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Between 2002.10 深化するFD |
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一般に学生からの総合評価が高い授業では、その授業への「満足度」と「理解度」が高い。しかし満足度と理解度の間には距離がある。要求が多様な学生にとって、「満足度の高い授業」とはいったいどのようなものなのか。学修履歴が異なり学力に開きがある学生にとって、「理解度の高い授業」とはどのようなものなのか。 授業評価を行っている大学では、これらを授業評価アンケートを利用することで明らかにしたいと思うのが自然の流れだろう。しかし、その誘惑は断ち切る方が賢明だ。なぜなら、授業評価の調査は複雑なクロス集計ができるほどサンプル数は多くならないからだ。授業評価を中心にしたFDには限界がある。原氏はこのことを「授業評価ではFDは深化しない」と表現した。 もともと授業評価はおおよその傾向を得るためのものだ。教員に対し自分の授業内容の客観的チェックを促すと同時に、大学のカリキュラムと整合しない授業内容や教育者として不適格な教員を発見し、それらの教員に適切な教授法を示し、是正を促すといった機能がある。そこで、さらにFDを深化させるためのアイデアを、学生の「興味・関心」「授業に対する満足度」と「理解度」をもとに掘り下げてみたい。 今の学生の興味・関心は百人百様だ。従って満足を与えるのも至難の業のように思える。しかし佛教大学のように通学課程の学生と通信教育部の学生をかかえる大学では、学生たちの類型は見えやすい。例えば通信教育部の学生の興味・関心は学ぼうとしたきっかけと直結している場合が多いなど、大きなパターンが見える。そこでベクトルの方向性というイメージに重ねてそれらを図表に示そう。 興味・関心が多様な通学課程の学生であっても、「満足度ベクトル」は、人間関係や雰囲気と大学への帰属意識という2方向に向かって収斂する傾向がある。つまり、友人関係や授業・クラスの雰囲気から強化される方向と、その大学への帰属意識、居心地の良さなどによって強化される方向だ。また、授業に対する「理解度ベクトル」は、体験してきた中等教育の延長の授業方法によって高まる方向と大学という新たな学習空間を体験することによって高まる2方向がある。つまり、中等教育との連続性の手法で強化されるものと、新たな学問探究に目覚めさせるような転換教育によって自律的学習が開始され、理解が深まる方向だ。 一方、通信教育部の学生の「満足度ベクトル」はもっぱら大学側の迅速な対応やサービス、コスト意識に見合うことなどに向かっている。「理解度ベクトル」の方は、個々の場面で効率的な学習成果を得ればさらに高まる傾向がある。 丁寧に教えてもらうことによって理解したいと願っている学生には、教員が授業の準備を周到に行い、熱心に取り組み、指導をきめ細かくすれば、受け身的学習という理解度ベクトルに作用するだろう。 また、FDとして積極的に授業改善を行おうとするならば、学習スキルの実態把握だけでなく、例えば「この授業に参加するために必要な学習スキルはインターネット検索能力とレジュメ作成能力である」といった学生への働きかけも不可欠だ。それを知らせるだけでなく、もし必要な学習スキルが備わっていなければ「備えるための教育や仕組み」がなければならない。シラバスは学習スキルを要求することはあっても、学習スキルそのものを身に付けるための方策には無関心だった。 学生の観察から「学習スキルの実態」を知って、ときには学び方が非論理的でその授業にそぐわない、あるいは受け身的学習姿勢にとどまっていることなどを指摘するための「学び方の指導」が、FDを深化させるために見過ごせない一翼となる。 教授法改善という教員の努力だけでは、授業改善にも限界がある。これと合わせ、学生への学習スキルの開発を行い、受講側のレディネスを高めることによってさらに効果が上がるはずだ。 （矢内秋生） |
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