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明治学院大学では、横浜と白金の両キャンパスにそれぞれ「ボランティアセンター」を設置している。コーディネーターが専従スタッフとして常駐し、学生ボランティアスタッフとともに、学生の善意と地域社会との橋渡しの役割を果たしている。
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設立のきっかけは阪神大震災のボランティア
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ボランティアセンター設立のきっかけになったのは、1995年の阪神・淡路大震災だという。発生直後、学生の中からボランティア活動のグループが立ち上がった。この時に活動の拠点となったのが、神戸にある賀川記念館だ。同記念館の賀川豊彦は明治学院大学の卒業生で、キリスト教社会運動家として知られている。
1月の試験シーズンにもかかわらず大勢の学生が神戸に駆けつけ組織的な活動ができたのは、たまたま賀川記念館という拠点があったからこそだと、ボランティアセンター長の川俣優教授は語る。
「もし賀川記念館がなかったら、学生の善意は十分に生かしきれなかったでしょう。そこで、震災後、大学内に常設のボランティアセンターがあればいいという声が上がったのです」
同大学ではもともとボランティア活動が盛んだった。建学者のヘボン博士はキリスト教に基づく博愛精神を説き、日本のボランティア活動の祖となった。そのスピリッツが校風として教職員や学生に根付いていて、ボランティア活動を通して国際社会の問題を学ばせるフィールドワークや、学生によるボランティアサークルなど、他大学と比較しても活発に行われている。
例えば、ボランティアサークルでは、ベトナムの子供たちのために小学校を建て、奨学金を支給するNGO「ジュンコ・アソシエーション」、東南アジアからの帰国者を対象に日本語などの学習支援を行う「多文化まちづくり工房かささぎ」、都内の児童館を中心に人形劇を上演する「人形劇団ZOO」など枚挙にいとまがない。しかし、これらの活動は学内での横のつながりや実社会とのつながりが希薄だった。学生からは、ボランティア活動についてもっと情報を得られる場所がほしいという要望が高まっていた。
この要望を受ける形で創立120周年の節目にあたる97年に、ボランティアセンターの設立準備が始まった。98年5月に横浜キャンパスの小さな一室で、コーディネーターの常駐するボランティアセンターがオープン。99年10月には大学の組織に組み込まれることになり、01年4月には白金キャンパスにも同様のボランティアセンターが開設された。現在、教員のボランティアセンター長（両キャンパス兼任）1人、専従スタッフであるボランティアコーディネーターが各キャンパスに1人、学生ボランティアスタッフ27人（横浜20人、白金7人）で運営されている。
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地域との連携によって新たな行事も生まれる
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ボランティアセンターの業務は多岐にわたる。学生ボランティアの育成、ボランティア関連の情報収集、ボランティア系サークルへの支援、イベントの開催、学生ボランティア団体のネットワーク形成と維持など。中でもコーディネーターが力を入れているのはネットワークの形成だ。99年4月から横浜キャンパスでボランティアコーディネーターを務める谷津倉智子氏は次のように話す。
「横浜キャンパスの周辺は住宅街で、学生は日常的に住民と接触する機会があります。ボランティア活動をするのに、地域の人たちの協力や、地元のボランティア組織、行政との連携は必要不可欠だと考えています」
ボランティアセンターがキャンパスに設置されてから、学生に対するさまざまな依頼が外部から舞い込むようになったという。例えば地元の横浜市立中学校のPTAから、「障害を持つ生徒の学習環境について、意見を聞かせてくれる大学生を紹介してほしい」という依頼や、「自分のボランティア体験談を総合学習の一環として講演してほしい」という依頼など。「これまでは頼みたくてもどこに問い合わせたらいいのか分からなかった。センターが窓口になってくれて助かる」といった反応が寄せられている。
もちろん、コーディネーターはそういう依頼を受けるだけではなく、積極的に外にも出かけていく。市役所や福祉施設、NPOの事務所など、ボランティアを必要としている施設や組織を回り、そこが学生を送り出すのに適切な「場」かどうかを確認するためだ。
「大学としてボランティアセンターを設置するからには、それなりの責任があると思っています。ボランティア団体といっても実態は玉石混交で、ホームページなどで大まかな情報は入手できても、詳しい内容までは分かりません。できる限り自分自身で足を運んだり、電話をして確認するようにしています」と谷津倉氏。
こうした作業の過程で、ボランティアセンターを通じて大学と地域が互いに「顔が見える存在」となり、02年には地域との連携による新たな行事も生まれた。
例えば11月4日に横浜キャンパスで行われた「地域学生わくわく交流祭」では、体育系のサークルからなる体育会との共催で、スポーツを通じて地域との交流が図られた。スポーツのほかにも豚汁やご飯の炊き出し、防災に関する展示など、地域の広域避難所でもある同キャンパスに足を運んでもらうための多彩なプログラムを用意。学生ボランティアスタッフが、地域の人々の協力を得て8月から企画をスタートさせ、実現にこぎつけた。
「この交流祭で、地域との距離がまた一歩縮まったと感じています。学生もいろいろ学ぶところがあったのではないでしょうか」
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大学の役割は学生の「気づき」のきっかけ作り
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ボランティアというと障害者や高齢者のいる施設の訪問や補助活動などを思い浮かべるが、それは活動のごく一部でしかない。「例えば地域の祭りに参加することはもちろん、地域から世界へと目を向け、熱帯雨林の森林を保護する運動に参加したり、いざというときに医療活動を補助できるように救急医療行為を学ぶのもボランティア活動です」と川俣教授は言う。地域貢献、社会貢献を行う広い意味でのボランティアこそ、学生に経験してもらいたいとボランティアセンターでは考えている。
多くの学生は、大学生になって初めて本格的なボランティアに取り組む。1・2年生が学ぶ横浜キャンパスのボランティアセンターでは、新入生に対して「どんなボランティアに興味があるか」などのアンケート調査を実施する。5月にはボランティア系サークルの合同説明会を開き、7月には夏休みを利用した活動の斡旋や心構えのオリエンテーションなども行う。
「特に夏休み前は、ボランティアについて漠然としたイメージしか抱いていない学生や、意欲はあっても何をやっていいか分からない学生に対し、アドバイスする機会が多い」と谷津倉氏。
横浜キャンパスのボランティアセンターの役割は、活動を通じて何かしらの「気づき」を促すというきっかけ作りの部分も大きい。
一方、白金キャンパスでは主に3・4年生が通うこともあり、卒業後の進路も視野に入れた、活動内容と目的とがより明確にリンクしたボランティアが中心となっていることが多い。都心に立地しているため、周辺には途上国などを支援するNPOやNGOの拠点も多くある。学生の中には在学中からこれらの活動に参加し、そのまま職員として就職するケースも見られる。
また、白金キャンパスでは、周辺の企業との連携による活動も活発に行われている。01年9月には、大学と企業による全国でも初めての協働プロジェクトとして『ソニーマーケティング学生ボランティアファンド』が設立された。これは企業が資金面から学生の活動を支援するという試みである。このことについて、白金キャンパスでコーディネーターを務める大島隆代氏は次のように語る。「本学がパートナーに選ばれたのは、大学にボランティアセンターを設置しているという全国でも珍しい本学の活動が評価されたからだと思います」
学生の要望から生まれたボランティアセンターは、結果的には「ボランティア・スピリッツ」という明治学院大学の個性を、最もよく具現化する場となっている。だからこそ、スタッフが予想したよりもはるかに短期間でさまざまな成果をあげてきたのだろう。
今後は横浜キャンパスと白金キャンパスそれぞれの地域的な特性を最大限に生かしたボランティアネットワークを構築し、強化していくことがセンターの使命だと川俣教授は語る。「そのためには、学生だけでなく教員もセンターを大いに活用していただきたい。カリキュラムに組み入れて、単位の修得を認めるなど、ボランティア活動を授業や研究とリンクさせることができればと考えています」
建学の理念に結び付いた学生支援によって、地域に貢献すると同時に、教育効果のさらなる向上につながればと、同教授は期待している。
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