ベネッセ教育総合研究所
特集 大学広報の今、これから
大阪大学
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REPORT1
訴求対象の視点
高校生や企業のニーズに応えて、分かりやすさと使いやすさを追求
私立大学に比べて国立大学は、広報活動をあまり積極的に行っていなかった。その中にあって大阪大学は、私立大学に匹敵するボリュームと内容のWebサイトや大学案内をいち早く作成し、受験生、地域住民、企業、そして世界に向けて活発な情報公開、情報発信を行っている。

 大阪大学は、1998年3月に
(1)産業界を対象とした情報発信の推進
(2)海外からの要望に対応した情報発信機能の整備
(3)地域・社会に向けた情報発信体制の構築
(4)学内広報体制、事務支援体制等の整備
という広報活動の柱となる四つの重点項目を打ち出した。幅広い対象者の視点を意識した広報活動が、この年から本格的にスタートした。
 Webサイトは、この4本柱を実現するための総合的な情報発信ツールと位置づけられている。02年度のリニューアルによって、膨大な情報を利用者それぞれに使いやすい形で提供できるようになった。それまでは、全コンテンツをトップページに盛り込んでいたため、欲しい情報にたどり着くまでに時間がかかった。そこで、「研究者向け」「高校生/受験生向け」「在学生/教職員向け」「社会人/一般の方向け」「卒業生/地域の方向け」の5方向の訪問者別メニューをトップページに設置、情報を整理したことで使い勝手が飛躍的にアップした。
 リニューアルは、教員4人からなる学内ワーキンググループが主導し、具体的な制作実務は総務部企画広報室が担当した。掲載する情報が豊富かつ多彩なだけに、コンセプトを決めるだけでも半年かかったという。
「研究成果を世界へ向けて発信し、国際的に評価されることは、優秀な学生の確保にもつながる」(岸本忠三前総長)という考えから、世界への視点も重視。年度ごとに研究成果を英文で紹介する冊子「ANNUAL REPORT OF OSAKA UNIVERSITY」を02年度からWebサイトに公開したことで質量共に充実させた。
 シンポジウムや諸行事の日程などの最新情報を発信するため、メールマガジンも発行している。高校生、社会人を中心に読者は1600人を超える。さらに、特に企業からのニーズに応えるため、Web上の「大阪大学研究者総覧」で全教員の情報を公開している。研究テーマ、授業科目、主要著書・論文などがわかる。

広報の重要性が高まる中、教員、職員双方に高い意識

 大学案内では、研究成果を世界に向けて発信していることを高校生に分かりやすく伝えるコーナー「阪大発→世界」を巻頭に設けた。「写真や図を大きく扱い、視覚的に楽しく読める工夫をしています。また、読む部分は少ないながらも学問に対する知的興味を喚起するようにまとめています」(佐野邦雄入試課長)。
 大学案内の編集は、5人の教員による大学案内編集小委員会が中心になって進める。この小委員会は、大学説明会実施委員会の小委員会として編成されており、03年度は文学部、経済学部など5学部から各1人の委員が選ばれた。委員会は、編集方針を決める5月と、制作に入る前の9月に開く。委員は毎年交代し、その都度担当学部も入れ替える。委員会の事務と制作実務は学生部入試課が担う。
 委員会では、文学部の美学の教員がデザイン面での意見を述べるなど、その学部ならではの意見やアイデアが出て、活発な議論が行われるという。04年6月に発行予定の05年度版には、03年度新たにCOEプログラムに採択された7件の研究内容や法人化などの最新トピックスが加わる。
 このほかの広報ツールとしては企業への広報誌として98年に創刊された「Handai NEWS Letter」がある。最新の研究成果や産官学連携のトピックスを紹介する内容で1万1000部を発行する。その半数は一部上場企業の役員向けに配布。この冊子と大学案内は、共にシンボルカラーであるブルーを基調色とし、ビジュアル面での統一を図るために同じデザイナーを起用している。
 企画広報室も入試課も、法人化によって広報の重要性がますます大きくなると捉えている。大澤眞一企画広報室長は「4月に入ると、法人としての広報活動も新たにスタートします。走りながら考えますよ」と力強く言う。社会の今・これからを見つめながら常に現在進行形で考えていこうとする姿勢の中に、広報に対する高い意識が集約されているといえる。


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