| 地歴・公民編 |
| 受験科目として選択される可能性が高い現代社会 |
地歴・公民は、他の教科に比べると科目編成、単位数には大きな変化は見られない。唯一、単位数が大きく変わるのは「現代社会」で、4単位から2単位に半減する。公民は「現代社会（2単位）」もしくは「倫理（2単位）」＋「政治経済（2単位）」の計4単位のどちらかを履修する。
新課程で学んだ高校生が初めて受験する2006年度の大学入試センター試験では、多くの大学が5教科7科目で実施することが予想されるため、「現代社会」が受験科目として選択される可能性は高い。すでに03年度のセンター試験の「現代社会」の受験者数は4万8079人増の21万3012人となり、地歴、公民、理科の3教科中、最も受験者の多い科目となった。旧課程の「現代社会」は、文系54.0％、理系51.5％の履修状況だったが、新課程では文系86.6％、理系81.8％の履修状況となっている（03年ベネッセコーポレーション調べ）。1年次の履修が中心となる傾向は大きく変わらないが、1年次と2年次、1年次と3年次、その他補習を利用して指導する予定だとの回答も見られた。
内容は（1）現代に生きる私たちの課題（2）現代の社会と人間としての在り方生き方、の2項目に再編成された（図表1）。（1）は、学習の動機づけや学び方の習得に重点を置き、高校ごとに指導する内容を選ぶ選択的学習が導入された点が特徴的だ。 |
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| 項目を選んで学習することで内容がより精選される地理 |
地理では、「地理A」「地理B」の科目構成、単位数（A2単位、B4単位）は変わらないが、内容で大きな再編成が行われた。「地理A」では、旧課程で三つだった大項目が「現代世界の特色と地理的技能」「地域性を踏まえてとらえる現代世界の課題」の2項目に、「地理B」では、四つの大項目が以下の3項目に再編成された。
（1）現代世界の系統地理的考察
（2）現代世界の地誌的考察
（3）現代世界の諸課題の地理的考察。
（1）は、現代世界を系統地理的にとらえる視点や方法に関する学習が一層充実できるように見直して、再構成された。（2）は、現代世界を地誌的にとらえる視点や方法に関する学習が一層充実できるように見直して、市町村、国家、州・大陸などの規模に応じて追究的な学習ができるように再構成された。（3）は、旧課程では各項目ごとに分散されていた現在社会の諸課題がまとめられたものだ。
図表2の（3）のア～エの項目から二つ、オ～クの項目から二つ選択をする点も新しい。また、従来から重視されている地理的見方・考え方に加えて、地理的技能も重視されている点にも注意が必要だろう。地理的技能とは、地形図などに等高線や地図記号などを書き加えたり、文章をもとに、地図や地形図そのものを描くことなどを指す。 |
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| 歴史への興味・関心を高める「世界史の扉」の新設 |
世界史の「世界史A」「世界史B」の科目構成、単位数は旧課程と同様である。新学習指導要領の目標には、以下の2点が強調されている。
（1）「我が国の歴史と関連付けながら」という世界の中の日本という視点
（2）国際社会に「主体的に」生きる日本人としての自覚と資質を養うという視点。
同時代史的な視点によるグローバルかつ構造的な歴史把握の重視、現代とのつながりの重視という視点から、項目の再構成がなされている。
「世界史A」では、旧課程で四つだった大項目が三つになり、近現代の世界の一体化に重点をおいた構成となっている 。
「世界史B」では、七つの大項目が五つに再編されている。その中でも、大項目（1）で、世界史学習の導入として「世界史への扉」が新設されたことが注目される。ここでは、身近なものや日常生活に関わる事柄から世界史を考えたり、身近な地域の歴史や日本の歴史の中に世界史とのつながりを見いだすことによって、歴史に対する関心を高め、学習への意欲を育てることをねらいとしている。
また、大項目（2）～（5）では、従来の文化圏別の構成を改めて、地域世界別の構成となった。さらに大項目（5）「地球世界の形成」では、1970年代以降を扱う「冷戦の終結と地球社会の到来」が新設され、「国際対立と国際協調」「科学技術の発達と現代文明」「これからの世界と日本」の三つの中項目は、主題学習のテーマとして設定されている（図表3）。
主題学習は新課程の特徴の一つで、主題の設定によって生徒の主体的な追究を促すねらいがある。
現代社会の直面する課題は地歴・公民科目で共通して扱われ、06年度入試では、歴史的な切り口から把握する力が求められることになると予想される。 |
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| 世界史的な視点がより強まった「日本史B」 |
日本史でも、「日本史A」「日本史B」の科目構成、単位数は旧課程と同様である。
「日本史A」では、旧課程で五つだった大項目が四つに、「日本史B」は、八つの大項目が七つになった。新しい点は、大項目（1）に、「日本史A」では「歴史と生活」が、「日本史B」では「歴史の考察」が加えられたことだ。
この項目には、日本史学習に対する興味や関心・意欲を持たせようという意図がある。歴史への関心を高めるとともに、主題設定して追究する学習を充実させ、歴史的思考力の育成を一層重視する観点から設置された。例えば「日本史B」の「歴史の考察」では、歴史と史料の項目には資料を読む、資料にふれるという内容がある。
さらに、「日本史A」は、前近代史が大幅に削除され、近現代史中心の学習という性格を強めた構成となった。
「日本史B」は、世界史的な視野に立って日本史を総合的に理解させる趣旨を、一層明確にした。 図表4（2）～（7）の大項目には、地域名が並び、世界史的な視野を持つという「日本史B」の特色が表れている。
06年度入試の日本史では、従来同様に基本事項の習得に加えて、歴史的背景の考察、生活史的な観点からの歴史理解を求める出題などが予想される。 |
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