ベネッセ教育総合研究所
特集 問われる教育「特色ある大学教育支援プログラム」からの視点
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大規模校では類をみないITによる充実した学習支援システム
[明治大学]
IT環境を整えて学生を支援する大学が増えているが、ほとんどは小規模大学や一部の学部・学科での取り組みだ。明治大学の「ネットワークを用いた教育学習支援システム」は、3万人の学生が複数のキャンパスで学ぶ総合大学で、教育情報を一元的に管理、すべての学生と教職員に提供しているスケールと先進性、実績が評価された。


情報インフラに加え情報基礎教育も基盤に

 掲示板で大学からの事務連絡や休講情報、レポート課題などを確認する。授業に出る前に、前回までの内容を復習し当日の内容を把握した上で、教材に目を通す。同じ授業に出席する仲間と最近のテーマについて議論する。あるいは授業の合間に事務室で協定校留学の申し込み方法をたずねたり、レポートを提出する。いずれも一般的なキャンパスライフのひとコマだが、これらがすべてパソコン上からできる環境は、必ずしも「一般的」にはなっていない。
 大規模大学の中にあってそんな環境を提供しているのが、「主として教育方法の工夫改善に関するテーマ」に採択された明治大学の「Oh-o! Meijiシステム」だ。このシステムは、「『個』を強くする大学」を掲げて推進する改革の中に位置付けられている。IDとパスワードを入力すれば、どこにいても学生生活に必要なほとんどの情報にアクセスできる。しかも、自分に関係ある情報だけをピックアップして届けてくれる。学生生活を支援する強力な情報ツール、コミュニケーションツールとして機能しているわけだ。
 同大学では、他大学に先駆けて全学規模での情報環境の整備に着手した。ネットワーク利用を前提とした情報基礎教育を1980年代半ばから全学で導入。98年秋に完成したリバティータワーは、全教室にデジタルプレゼンテーション設備があり、すべての席に情報コンセントを装備する。これを標準的な情報インフラと位置づけ、建設中の大学院施設や新教室棟にも適用している。
 こうした最先端設備と教育成果を基盤に、ネットワークを活用した学習支援システムを作ろうという機運が生まれた。それが「Oh-o! Meijiシステム」に結実した。このユニークな名称は、校歌のサビの部分を採用したものだ。


あらゆる情報をリンクさせ選択の自由度も高める

 このシステムは、「クラス・ウェブ」と「ポータルページ」で構成されている。
 クラス・ウェブでは、主に教育に関する情報の管理・提供を行う。システムの構築を担当した政治経済学部経済学科長の安藏伸治教授は、「約1万1000の開講科目に関して、あらゆる教育コンテンツを入れることが最終的な目標」と説明する。現在、科目ごとに「シラバス」「授業計画」「授業内容」「資料」「ディスカッション」「レポート」「アンケート」など多様な機能がある。
 「シラバス」は学生に配付する冊子と基本的に同じ内容だが、冊子には掲載されないゼミ科目や語学科目も網羅。「授業計画」には、シラバスより詳細な予定や必要な事前学習など、授業の進行に役立つ情報が入る。授業のレジュメや板書内容は「授業内容」に集められ、配付資料、図版・データ、映像などは「資料」に格納される。
 さらに「レポート」では、レポートや小テスト、宿題などが提示され、ここから提出もできる。「ディスカッション」は、教室外での教員と学生による双方向の討論の場。「関連リンク」には、授業で使う教材や事前・事後学習を補助するリンク先をリストアップできる。
 これらのうち、例えば「シラバス」と「レポート」の機能は使うが「授業内容」「資料」などは利用しないという具合に、教員が自分の教育スタイルに応じて自由に取捨選択できる。また、「シラバス」は学外にも公開されるが、それ以外は、教員がそれぞれの判断で公開度を3段階に設定できる。「履修者」のみに限定するほか、学内者なら誰でも見られる「学生・教職員」という選択も。「誰でも」と設定すれば、「シラバス」同様学外者にも公開することになる。
 一方、ポータルページは、「お知らせ」「時間割」などのメニューがある個人専用ページだ。「お知らせ」には、事務室や図書館からの個人あての連絡のほか、所属する学部・学科、学年、履修科目などに応じて情報が送られてくる。休講情報や教室変更は、自分の履修科目に関するものだけが表示される。これらの情報を携帯電話のメールとして転送する設定も可能だ。
 自分の「時間割」の科目名をクリックするとクラス・ウェブに飛び、シラバスやレポートを確認できる。このほか、入学時からの成績一覧や健康診断の結果を表示したり、大学への質問をFAQで調べたり個別に質問することが可能で、個人のリンク集を作ることもできる。大学生活関連情報への自分専用の入り口になるわけだ。


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