ベネッセ教育総合研究所
特集 問われる教育「特色ある大学教育支援プログラム」からの視点
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3 主として教育方法の工夫改善に関するテーマ

 大学では、採択件数の4割を医学系学部が占めた。岐阜大学医学部は、「能動・思考促進型を柱とする全人的医学教育」で選ばれた。学生が付属病院や地域基幹病院で医療チームに加わる診療参加型臨床実習や、コミュニケーション技能を高める模擬患者参加型の医療面接実習など、社会の要請に応じた医学教育方法を実践している。
 広島市立大学では、英語科目を、教師が直接指導する「指導科目」と、直接指導しない「訓練科目」に分けている。訓練科目でネットワーク型プログラムを利用することで、余剰教員を指導科目に振り分け、5人程度の少人数教育を実現。「学習時間の絶対的不足」と「実際的なコミュニケーション能力の育成」という大学英語教育の抱えるジレンマを、現行体制で解決することに成功している。
 千歳科学技術大学では、eラーニングと対面型個別指導による授業の組み合わせで成果を挙げている。地域の高校と連携してeラーニングの教材作りを行っている点も大きな特色だ。
 国立の短大として唯一採択された筑波技術短大では、聴覚や視覚に障害を持つ学生に対して、障害を軽減するための「障害補償」や、授業内容がよく伝わり理解できるよう支援する「情報保障」の環境づくりを15年間継続している。
 宮崎女子短大は、「日本一の地方短大」を目指し、教員が自分の教育改善の目標をFD宣言として学内で公表。教員相互の授業参観や学生の授業評価など全学的なFD活動を徹底し、卒業生に対するアンケートでは85%以上の入学満足度を誇っている。


4 主として学生の学習および課外活動への支援の工夫改善に関するテーマ

 課外での学習支援に加え、生活支援が評価された大学もある。創価大学では、学習意欲向上のために「教育・学習活動支援センター」を開設。個別の学習相談に応じるほか、結果を教員の教育力向上に結びつける体制を全学的に整えている。日本福祉大学は「障害学生支援センター」を設立し、学習弱者を生まないシステムづくりを目指す。障害を持つ学生と他の学生が共に成長し合える環境の提供に全学で努めている。
 新潟工業短大では、学力が十分でない学生の支援を目的に、入学内定者への「入学前ゼミナール」、入学後の「補習授業」などを実施。授業の出欠をリアルタイムに把握できるシステムを導入、適時指導にも力を注いでいる。安田女子短大は、教員ではなく2年生がリードする「オリエンテーションセミナー」で、入学直後から大学生活に適応できるよう支援。2年生の成長という効果もあるという。


5 主として大学と地域・社会との連携の工夫改善に関するテーマ

 生涯学習やボランティア、高齢者支援、児童教育支援など多彩な取り組みが採択された。大学によるISO14001認証取得第1号の武蔵工業大学では、地域に開かれた「環境教育の拠点」を目指している。その取り組みに学生の積極的な参画を促していることが評価された。明治学院大学では「ボランティアセンター」を開設し、学生のボランティア活動を支援している。正規の授業でもボランティア活動を取り入れるケースが多い。京都造形芸術大学は、通信教育のスクーリングで地域の芸術活動に取り組んでいる。すべての専任教員が通信教育課程のプログラムに参加するなど、全学的な運営がなされている。
 岐阜私立女子短大は、デザインを通して地元と交流。リカレント教育目的の公開講座や、地元アパレル企業でのインターンシップなどで、地域産業の人材育成を図っている。桜の聖母短大では、生涯学習に力点を置く。地元のニーズに応えるべく100以上の講座運営に加え、託児施設など受講環境も整備。コミュニティカレッジとしての短大教育のモデルケースとして注目される。千葉経済大学短大部では、学年や学校の枠を超えた触れ合いの中で豊かな人間性を培おうと、「子ども造形教室」を開催。毎回50〜60人の学生が子どもたちの造形活動を支援している。


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