Between編集長
足立 寛 |
| Betweenは（株）進研アドが発刊する情報誌です。 |
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| 視点 |
| 上級生を巻き込んだ支援システムの構築を |
| 学生支援のための13の取り組み |
入学したばかりの学生は、新しく始まる勉学への期待と意欲に燃えている。目的がはっきりして大学に入学してくる学生が多い反面、なぜ大学に入学したのか、4年間をどのように過ごしたらよいのか、社会に出てどのように活躍したいのか、そのために必要な知識、技術、技能、資格は何か、そして自分はどのような人間として生きたいのか、こういった大学での学習目的・目標を持たず、大学教育への適応力が十分でない学生も増えつつある。
しかし、このような無目的の学生ほど入学してから、「こんなはずではなかった」「期待していたこととは違う」といったギャップを感じるようになる。入試が厳しかったかつての売り手市場の時代であれば、このような学生に対して、とくに手立てを講じる必要を感じない大学も多かっただろう。しかし、今日のようなユニバーサルアクセスの時代を目前にして、学生たちになるべくギャップを感じさせないようにするための様々な支援の取り組みが不可欠となっている。
また、これらの取り組みの対象は無目的のまま入学する学生だけではない。一見、熱心に授業を受けている“健全な”学生の中にも、学習上、生活上の悩みを抱えている者が少なくない。こうした学生たちを前にして、いま大学には、学習への動機づけから始まる導入教育や、カリキュラムの見直し、授業内容・授業方法の改善など直接に教育に関わる取り組みのほか、履修指導の充実、きめこまやかな生活相談や健康相談の実施、経済的支援、キャンパス環境の充実など、学生が早期に大学に適応できるよう周辺の整備も含めた総合的な支援の取り組みが求められている。
そこでそれらの取り組みを概観すると、主なものだけでも次の13項目があがる。
（1）入学前教育や合格者に対する合宿セミナーなどの実施を通して、合格直後から大学生活や学びへの関心が継続的に高まるようなしかけをする。
（2）フレッシュマンセミナーなどで教職員や上級生との交流の場を設けるなど、新入生の意欲を引き出すような工夫をする。
（3）単位互換、全学共通科目や副専攻といった形で、大学、学部や学科の壁を取り払ってある程度自由に学べるしくみを整える。
（4）教育に関して、履修アドバイザー制度やGPA制度、オフィスアワー、学生による授業評価制度など、個々の学生に視点をあてたしくみを整える。
（5）意欲的な学生に対しては、そのチャレンジ精神を支援し、より能力が発揮できるような仕組みをつくる。
（6）英語や数学などで、大学教育を受けるにあたって一定レベルの学力が必要な科目については、習熟度別クラス編成にして、リメディアル（補完）教育のしくみを整える。
（7）従来の就職課の枠を超えたキャリアセンター等の設置に見られるように、就職指導のみならず、学生の自己実現支援のために低学年から様々なしかけや教育を行う。
（8）チューター（チュートリアル）制や学習支援センターなど、学力が低迷している学生へのフォロー体制を整える。
（9）学生相談室などの機能を充実させ、健康面や生活面でも学生のさまざまな悩みに応えられるしくみをつくる。
（10）給付型奨学金やスカラシップ入試など、経済的に修学が難しい学生への支援制度を整える。
（11）デュアル・ディグリー制度等、海外大学とのさまざまな留学制度を整える。
（12）ノートパソコンを全員に貸与し自宅でも教員とのやり取りができるなど、情報インフラを整備する。
（13）これら以外にその大学にしかない「売りとなる教育環境・取り組み」を持つ。
前記のうち、本特集における立教大学の「全学共通カリキュラム」は（3）に、湘南工科大学の「コミュニケーションサークル」は（9）にあたるだろう。また、本特集では取り上げなかった取り組みでも、（1）では中央大学商学部の「PSプログラム」や立教大学の「新入生キャンプ」、（2）では立命館大学の「オリター制度」、（3）では早稲田大学の「テーマカレッジ」やコンソーシアム京都による単位互換の取り組み、（5）では山梨学院大学の「学生チャレンジ制度」や金沢工業大学の「夢工房」、（6）では金沢工業大学の工学基礎教育センターの取り組みなどが、特色ある事例としてあげられる。
重要なことは、このような取り組みについて、それぞれの大学で独自の工夫を凝らすとともに、複合的に組み合わせて、いかにシナジー効果を発揮できるかだろう。そのためには、学生の利用状況や満足度についてのリサーチは欠かせない。組織や体制はつくれても利用度や満足度が低ければ、それは機能していないのと同じだからだ。
例えば、就職相談窓口を昼休みにも開くようにしても、担当職員が学生の情報を把握していないためきちんと対応できなかったり、オフィスアワーを設けてもドアの閉まった教授室までおそるおそる行かないと会えないようでは、せっかくの制度も生かされない。就職相談窓口の職員は相談にきた学生のファイルを作って管理して、継続的なアドバイスができるようにするとか、オフィスアワーの時間には、高校の職員室のような場所に教員が控え、学生が教員間を回って相談できるようにするなどの工夫が必要となる。 |
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