ベネッセ教育総合研究所
特集 問われる教育「特色ある大学教育支援プログラム」からの視点
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テーマを自由に選び経費管理も担う課外研究でやる気を育て専門教育に橋渡し
[秋田県立大学]
「学生に少し背伸びをさせてあげることで、やる気を持続させ充実した学生生活を送らせたい」。秋田県立大学の「学生自主研究制度」は、鈴木昭憲学長の強い要望で開学時から実施されている。1、2年生が対象で、自分で課外研究のテーマを決め研究計画書を作って大学に申請、交付金を受けて1年間取り組み、成果を報告する。


自主性を重んじ助言は最小限に

 1999年度に開学した秋田県立大学は、本荘キャンパスに理工系のシステム科学技術学部、秋田キャンパスに生物・農学系の生物資源科学部を持つ科学技術系大学だ。各学部の入学定員は240人、110人と少ないが、広大な敷地に充実した施設・設備を備える恵まれた教育環境を誇る。
 今回「主として学生の学習及び課外活動への支援の工夫改善に関するテーマ」に採択された「学生自主研究制度」は、低学年のうちから専門分野に触れさせる、理系大学ならではのモチベーションアップ・プログラムといえる。
 学生への研究交付金は一件につき25万円を上限とし、500万円の予算を確保。あくまで学生の主体性に委ね希望者のみが参加する課外研究に位置付け、単位認定もしない。入学直後のガイダンスで、教員が制度の概要を紹介。高校時代から温めていたテーマはもちろん、「何かやってみたいけれど、どんなテーマにすべきかわからない」という学生でも、自ら選ぶ指導教員と相談して申請できる。
 申請は、個人、グループいずれでも可能。自分の適性を知り、進むべき専門領域を検討する機会にするため、「学部・学科、専攻領域にとらわれない」としている。違う学年や他学部・学科の学生と組んだり、指導教員を他学部から選んだりすることもできる。入学直後の1年生は自分が選んだテーマに適した指導教員が誰か分からないことが多いため、所属学科の教員が適任者を推薦する。
 学生は主体的に研究計画を立て、備品や消耗品の購入費、旅費など必要経費を積算。指導教員は必要最小限のアドバイスにとどめる。ただし、申請内容が制度に合うよう計画や経費の妥当性をチェックし、見直しを指示することも。
 申請書は、学長と両学部長、事務局長などで構成する審査会が、目的に適合した計画か、内容や経費が適正かを審査する。しかし、学生の意欲を最大限に尊重するという理念にもとづいて、基本的にすべて採択し、予算と申請件数の兼ね合いで交付金を多少削ったりする程度だという。
 5月中旬に応募を締め切り、6月に採択を決定。学生は経費の一括交付を受け、研究をスタートさせる。その過程でも教員の指導は最小限にとどめ、交付金は学生が管理し必要なものを調達する。この制度を所管する事務局総務課では、「似たような研究制度は他の大学にもありますが、経費の見積もりや管理まで任せる例は少ないのでは」と話す。これは、実社会で必要なコスト管理を学ばせることが目的だ。学生の主体性を尊重する一方で、制度はあくまでも教育の一環として位置付け、フィールドワークには教員が同行して安全性を確保するなど、大学が責任を持って対応している。
 年度末には研究成果を文書で提出してもらい、これを報告書にまとめ学内外に配布。成果報告会も開く。


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