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AOYAMA Media Labプロジェクト（以下、AML）が総合研究所内に発足したのは、1998年。経済産業省・情報処理振興事業協会が推進する事業の一環として、「バーチャルユニバーシティ構築のための実証実験プロジェクト」を推進。eラーニングのインフラとなる学習管理システム「サイバーキャンパスシステム」の研究・開発、学部・大学院教育のための仮想擬似体験とネットワークによるコミュニケーションを用いた授業方法の開発を行ってきた。
開発にあたり、スタンフォード大学との国際共同実験や経営学部、理工学部の学部生を対象とした実証実験授業を実施。これらの成果を踏まえ、00年度から5年間計画でプロジェクトの第二期に当たるAML
IIを全学院レベルで展開している。
AML IIは、カリキュラム、教材、教育ソフトウェアの開発と実用化を行う「サイバーキャンパス教育方法開発プロジェクト」、国内外の大学や公的機関、企業などの参加により技術・情報革新を基にした新たな経営戦略を研究する「経営・技術統合化戦略化IT研究会」、こうした研究・開発成果をオープンフォーラムやホームページを通じて情報公開する「AMLコンソシアム」の3組織で運営されている。
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小・中・高一貫教育から社会人大学院の専門教育まで
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サイバーキャンパスシステムは、学習効果の向上や教員の作業負担軽減などを目的に開発された独自の学習管理システム。大きく分けてWebベースによる授業支援機能、ネットワークコミュニケーション機能、システム管理機能を持つ。授業支援機能は、授業情報や教材管理、学生の出欠・提出物・成績管理などを行う。
ネットワークコミュニケーション機能は、教員が授業中に解説や問題提起を行ったり、教員と学生、学生同士が自由に意見交換できる「電子掲示板」、講義内容の質疑応答ができる「電子質問箱」、離れた教室からでもリアルタイムで会議やプレゼンテーションができる「ネットワーク会議システム」などを持つ。
システム管理機能は、セキュリティー上、学生の個人情報やアクセス記録を管理するもので、学生の学習履歴を教員側からもチェックでき、システム運営中のトラブルの原因解析にも役立てられる。
AMLのプロジェクトリーダーを務める経営学部の玉木欽也教授は「従来、大人数の学生を対象とした授業、特に社会科学系の学科では、教員側からの一方的な講義が中心となり、授業内容の実践的かつ体験的な理解は難しかった。また、教員と学生間のコミュニケーションも不足していたと言えます。サイバーキャンパスシステムはこれらの問題点を克服し、教育方法そのもののパラダイム（典型、模範）を変えるものなのです」と説明する。
このシステムでは、大人数による実習、遠隔授業、セルフラーニングなどのさまざまな学習形態での授業を可能にした。小・中・高一貫教育を前提とした総合学習や英語教育から学部・大学院生や社会人を対象とする基礎・教養教育、エンジニアリングやビジネスの専門教育・技能指導と、広範な分野での教育を支援している。現在、何らかの形でこのシステムを利用する学生は約4000人いる。
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仮想の企業実務を協調学習方法で体験する
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中でも、経営学部の正規単位履修科目「サイバービジネス演習」は、世界のビジネスシーンで用いられているSAP社のERPソフト（統合基幹業務システム）を利用した独自の「協調型演習」だ。
「協調型演習」は、パソコンメーカーのケーススタディーについて学生がプロジェクトチームに分かれ、問題解決を行い、成果を出していく業務プロセスを重視した「問題解決学習」、ソフトウェアの使用によるさまざまなシミュレーションで仮想疑似体験ができる「体験学習」、学生がグループ内で役割分担し、意見を交換し合って学ぶ「協調学習」の3要素を持つ。
「サイバービジネス演習」は、Webベースの教育ソフトを使用し、学内に構築した仮想企業環境で新PC製品の企画立案から、生産計画、販売管理まで業務プロセスを企業実務さながらに擬似体験する。授業では2～3人にグループ分けされた学生が、販売管理・生産管理・購買管理といった役割を担当。それぞれの立場からプロジェクト実現に向けて問題解決していく。ネットワークを通して他のグループの学生とも意見交換することにより、自分たちの誤りに気付いたり、より良い問題解決方法を見いだすなど、能動的かつ実践的な体験ができ、授業理解度は確実に上がるという。
「ソフト開発に当たり、現実のビジネス現場を再現するために、多くの提携企業にケーススタディーのデータを提供してもらいました。今後は、こうしたデータをこの演習内でシミュレーション検討し、学生たちの提案を企業にフィードバックすることもあるでしょう」と玉木教授は言う。さらに「実際、企業では、担当者は個々の業務知識しか持っていないというケースもありえます。この演習では、さまざまな角度から体系的に関連業務にかかわり、実務を体験できます。企業における即戦力となる人材を育成できるのはもちろんですが、現実のビジネスシーンを先取りするような内容の演習も可能になる」と語る。
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アジアの大学に授業配信する共同実証実験に参加
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こうした活動が評価され、青山学院大学は「Asia e－Learning Network（AEN）」の国際共同実証実験の代表校に採択された。AENは、01年3月に発表された「e－Japan重点計画」に基づき、経済産業省が主導し、ASEAN諸国と中国、韓国、日本の3カ国が参加するプロジェクト。アジアでのeラーニング市場形成とコンテンツ開発、さらにコンテンツと学習管理システムの国際標準化への貢献を目的とする。
同大学は、総合研究所の特別プロジェクトとして新たに「Aoyama &Asia e－Learning Network（A2
EN）」を設け、国際環境におけるeラーニングメソッドと学習管理システムの構築に取り組む。国際実験のパートナーは、フィリピンではトップクラスといわれるデ・ラサール大学ビジネススクール。青山学院大学から3Dのコンピュータグラフィックスによる仮想工場で実務を学ぶ「サイバーマニュファクチャリング演習」の協調型演習科目を英訳して配信。社会人を中心とするデ・ラサール大学の大学院生約40人を対象とし、フィリピンとの時差や学生層を考慮し、対面授業、遠隔実習、セルフラーニングを組み合わせた「非同期協調学習」を取り入れた授業を行う。
これらのコンテンツは国際標準規格であるSCORMに準拠し、海外の教育機関や企業との互換性を持たせた。今後、デ・ラサール大学との教材コンテンツの相互交流も計画している。
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モバイルラーニングや企業研修を視野に
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現在、AMLには、各学部や青山学院の初等・中等・高等部の担当者をはじめ、他の教育機関からの客員研究員、参加企業の担当者などを含め、約50人が参加。教育方法や研究分野ごとの研究部会は16を数える。「発足当初は学内での承認と協力を得るため、プロジェクトの企画書を持って説明に回った」という玉木教授。現在、組織の管理・運営は、提携企業からのプロジェクトマネジャー、プロジェクト専任秘書、大学院生のティーチングアシスタント、学部生などで行っており、今後、専門的なスタッフの拡充は不可欠と指摘する。「アメリカの大学では、こうした組織には授業設計や教材開発専門のインストラクショナル・デザイナーや、システム管理などの技術スタッフなどの専門家が参加するのが一般的。われわれは、日々の授業なども行うわけですから、プロジェクト専任の研究助手や技術・事務系のスタッフなどが必要でしょう」と語る。
AMLは、現在、携帯端末を利用したモバイルラーニングによるTOEICや単語学習システムの実証実験や、単位認定ができるセルフラーニングの授業開発などを行っている。
さらに、将来は、大学教育だけでなく、ITマネジャーやSEの教育、ビジネスプランニングなどの企業研修システムにも実用化できる高度専門職業人のための授業の開発も視野に入れている。
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