ベネッセ教育総合研究所
特集 大学広報の今、これから
東洋大学
PAGE 13/21 前ページ次ページ


REPORT2
メディアミックス
キャラクターでアイキャッチし、教育内容の理解につなげる
昨年11月、電車内や駅でムーミンのポスターをよく目にした。キャッチコピーは「キャンパスが変わる」「4年間都心で学べる」。東洋大学が東京都心にある白山キャンパス再開発の周知を狙ったキャンペーンのポスターだ。

 東洋大学の文、経済、経営、法、社会学部の5学部はこれまでキャンパスが、1・2年次は朝霞(埼玉県朝霞市)、3・4年次は白山(東京都文京区)と二つに分かれていた。それを05年度から4年間の一貫教育を目指し白山キャンパスに教育機能を集約する計画だ。これに先駆け、04年度からカリキュラムの大幅改訂を行う。白山キャンパスの再開発計画も進行中だ。
 白山という東京都心部にキャンパスを集約することで、これまで通学に時間がかかった神奈川県や千葉県からの通学も容易になる。そこで都内の主要路線をはじめ、神奈川県を走る鶴見線、南武線、東京と千葉・茨城を結ぶ常磐線などにもポスターを掲示。さらに、横浜方面からの電車が乗り入れ、かつ多くの若者が集まる東横線渋谷駅や小田急線新宿駅の構内を1週間にわたりムーミンのポスターで埋め尽くした。
 これらのキャンペーンを03年11月に集中して行ったのは、そろそろ受験校を絞ろうという高校生の進路意識を考慮してのことだ。
 学内では「やりすぎではないか」との意見もあった。しかし「そうした指摘があることはポスターが目に付いたという証拠。本学を認知してもらうための広告効果が上がっているのだと説明している」と入試部の横田章部長は言う。
 「大学本部の意向を踏まえ、そこに入試の最前線でキャッチした感覚をプラスし、効果的に表現することを心掛けている。そして、確信を持って意思決定を行うこと、また即決性も重要で、方向性を誤らなければ良い結果につながる。成果を上げていくうちに批判も好意的な評価に変わってきた」

説明会で高校生のニーズをつかみ、デザインや情報に反映させる

 イメージキャラクターの採用を検討し始めたのは開学100年を越えた節目の90年頃で、入試部内で「東洋大学のイメージをつくり変えたい」という声が上がった。大学の存在をより多くの高校生に認識してもらうためには、視覚に訴える必要があるという方向で議論を重ね、アニメーションキャラクターの採用を決定した。日本の若者に知られているアニメの中でもムーミンは、その家族や友人たちも含めた「社会」を単位としたキャラクターであることが選定のポイントとなった。
 96年度から大学案内やポスターへのキャラクター使用を開始。2年前には早稲田・三ノ輪間を走る都電の「ラッピング広告車」で話題になった。「キャラクターの使用はあくまでもアイキャッチ。大学を知ってもらうための一手段」と横田部長は言う。
 アイキャッチの戦略は、大学の発行物にも表れている。大学案内作りは、まず手にとってもらうことが第一と考え、表紙にはイラストがいいのか、写真がいいのか、また、デザインや色など若者の好みを様々な角度から検討する。手触りも重視し紙質にもこだわる。
 スタッフにとって各種説明会は、高校生の志向やニーズをつかむ場でもある。多くの高校生に対応しながら、大学の資料への反応を見、話を聞くのも重要だ。近年、高校生から質問されるのは資格と就職のことが非常に多い。こうした問いに答えるよう大学案内の誌面作りにも配慮する。教育内容のページでは学部ごとに高校生と年齢の近い在校生や卒業生を写真で紹介し、生の声を伝える。「教育内容を知ってもらうには、まずパンフレットに手を伸ばしてもらうこと。活字離れが進んでいると言われるが、そうした若者に関心を持ってもらうにはどうすべきかをスタッフは常に考えている」。
 大学教育を肌で感じてもらう機会作りも重視している。昨年で4年目を迎えた「学びライブ」は、年に2回、白山、川越、板倉の3キャンパスで休日を利用し高校生に大学の授業を体験してもらうイベントだ。高校生にとって身近なテーマを設定し各学科から複数の講座を開講。その数は合計100に及び、昨年6月のライブの参加者は3000人を超えた。目的意識の高い高校生が集まり、授業では多くの質問がとびかった。
 今後は、新白山キャンパスでの一貫教育のメリットなど、教育内容の周知を図るため、高校生をはじめ保護者や高校関係者に向けた広報活動に力を入れるという。


PAGE 13/21 前ページ次ページ
トップへもどる
目次へもどる
 このウェブページに掲載のイラスト・写真・音声・その他のコンテンツは無断転載を禁じます。
 
© Benesse Holdings, Inc. 2014 All rights reserved.

Benesse