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教育・研究面での質的充実が必要
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就学生も含めるとほぼ10万人に達したと推定される今日、量的には日本もようやく欧米諸外国並みの人数の留学生を受け入れる形に近づいてきたと言えよう。しかし、その受け入れ体制の中身を見ると、欧米の場合とはかなり様相が異なる。寄稿でも富田氏が指摘しているように、留学生であるというだけで、授業料減免の対象者とするなど、日本の留学生に対する経済支援は欧米よりも非常に手厚い。そのような手厚い奨学金政策を行っても近隣の中国と韓国からの留学生だけで全体の75％を占め、欧米からは学生がなかなか来ないのは、彼等が教育・研究面において魅力を感じる大学が日本には少ないからかもしれない。
これからはそれぞれの大学が国外に誇れるような教育・研究面での質的充実を図るように努力しなければ欧米の大学との格差はますます広がり、優秀な留学生を集めることもままならなくなってくるであろう。
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直接的な広報手段として重要なWebの活用
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さて、このようなことを前提として認識したうえで現状の留学生の受け入れ状況について見ていくとさまざまな課題があるようだ。そこで、
（1）入試・広報
（2）生活支援・経済支援
（3）就職支援・帰国後のフォローアップ
（4）担当職員に求められる資質
の四つの面からそれらの課題を整理し、考えられる方策を述べてみたい。
まず（1）の入試・広報であるが、入試については02年度6月に「日本留学試験」が行われ、ようやく私費留学生の渡日前受験の道が開かれた。ただ、この第1回試験では国外会場における受験生が532人という少数に留まった。これは国外会場が10都市しか設けられていないうえ、留学生がもっとも多い中国で実施できなかったことによる。今後はさらなる受験機会の拡大と大学側の積極的な利用が望まれる。また、書類審査のみで入学を決めている大学も70校ほどあるが、中には申請書類の偽造も見受けられると聞く。現地で直接、受験生本人に面談などを行い、申請書類の内容が正しいかどうかについて確認することも場合によっては必要であろう。
次に広報については、仲介者を通さないより直接的な手法が求められる。そのときに注目されるのはWebの活用である。インターネットのブロードバンド化が進み、ユビキタス環境が整うにつれ、Web広報の重要度はますます高まっている。この場合、どの国の留学生を確保したいかによって、英語はもちろん、韓国語、中国の簡体字、台湾の繁体字など、その国の言語によるホームページの作成ができていることが必要条件となってくる。しかし、寄稿でも堀江氏が指摘されているように、多くの大学のホームページではまだ、日本語のみの充実を図っているものが多い。これではいくら直接的な広報をしようとしても自らその門戸を閉ざしていることになる。
また、留学への意欲を高めさせ、受験を確実なものとするためにも、インターネットを通して資料請求してきた生徒にも直接会うことが重要で、現地における進学説明会等の海外イベントの実施が必要となる。もちろんその際、その国の言語による案内パンフレットなども生徒に手渡すとともに、その後の連絡を密にして信頼感を醸成することも忘れてはならない。ちなみに、このような海外イベント等の実施においては現地の同窓会組織に協力を要請している大学もあるようだ。
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生活支援の充実は募集戦略上も好影響
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（2）の生活支援・経済支援については、国費留学生には手厚い奨学金が支給されているが、留学生の大部分を占める私費留学生にとっては厳しい状況となっている。02年の（財）日本国際教育協会（AIEJ）の調査によると57.6％の私費留学生が奨学金を受けており、平均月額は約7万円となっている。留学生は週28時間以内のアルバイトが認められているが、アルバイトの種類別では飲食業がもっとも多く、次いで語学教師、清掃、営業販売などとなっており、時給単価も低い仕事が多い。おそらくフルタイムで働いても家賃代でほとんど消えてしまっているのが現状であろう。奨学金がほとんどもらえない就学生の場合はさらに厳しい経済状況となっている。国としては就学生への支援についてももっと考えていくべきであろう。
また、言葉の壁の問題も大きい。国費留学生には、短期間に集中して日本語を学習するコースが用意されているが、私費留学生にはほとんどない。日本語教育を主とした別科以外では、学ぶコースはあっても一日に学習できる時間は短く、日本語の力が十分身に付くシステムとは言えないようだ。
これらの課題に対して大学がケアできることは、奨学金、寮、アルバイト斡旋の三つに関する支援について、できる限りの誠意を持ってあたっていくことでしかない。ただ、留学生の質的充実を図るのであれば、関西外国語大学のように短期の交換留学生を中心に増やすようにするか、早稲田大学のように入学成績によって奨学金の支給配分を変えることも考えなければいけないだろう。また、宿舎についても留学生の70.5％は民間アパート等に住んでおり（01年度文部科学省調査）、住宅事情の厳しい日本の場合、都市部で大学が留学生寮を拡充することは大変困難である。96年に入国在留の保証人制度が廃止されたのに伴い、アパートなどの入居保証人を機関として引き受ける大学が出てきたのもこういった事情からのようだ。初めて異国に足を踏み入れた外国人にとって、生活の場としてのコミュニティーからどのように受け入れられるかというのはきわめて重要なことである。期待と不安が入り混じり、どのように生活を組み立てていけばよいのか戸惑い、勉学のみならず本来くつろぐべき生活の場においても緊張を強いられる毎日である。
地域で暮らす住民が留学生を温かく受け止めて、交流と支援の手を差し伸べられるようにするために、地域社会の理解を得るとともに、連携を深めていくことも大学の重要な役割となっている。その場合、地元自治体の協力を得ることも必要であろう。
また、もう一つ重要なことはこのような生活支援・経済支援を徹底することで、留学生が帰国したあと、「あの大学は支援がとても行き届いている」という情報が口コミで広がり、募集戦略上も好影響をもたらすという事実である。例えば、文化女子大学のように留学生一人ひとりの誕生日にバースデーカードを贈るなどのきめ細やかな配慮が、将来の募集戦略につながるカギとなってくる。
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各部署との連携が必要となる就職支援
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（3）の就職支援・帰国後のフォローアップについては、日本が知的国際貢献を果たしていくうえでも重要な課題となる。留学生が卒業後、留学の成果をそれぞれの専門分野で発揮するとともに、その活動によって、日本への留学を希望する者の大きな誘因となるからだ。それだけに文部科学省をはじめ、AIEJ、日本学術振興会などで、学術誌等の専門資料の送付、帰国留学生の短期研修といったいくつかの取り組みが始められている。
しかし個々の大学の取り組み状況を聞くと、どの大学もこれからの課題としているケースが多い。特に就職活動については、ほとんど個人にまかされているのが実状だ。ただ、留学生だけに留まらず、日本人学生であっても入学から進路・就職、さらに卒業後のフォローまで一貫して同じ部署で対応しているような大学はなかなか見当たらない。それだけに、この課題についてはそれぞれの部署との連携をいかに密にして対応していくかがポイントとなる。特に留学生のインターンシップを充実したり、帰国後も大学の活動情報の提供を欠かさないなどの方策が求められている。
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担当職員に求められるスペシャリストの資質
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最後に（4）の担当職員に求められる資質については、「今後、留学生相談にかかわる業務は高い専門性の求められる仕事になるでしょうし、専門職を作るべきだと思います」というコラムでの横田氏の言葉に尽きる。ただ、「このような専門的知識やスキルを身に付けていくまえに、しっかりとした心構えや積極的な姿勢（スタンス）を持つこと」という富田氏の指摘も重要だ。国際交流部で専門の教職員を採用して、スペシャリストとしての育成を図っている関西外国語大学や、「自分がしてもらったことを今度は私が留学生にしてあげたい」と思うOBの留学生を職員として採用している文化女子大学の事例は参考になる。
かつて留学生は日本のどの大学が自分に合うかといった詳しい情報がほとんど得られないまま渡日するケースが多かった。しかし、現在は生活支援の実情などについてもインターネット等を通じて、あっという間に流れる時代になった。大学にとっては自学を映す鏡としてこれからの留学生の受け入れや支援策を考えていかなかれば、国際社会のなかでは生き残れない時代になってきていることは確かなようである。
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