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ボランティア活動に頼る不安
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最近、行政の政策決定や遂行の有効な手段とされているものにパブリックコメントがある。広く一般市民の声を政策の策定段階で聞き、さらによい施策にする手法だ。
学生を市民の立場と考えれば、大学がFD活動について学生から意見を求める方法はパブリックコメントの手法に似ている。大学への投書箱、インターネットの掲示板でのQ＆Aもその表れといえる。
岡山大学の「学生・教員FD検討会」は、この手法をさらに一歩進め、大学が行おうとするFDという政策にアイデアを盛り込み、活性化するために「恒常的かつ公式の学生参加組織」としたものだ。
なぜ、同大学にこのような学生参加の組織が生まれ得たのか。
1964年に社会学者の加藤秀俊氏が『大学の庭』（朝日ジャーナル）で岡山大学をルポしている。その中で「40年後の岡山大学の未来図」を学生が描いているさまを「23万坪を相手にした、これは雄大な青写真だ」と紹介している。この青写真なるものがどのような経緯で作られて、提案されたものであるかは今となっては確かめようがない。しかし、少なくとも学生が意見を提案するという独特の風土が、当時から存在したことを物語っている。この事実が「なぜ、岡山大学に学生参加型のFD検討会が生まれたのか」の答えになるのかもしれない。そして40年後の今、そうした大学の風土は根強く残っている。しかし、教育改革がその大学の風土や学生・教員の持つ文化だけに依存していては、やはり限界があるように思われる。
年が明けると、どこの大学でも来年度新学期の準備に追われる。キャンパスの中に「来年度の新入生のために、新歓（新入生歓迎行事）委員を募集します」などのタテ看板があることだろう。ボランティアが社会化して語られることが多くなった昨今、新歓委員の活動などもボランティア活動なのだということをつい見落としてしまっていた。
もともとキャンパス内には、先輩が後輩の勉強や試験対策からサークル活動や下宿生活のノウハウまで伝え、教えるという無償の善意が満ちあふれている。そのような学生文化とFD活動を巧妙に組み入れたのが「学生・教員FD検討会」といえる。
しかし、学生や教員のボランティア活動に頼ることと、大学が組織として恒常的な成果を期待し、FD活動を活性化し続けることとは必ずしも一致しない。なぜなら、「人を得て」現在の岡山大学のFDは深化し続けているが、人が変化した場合に現在のような成果が生まれないかもしれないからである。
とくにボランティア精神に富んだ熱心な一部の教員に頼ることの不安がよぎる。おそらく学生からは「改善してほしいこと」は尽きず、年々新しい改革のエネルギーは継続するかもしれない。しかし、教員にとっては、個人の研究領域での業績面で「何の得にもならない」という葛藤がつねに待ち受ける。そして、このことは次に触れる教授会の研究業績主義による教員審査と深くかかわっている。
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教育面における業績評価基準の設定を
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91年度に大学設置基準が大綱化され、その後も規制のさまざまな「弾力化」が進む中で、教員審査にねじれ現象が生じている。
具体的には、改組にあたっては自己責任による大学の裁量権が大幅に認められるようになったため、文科省の「教員業績審査」は簡素化され、条件によっては必要ない場合すらある。しかし、そのことがかえって教授会の権限を強めることにもなっている。
例えば、理事会が「教育の充実」を方針として掲げ、教育面で実績をあげた教員の昇進や待遇改善を教授会に提案したとしよう。しかし教授会は研究業績中心の「教員資格審査規定」を定めているために、審査の結果、候補の教員の教育業績が認められずに理事会の提案が否決されたりする。逆に新任教員や兼任講師などで、教育能力については未知数だったり、評価が低くても、研究業績が優れているとして昇格や待遇改善が決まることも少なくない。
FD活動に熱心に取り組み、教育面で十分な成果を挙げた教員に対する「業績評価基準」の設定が早急に求められている。
（矢内秋生） |
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