずつ実施し、まず1年生の希望者（259人）には「自己発見レポート」を受けさせ、外向的、内向的といった自分の性格や、社会に出た時に求められる適応力、ストレス耐性、自己統制力など社会的能力の傾向、学習スタイル、基礎学力、職種に対する興味など五つの側面を分析し、社会や他の学生の中での自分のポジションを認識させる。そして今年度から2年生の希望者にも「自己プログレスレポート」を実施し、進路選択にかかわってくる自分の価値観や職業観、キャリア観などを探る。「自己発見レポート」が学生自身の弱み・強みを早期に理解し、自ら4年間の目標を設定させる支援ツールだとすれば、「自己プログレスレポート」は自分自身をさらに探究し、間もなく迎える具体的な進路選択の土台を築くための支援ツールとなる。
犬飼所長は、これらのテストの狙いについて「期間をおいて2回実施することで、この間にどれだけ成長したかを学生自身が理解することができます。職員はそれを踏まえて学生と個人面談し、今後の目標を明確化させるのです」と説明する。適性テストによって、学生自身に進路の方向性が見えてくれば、資格取得・対策講座やインターンシップ先を選ぶのにも役立つ。いわば、進路支援カリキュラム全体に対する波及効果も期待できるわけだ。
昨年は初年度ということで、キャリア教育は2年生のみに行われた。単位認定されていないこともあり、受講者は全体の2、3割程度だったが、「就職についての流れがわかった」「今まで考えもしなかった進路があることに気づいた」「就職活動をしている自分が想像できずにいたが、（就職に対する）緊張感と『やらねば……』という意欲が持てた」など学生側の反応は好評だったという。
犬飼所長は、「キャリア教育をより多くの学生に広げていきたい。そのためには、正課に組み入れることが必要不可欠だと思っています。一部の学科では、一般社会常識やマナーなどキャリア教育と重なる授業を設けているので、今後はそれらを整理したり、教育体制を充実させるよう検討していく予定です」と、今後の方向性を語った。
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