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北海道情報大学は、衛星通信とISDN回線を利用し、日本全国17カ所の教育センターで鮮明な画像による授業がリアルタイムで受講でき、かつ教員と学生のコミュニケーションが可能な「双方向遠隔教育」（PINE－NET）による専門学校生対象の通信教育を1994年度に実現した。現在は来年4月からのオンデマンドのeラーニングシステム導入に向けた試作研究も進められている。
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教育内容の均質化のためにPINE－NETを活用
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北海道情報大学が開学したのは1989年度のこと。情報を専門にする大学は全国的にもまだ数少ない時代に、経営情報学部経営学科と情報学科の2学科、各100人計200人の定員とした。
しかし、「情報化社会の進展は目覚ましく、情報処理技術者の不足がますます深刻になるのは目に見えていました」と同大学の中居聰士事務局長は指摘する。では、より多くの人材を育成するために全国展開できることは何か。出てきた答えは、通信教育部を設け、遠隔地の学生に対する教育を行うことだった。
そこで、PINE－NET（Promoting Information Network for Education－NET）と呼ばれる通信衛星とISDN回線を利用した画期的なシステムを構築、94年度に通信教育部が開設された。このシステムはすでに91年度から、同大学の母体である学校法人電子開発学園が全国に展開する情報処理専門学校の教育で利用されていた。この通信衛星による授業を受けるには、受信局が必要になる。そのため、通信衛星を使った授業（これを同大学ではメディア授業と呼ぶ）を受けるためには、教育センターに通うことが条件となる。このためPINE－NETを使った通信教育の受講生は同大学の学生の中でも、専門学校にも籍を置くいわゆるダブルスクールの学生に限られる。彼らは専門学校入学と同時に大学にも入学し、午前中は専門学校の、午後は大学の授業を受ける。
「たとえば専門学校が全国に10カ所あれば、教育内容や質がすべて同じというわけにはなかなかいきません。そこで、教授法のスキルが優れている先生にキーステーションで授業をしてもらい、それを全国に流せば均質化が図れ、全体の教育の質が上がると考えたのです」と、中居事務局長。
同大学に隣接して、直径4・5メートルのパラボナアンテナをはじめとする送受信設備を備えた関連研究機関の北海道情報技術研究所があり、その中にキーステーションも設置されている。また、同大学には（株）SCCや宇宙技術開発（株）という情報通信システムや衛星通信システムを扱う関連企業もある。このような研究所や企業との連携体制が整っていたことも、同大学の通信衛星教育システムを実現する後押しになった。
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北海道情報技術研究所
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双方向性を維持するための三つの機能
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PINE－NETでは、教員が研究所内にある講義スタジオで授業を行い、その内容が屋上に設置されたアンテナを通じて通信衛星スーパーバードに打ち上げられ、全国の専門学校内にある教育センターにリアルタイムで送られる。各教育センターでは、受信した映像、音声が各教育センターの受信教室で大画面や一人1台ずつの端末に映し出される。
一方、授業を聴く学生から教員に質問等を行う場合には、NTTのISDN回線が利用される。また、各教室の映像や音声も同じくISDN回線によって講義スタジオにフィードバックされてくる
（図表）。
「各教室にはカメラが設置されていて、スタジオ内からボタン一つで受講者の様子を見ることができます。しかも、教室の映像を今度は通信衛星に送って全国に放送することもできます。たとえば、ある教室で受講者から質問が出た場合、場面を切り替えて、その教室の画面を全国に映し出すことも可能となります」と中居事務局長は説明する。
そんなPINE－NETのシステムはリアルタイムとともに双方向性を特徴とし、教育効果を高めるため、次の三つの機能を備えている。
（1）RA（Response Analyzer）
教員の質問に対して学生が選択式で回答すると、選択状況がリアルタイムで集計されてグラフ表示される機能。学生の理解度を確かめるために利用される。
（2）QR（Question Request）
学生が質問や意見があることを教員に知らせる機能。
（3）ホットライン
教員が学生と直接対話する機能で、教員と学生の双方がお互いの映像を見ながら会話できる。この機能を使って、教員は質問をしてきた学生に対応する。
さらに、PINE－NETには「日本初の映像多重化装置により、二つの映像、音声、データを同時に送信できる特徴がある」と中居事務局長は言う。つまり、英語とソフトウエア工学というように、二つの授業を一度に送信でき、受信側で教室を分ければいいシステムになっている。
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メディア授業の蓄積を生かしたWBT教材を開発
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最近、通信教育を受講している専門学校の学生からメディア授業を自宅や放課後の復習で利用したいとの要望が大きくなっているという。そこで同大学ではインターネット技術を使い、Webブラウザで見ることができるeラーニングシステムを開発、来年度からの実施を予定している。
「本学の場合、メディア授業が行われているので、学部の授業をわざわざ収録する必要はありません。毎日のメディア授業の映像を1日遅れでオンデマンドのeラーニングのコンテンツとして蓄積することもできます」
また、同大学は、ダブルスクール学生だけでなく、社会人を対象とした通信教育も行っている。現在は印刷物による授業とスクーリングのみだが、今後はeラーニングのWBT教材の開発を進めている。
「独りで自宅で学ぶには、どうしても学習意欲の維持が難しくなります。そこで、チャットや掲示板機能を持たせることで、コミュニケーションを取りやすくしています。履修管理もでき、教育効果は高くなると思います」と中居事務局長は言う。
通信衛星による教育でも同大学はすでに新たな試みを始めている。文部科学省が核となっている衛星通信ネットワークSCS（Space
Collaboration System）に01年から参加し、PINE－NETとつなげ、SCS加入校の授業を全国展開しようというものだ。手始めに、北海道大学の教員に北海道大学のSCSのスタジオから通信教育部の授業を行ってもらい、それをPINE－NETで全国の教育センターに流している。
二つの衛星通信の活用したメディア授業を生かしたeラーニングを模索.することで、同大学は常に新しい展開を目指している。
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