ベネッセ教育総合研究所
特集 問われる教育「特色ある大学教育支援プログラム」からの視点
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問われる教育
「特色ある大学教育支援プログラム」からの視点
文部科学省の「特色ある大学教育支援プログラム」が実施され、その結果が明らかになった。本特集では、同プログラムのねらいや趣旨、審査の概要、採択結果などを解説した上で、実施委員会委員長、委員へのインタビューを通して、審査内容についてもレポートする。採択された取り組みについては、全体の概要に加え、各テーマごとに一件のプログラムを紹介する。


特色ある優れた教育活動を評価し大学の共有財産としての活用を図る
「大学教育全体の活性化」が事業のねらい

 今年度から5年計画(予定)で始まった「特色ある大学教育支援プログラム」(以下、支援プログラム)は、大学教育の改善に資する特色ある優れた教育の取り組みを選定し、それを大学人が共有することで、高等教育全体の活性化を図ることを目指した文部科学省の新事業だ。
 高等教育局の主任大学改革官、小松親次郎氏によれば、同プログラムの誕生には大きく二つの背景があるという。一つは、臨時教育審議会(1984年発足)以来行われてきた様々な大学改革の潮流だ。98年の大学審議会の答申「21世紀の大学像と今後の改革方策について」において、大学は競争的な環境の中で個性を発揮すべきとの提言がなされてから、大学評価ともあいまって大学の諸機能の向上を図る様々な試みがなされてきた。
 もう一つは、昨年度から実施されている「21世紀COEプログラム」(以下、COE)だ。こちらは大学の研究機能の向上を目指したものだが、「COEでは客観的な選定システムがうまく機能している」(小松氏)ことも参考にして、大学の教育機能の向上を図れるのではないかとの期待が大学関係者の間に高まったのだという。
 支援プログラムのねらいについて「大学ならではの優れた教育の取り組みを一種の『共有財』として集め、各大学に教育機能の改善・向上のための参考として役立ててもらうことにある。また、高等教育研究の発展のための資材ともなりえる」と小松氏。教育の取り組み内容を審査し、その結果を広く社会に公表すること自体が、大学や教員のインセンティブを高めていくとの考えのもと、大学人に切磋琢磨の機会を広げようというわけだ。
 だが、COEに次ぐ文科省の事業ということもあって、「教育版COE」や「COL(Center of Learning)」などの呼称が独り歩きし、真の意図が伝わりにくかったことも事実だ。
 文科省は、「COEは誰もまねのできない世界最先端の研究拠点づくりを目的に重点投資を行うなど、いわば研究者養成のための拠点形成システムといえる。特色ある大学教育支援プログラムは、学部段階を中心とした大学教育全体の質の向上を目指すプロジェクト支援事業であり、拠点(Center)づくりを支援するのとは趣旨が異なる面がある」(小松氏)と、両事業の違いを説明している。


他大学の参考になることが採択の基本条件


 支援プログラムの審査は、(財)大学基準協会に委託され、同協会が設置する「特色ある大学教育支援プログラム実施委員会」が審査、選定などの実務を担当した。
 募集対象となる教育プロジェクトは、大学の組織的な取り組みで、かつ継続的に実施され、実績のあるものとされた。組織的な取り組み、つまり大学全体または学部(短大は学科)、キャンパス単位での取り組みとしたのは、特定の教員の能力や人気に負うプロジェクトやごく一部の学生だけが対象となるプロジェクトを排除するためだ。
 実績については、細かな規定はされなかった。実績があると評価される継続年数の設定は困難であるため、申請する大学が自ら継続性と実績を説明できればいいとの考えだ。また、構想段階のプロジェクトの応募も認め、その場合は、そのプロジェクトの実現性を証明できるような基盤を有しているかどうかを評価するとした。
 募集に際しては、応募のしやすさを考慮に入れ、五つの審査部会ごとにテーマ例が示された。あくまで参考としての例示だったが、結果的にはテーマ例に沿った申請内容が大半を占めたという。
 複数の大学が共同で行う取り組みを除き、各大学・短大が応募できる教育プロジェクトは1件のみだ。大規模大学では複数の取り組みの中からどれを申請するか検討したところもあり、「申請するプロジェクトの選択は、大学の戦略を表すといった見方もできる(小松氏)」という性格も帯びることになった
 審査では、支援プログラムのねらいや趣旨が十分に反映されることが期待され、特に「大学教育の改善に資する」かどうかが大きなポイントになったという。その大学の取り組み自体が優れているということ以外に、他大学の改善のヒントとなる要素を持っているかが重視された。


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