ベネッセ教育総合研究所
特集 問われる教育「特色ある大学教育支援プログラム」からの視点
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すべての教員が指導スキルを持てるようにすることが目的

 ほぼ全員が担当する「課題実践」の実施は、教員にとっても新たな挑戦となった。
 これまで教員は自分の専門科目さえ教えていればよしとされた。ところが「課題実践」では、様々な場面で、学生との関わり方や指導の仕方、学生同士や依頼主とのトラブルの対処、個々の評価の視点など、これまでになかったスキルが要求される。
 「課題実践」の進行にあたっては、担当教員が毎月2回のミーティングを行い、互いの進捗状況などを報告し合う。
 また、指導の経験が浅い教員は、ベテラン教員の副担当として同じクラスを受け持つ。いわばOJT制度である。どんな科目の教員でも、指導スキルを持てるようにするのが最終的な目標だ。
 「学生を自立した人間として卒業させるために、すべての教員に授業を通じて一人ひとりの学生の成長を見てほしいし、伸ばしていただきたいと考えています」(森脇学長)


1年次で課題の実践に必要な学習方法を学ぶ

 基礎から応用という学習の流れのなかで、「課題実践」が応用編にあたるとすると、1年次に必修科目として実施する「チーム学習へのステップ(2単位)」「フィールドワーク(2単位)」は基礎編となる。学生たちはこれらの必修科目を通して、課題の実践に必要な学習方法を学ぶ。
 「チーム学習へのステップ」では、情報を収集・分析してグループディスカッションをしながら、集めたデータを整理していくトレーニングを積む。「フィールドワーク」では、実地調査(インタビュー)をしながら情報をまとめ報告をすることで、取材の方法と情報を読み取る技能を身につける。
 これらの科目に加えて、パソコン基礎演習やビジネスマナー等のリテラシー科目群で身につけた技能も生かして、2年次の「課題実践」に取り組む。
 「1年生のときに学んだことが実際に役立ったり、自分なりに発展させることができるという体験を通じて、学生は課題に主体的に関わるようになります。また、クラスの中で最初は目立たなかった学生や何をしたらいいか戸惑っている学生も、課題に取り組むうちに自分でも思ってもみなかった能力を発揮し始めます」(池内教授)
 何気ないアイデアをみんなにほめてもらったり、一生懸命やったことを認めてもらうなど、ちょっとしたことをきっかけに、どんな学生もクラスの中で自分の役割を見つけて、輝き出すという。


来年度には新たな取り組みがスタート

 森脇学長によると、「課題実践」をスタートさせてから、それまで数年間低調だったビジネスインターンシップやボランティア実習への参加希望者が目に見えて増えたという。他の授業はもちろん、サークル活動などにも活気が戻ってきた。
 そのような学生の「やる気」をほかの授業や活動にも生かしていくために、新しい試みとして、来年度はキャンパススタッフラーニング制度がスタートする予定だ。学内の活性化につながる課題を設定し、その活動を推進するスタッフを募集する。興味のある学生は自主的にエントリーする。学年を問わず募集し、最長2年間の活動となる。例えば、エコ活動を推進するスタッフや、新入生のオリエンテーションにあたってのリーダーなど様々な活動が対象になるという。
 「キャンパススタッフラーニング制度は、授業とサークルの中間的な課外活動という位置付けです。ただし、活動についてのレポートを提出した学生は単位申請できる制度も設ける予定です。『課題実践』とともに、学生が能力を伸ばすことのできる取り組みとして機能することを期待しています」(森脇学長)


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