ベネッセ教育総合研究所
特集 大学広報の今、これから
安田女子大学
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REPORT3
リサーチの活用
好評だったビジュアルを生かし、イメージ定着を図る
安田女子大学は、2003年度の現代ビジネス学部新設に続き、04年度にも家政学部を立ち上げる。統一ビジュアルを数多く露出させるメディアミックス戦略で、同じモデルを2年連続で起用。詳細なリサーチに裏付けられた、大胆な広報を展開している。

新入生へのアンケートの結果を次年度の広報戦略に反映


 「自分探しのプロローグ」。これは、03年度に新設された現代ビジネス学部の広報の基本コンセプトとして「女子学生が将来の自分の姿を思い描く」ことを表現したキャッチフレーズだ。ビジネス、IT・マルチメディア、コミュニケーションの各領域をカバーする実学指向の学部だが、あえて教学内容を前面に押し出さず、キャッチとビジュアルから自分探しのイメージを想起させる方向で広報を展開した。
 また04年度に開設する家政学部(生活デザイン学科、管理栄養学科)の広報でも、同じモデルを使い、現代ビジネス学部とビジュアルの統一感を持たせた。
 普通は2年連続で同じモデルを使うのは勇気がいるが、あえてこのような広報戦略を取ったのは、現代ビジネス学部の新入生全員に対して実施したアンケートで、この学部の広報におけるビジュアルイメージが高い支持を得たことが確認されたからだ。
 例えば、現代ビジネス学部を何で知ったかという質問に対しては、93.2%の新入生が学部パンフレットと答えており、大学案内の72.9%、ホームページの59.3%を大きくリードしていた。広報手段で好感度が高かったのも、パンフレットの92.7%がトップで、その存在が大きいことが明らかになった。
 また、パンフレットやポスターなどのデザインについては、「さわやかで知的な感じ」「とても好感が持てた」など、モデルに対する印象が大きく影響していることも判明した。入試広報課の杉本達彦課長は「ロゴも含めて同じような雰囲気を創出することで、本学に対するプラスイメージを定着させることができたと思う」と成果を強調する。

自らの大学の強みを効果的にアピール

 新設の際の広報では、いかに多くの人に認知してもらうかが重要だ。同大学が立地する広島市は中国地方の中核都市であり、メディアの種類や数が適度に集中している。そのため、大都市とは異なり、複数のメディアを集中的に利用する効果は大きい。そこで同大学では、ビジュアルを統一し、様々なメディアに露出させるメディアミックス戦略をとった。
 テレビでは、民放4局中の2局でスポットCMを流し、ラジオCMも1局で流した。中国地方と四国の瀬戸内側を走るほぼすべてのJR線といくつかの私鉄には交通広告も打った。いずれも認可が下りる1、2カ月前の10月に集中させた。また、同地域の代表紙である中国新聞を中心とする6紙に、10月を含めて4回、広告を出稿。さらに5月、9月、12月末には各時期に合わせた内容で、パンフレットを作成。高校や進学説明会などで配布すると同時に、ダイレクトメールでも送付した。
 ビジュアルを統一した狙いについて、杉本課長は「一目で記憶に残るようなイメージを繰り返し露出させることで、大きなインパクトを与えたかった」と語る。
 もちろん、イメージ広告に終始したわけではない。パンフレットの第2弾、第3弾では予定されるカリキュラムや授業概要を紹介するなど、段階を追って学ぶ内容が具体的に把握できるようにした。その結果、現代ビジネス学部では、志願倍率は約5倍となり、大学全体の志願者数も対前年度比23.4%増を記録した。
 イメージから入っていく広報活動を展開している大学は多いが、すべて成功しているとは言い難い。その中にあって、安田女子大学が成功しているのは、「就職の安田」というブランドイメージが定着していることが大きい。前出のアンケートでも、同大学のイメージを「就職状況が良い大学」と答えた新入生は88.1%と群を抜く。杉本課長も「現代ビジネス学部も家政学部も、最終的には就職につながる学部であることを意識して広報を行っている」と認める。自らの大学の強みを熟知し、リサーチを踏まえて効果的にアピールする同大学の広報戦略は、他大学にも参考になりそうだ。


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