Between 2003.05 特集　これからの社会人教育
【Report 6】 職業人としての総合力を養成する 再就職支援講座を開講 法政大学　エクステンション・カレッジ
法政大学エクステンション・カレッジ内の「法政大学キャリア開発コース（HCDC）」では、厚生労働省の大学等委託訓練の講座として「キャリア・エデュケーション・プログラム」を2002年から実施している。再就職希望者の支援を目的としてプログラムを開発。実務技能の養成だけでなく、「職業人」としての幅広い能力の獲得を目指す内容となっている。
経理、管理職などの4コースを実施 　HCDCは、生涯学習の中でも職業能力開発に関わる事業の拡大を目的に2001年に設置され、社会人向けのキャリアマネジメント講座や講演会に力を入れてきた。その内容が、文部科学省が推進する大学・大学院での人材育成強化政策と合致。同省や厚生労働省と協議を重ねた結果、再就職希望者を支援するプログラムを開講することになった。HCDC職業能力開発コース長である経営学部の藤村博之教授は、プログラムの意義をこう語る。 　「大学が得意とする専門的理論を、実社会で積んだ経験・ノウハウと結びつけることで、新たな能力を養成できると考えました。特に、人生の建て直しを図ろうとしている再就職希望者の力になることは重要だととらえています」 　市ヶ谷キャンパスで教室等の確保が難しかったため、就職活動支援のためのコンピュータや個別のカウンセリングルームなどを整備した高田馬場校を開校。02年3月、1期生約40人を迎え入れた。当初は「総務・人事プロフェッショナル」「マーケティングプロフェッショナル」の2コース体制だったが、2期目から「管理職プロフェッショナル」「経理プロフェッショナル」を加え、現在は4コースを実施。週2〜4日授業があり、受講期間はそれぞれ3〜4カ月だ。受講者はハローワークの窓口で募集する。教材費約1万円は受講者の自己負担だが、受講費は厚労省から法政大学に受講者一人当たり月15万円が支払われる。 人間関係を円滑にする能力も養成 　プログラムは、（株）キャリア工学ラボと共同で開発。法政大学教員と外部講師が講師を務める。特色は、自己分析をして職業能力向上のための設計図を作成させる点と、職業人としての総合力を養成する点だ。 　授業は、自己分析の手法を用いて、将来像を描くことから始まる。自己の能力・経験を見直し、企業にアピールできる点を掘り起こし、身に付けるべき能力を確認させる。定期的に一対一のカウンセリングを行い、求職活動を円滑に進めるためのアドバイスもする。 　「培ってきた能力・経験は、業種が異なっても活かせる。しかし、再就職できない人の中には、ほかの業種では自分の能力は通用しないと思いこんでいる人や、能力をうまくアピールできない人が多い」と藤村教授。 　さらに、ディスカッションやプレゼンテーションの場を設け、仕事を進める上での基礎能力を養成。また、ISOや市場調査など、社会動向や企業経営全体に関わる授業も用意した。 　「専門技能だけを指導する専門学校と違い、大学では、社会の見方、物の考え方も含めて指導できる点が強みだと考えています」 　プログラムは現在、3期目まで修了し、受講者数は延べ約200人。男女比は半々で、年齢層も20代から60代と幅広い。 　再就職率も好調だ。受講途中で再就職先が決まり、辞めていく人は毎回約2割、02年6月に修了した1期生の場合、同年秋までにほとんど全員の就職先が決まったという。 　一方で、課題もある。受講者の募集はハローワークのみで行うため、定員に満たないコースも少なくない。また、受講者の職務経験の差で、授業の進行に支障をきたすケースも見受けられるという。 　「ミスマッチを防ぎ、プログラムをPRするためにも、説明会の開催などを考えています」 　また、HCDCでは独自に再就職支援プログラムを開発。企業にも積極的に働きかけ、HCDCを広くアピールしている。 　「終身雇用の前提が崩れた今、一つの企業だけではなく、ほかの会社でも通用する能力を身に付けることが重要です」と藤村教授。HCDCは、そうした広い意味でのキャリア開発の支援を、今後さらに強化していくという。 ＞トップへもどる ＞大学・短大トップへもどる ＞バックナンバー
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