Between 2002.10 特集　学生へのキャリア支援　Part 2 〜企業が求める人材像
【レポート2】 シチズン時計（株） 新卒者への契約社員制度導入で成果と報酬の関係を明確に意識づけ
今年度初任給に100万上乗せ 　シチズン時計（株）では、4月下旬以降の一部職種の採用において、完全成果主義の年俸制で1年ごとの契約社員として雇用する「Career Build社員」制度を実施している。大卒以上が対象。2003年度の新入社員に加え、この間の中途採用者にも適用している。今回募集したのは、（1）スペシャリスト指向コース（専門分野でグループを代表するスペシャリストを目指す）（2）マネージャー指向コース（希望の事業分野でのローテーションを通じて事業全体の責任者を目指す）（3）ゼネラリスト指向コース（各部門、各機能をローテーションしながらグループ全体を見渡す参謀、経営者を目指す）の各職種（図表1）。 　この制度では住宅手当や退職金がない分、初任給は02年度より100万円ほど高い600万円に設定。さらに業績に応じて最高で120万円のインセンティブが付加される。次年度以降は成果に応じて年俸が改定され、ダウンもあり得る。ただし新卒者は最初から目標設定を行うことが難しいため、最長3年間は移行期間として年俸を固定。希望すれば2年目からでも年俸制に移行できる。 　終身雇用と年功序列の慣行に一石を投じるこの制度は、全社的な構造改革を進める中で浮上した。時計市場の成熟による消費動向の変化に対応するため、技術開発体制を市場に密着させる目的で研究所の開発部門を所沢市から東京に移転。国内外の生産体制強化に向けグループ再編も進めている。 　これらと連動して人事制度を見直し、00年にはまず管理職に年俸制を導入、社内公募や異動希望申請などの制度にも取り組んでいる。そして新卒採用の議論では、「必要な人材が変わってきた」という意見が多数を占めた。人事部人材開発グループのリーダー・関野元男氏は、「これからは、与えられた仕事をきちんと進めるだけではなく、社の構造改革方針に沿って自ら現状を打開し、改革を推進できる人材が不可欠」と話す。 　その人材を同社が具体的に表現した告知が、（1）自ら考え行動し、変化する環境に対応できる能力をもつ（2）創造性を発揮し、具体的な成果と事業活力をうみ出す（3）成果と報酬の関係を明確に意識し、行動するプロフェッショナル意識を持つ――である。こうした人材に対する適正な処遇として、完全成果主義による年俸制という新制度に至ったのだという。 中途採用で補充も 　同社では今回初めてweb上での募集を実施。会社説明会へのエントリー者には、事業の詳細に関するプレゼンテーションをパソコン上で見るためのIDを与えた。募集対象の事業分野と職種が細分化されており、ある程度イメージを明確にした上で説明会に臨んでほしいと考えたからだ。 　新卒採用については、全体で40人の募集に対し150人が最終面接まで残った。しかし内定を出したのは7人。その中には、高校時代からずっと町工場で自分が研究してみたい機械加工のアルバイトをしている工学系の学生など、旺盛な好奇心と向上心、ユニークな経歴を持つ学生が多いという。 　“ほぼ即戦力”といえる人材を高い報酬で迎え入れるこの斬新な制度は、“ごく普通”の学生にとってはハードルが高いようで、同社では中途採用の選考も進めている。 　02年度までに入社した社員についても、今後、年俸制を選択できるようにすることを検討している。社歴にかかわりなく、実力のある者、努力した者が成果に見合った報酬を得るという社内競争が本格化しそうだ。 ＞トップへもどる ＞大学・短大トップへもどる ＞バックナンバー
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