ベネッセ教育総合研究所
新連載 教育力の時代
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就職面接でインパクトのある大学体験を語らせたい

 では、このようなチャレンジ制度はどのような経緯で発足したのだろうか。10年前、芦沢政巳就職センター副主任(現学生課長)は日頃、学生と触れ合うなかで自主的な探究心が欠如していることを実感した。また、就職面接の時に、何とかして学生たちにインパクトのある大学体験を語らせたいと苦慮していた。クラブ活動を一生懸命やりましたとか、ボランティア活動をやりました、などでは他大学の学生を凌駕できない。
 もっと何かを体験させ、自信を持たせて社会に送り出してあげたいという思いから、このチャレンジ制度という発想がその後生まれた。「教員に諮ると、最初は、お金をあげるという印象から、一部に批判的な指摘をする声もありました」と言う。しかし、手段ではなく、狙いが大切と考えた芦沢課長や込山教授が学長に意義を説いたところ、即決。予算総額300万円で実行されることになった。
 こうして95年度に、「学生チャレンジ制度」の第1回の募集が行われた。「どのくらいの応募があるのか、構想倒れにならないか不安でした」と、芦沢課長は述懐する。
 ところが蓋を開けると、申請件数44件。「しかも、われわれの考えつかないようなユニークなものが多かったのです」と芦沢課長はその時の資料を見せてくれた。「マウンテンバイク・登山・カヌーのリレーによる日本列島縦断」「パキスタンのディラン峰登山隊への参加」など、学生の冒険心を十分に満足させるものも多い。こうして制度発足当初から、学生たちは堰を切ったようにこの制度を利用した。


課題は事後の評価方法

 チャレンジ制度として選定されたテーマには、チャレンジ制度認定書が学長から手渡される。それを受け、学生たちは企画通りにチャレンジを開始する。終了した企画は、学生センター学生課に報告書として提出しなければならない。また、大学祭での展示、発表に加え、ホームページでの成果公表も行われる。
 教育的効果の大きい同制度であるが、あえて課題を尋ねると「事後評価の客観的なデータが取りにくいこと」と芦沢課長は言う。「様々な内容のテーマがあり、また、終了時期もマチマチなので一括してまな板に乗せて判断評価することができないのです」と言う。「逆に他の大学で試行してみて、よい評価方法があったら是非教えていただきたい」という言葉に、先進的大学の悩みの一端を垣間見た。


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