| 第1回 「学生チャレンジ制度」にみる大学の冒険心 山梨学院大学・山梨学院短大 |
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山梨学院大学・山梨学院短大は外から見ると「冒険心に富んだ即断即決型の大学・短大」だ。学生チャレンジ制度も、このような大学風土が根付いていたからこそ、成功し、評価された取り組みといえよう。
１法人で２件の採択は教育的活力の証し
文部科学省は２００３年９月、「特色ある大学教育支援プログラム」の採択結果を発表した。その中で、山梨学院大学と山梨学院短大の共同の取り組みとして「山梨学院学生チャレンジ制度―学生の自主的探究心の涵養を目指して―」が採択されたのに加え、同短大の単独の取り組み「社会体験講座Ⅱ『ＹＵＧ日本列島縦断リレー―フォッサ・マグナを歩く―』」も採択された。一つの大学が共同と単独でダブル採択された例はほかにもあるが、共同でも同じ法人内での連携というのはここだけで、法人としての教育的取り組みの熱心さと、その成果が高く評価されたといえよう。本レポートでは、学生チャレンジ制度の取り組みを紹介したい。
山梨学院大学・短大は甲府市郊外に位置し、学生数は大学が約４５００人、短大が約８７０人である。現在短大は食物栄養科、保育科、経営学科、大学は法学部、商学部、経営情報学部、社会科学研究科修士課程の大学院を設置している。キャンパス内には地元企業など12社の協力で設置されたコミュニティーＦＭ局のスタジオがあり、若者文化の情報発信基地としての役割も果たしている。また、箱根駅伝で有名になった陸上競技や、レスリング、ホッケーなどスポーツでも数々の実績を誇っている。「個性派私学の旗手、未来型学園のモデル校」というスローガンを掲げる山梨学院大学・短大であるが、冒険心に富んでいる大学というイメージがあり、しかも都心の大学に対する反骨精神がつねに感じられる存在である。
課外活動のエネルギーが正課に逆流するプラス効果
「学生チャレンジ制度」というのは、挑戦したいと思うプロジェクトを学生が企画・立案し、選定されれば大学から奨励金が支給され、その活動を支援してもらえるという制度である。
この制度は今年度で９年目を迎えるが、これまでのプロジェクトの応募総数は２０１件、のべ１７４９人で、実際に大学から奨励金を受けたプロジェクトは81件、のべ８１８人に上る。このプロジェクトは個人でもグループでも申請でき、分野や学問的であるかないかも問われない。プロジェクトの企画力と実現の可能性、さらには社会的貢献度や学生自身の陶冶性（才能を引き出し、人格を養成することのできる可能性）などが選定のポイントになる。
選考組織は、学生センター長を委員長に各学部長、短大から各学科長、そして事務局から構成されている。プロジェクトへの奨励金額は、１プロジェクトの規模や申請額をもとに決定され、上限は50万円となっている。この制度から生まれ、実行された目を引くプロジェクトを拾ってみよう（図表）。 |
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| （図表）学生チャレンジ制度の企画テーマ（抜粋） |
「日本青年遺骨収集団への参加」を申請した学生は、00年度に個人で硫黄島での戦没者調査に参加し、遺骨の収集、日本への移葬を行った。さらにこの制度を受けて、01年度にはロシア連邦ハカシア共和国、ソロモン諸島で活動し、今年度も認定を受けてシベリアに向かうという。このような個人あるいはグループによる活動には、大学教育のカリキュラム枠をはるかに超えた学生ならではの使命感と自由な発想が見られる。
短大食物栄養科の学生による、「伝説のラーメン」という究極のラーメンづくりへのチャレンジも興味深い。研究の末、大学祭で出店し、学生や来訪者から好評を得たものの当事者は逆にプロの味の奥深さを痛感したという。
このように多様な内容であるが、ゼミ単位のグループ申請が目立つのは、ゼミでたまたま仲間が作りやすかったからにほかならない。この制度に理解を示し、熱心にアドバイスやサポートをしている教員のゼミほど、毎年申請してくるという。
制度の仕掛け人の一人で、現在学生センター長の込山芳行教授（法学部）は、個々の学生を元気づけるだけにとどまらない教育への波及効果もあるという。02年度には込山ゼミでも、学生が高校への「大学体験出前ゼミナール」を企画し、地元の甲府東高校と甲府第一高校で模擬ゼミを行った。テーマは「近隣とのトラブル」「自衛隊法、憲法９条」などである。高校生からは「いつもの50分の授業は長くて退屈だけど、ゼミの90分は短く感じられ、もっと時間が欲しいくらいだった」との感想を得た。込山教授は「学生も専門知識が問われますから鍛えられ、刺激になったようです」と話す。この制度にゼミ単位で学生が参加することによって起きる「課外活動のエネルギーが正課に逆流するプラス効果」についても指摘した。 |
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