ベネッセ教育総合研究所
特集 大学広報の今、これから
東海女子短大
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REPORT4
進路選択に使える冊子
資格を切り口にした内容で、高校1、2年生に進路選択ツールを提供
2003年秋、東海女子短大は、栄養士、保育士、介護福祉士など16の資格について、仕事内容や将来性などを紹介するパンフレット「資格ナビゲーション」を作成。高校生の進路指導に役立つツールとして配布している。

 東海女子短大のある岐阜県各務原市は、名古屋市内からJRで20分と近く、大学・短大の激戦区、名古屋地区に含まれているともいえる。岐阜県全体でみても、名古屋地区への進学をはじめ若者の県外流出が目立ち、特に短大を取り巻く状況は厳しい。4大化、共学化や閉校が相次ぎ、現在、短大として運営されているのは県内でわずか3校である。
 その1校である東海女子短大は昨年創立40周年を迎え、地元では伝統校として知られる。食物栄養学科、コミュニケーション学科、児童教育学科(初等教育専攻・幼児教育専攻)、人間福祉学科の4学科2専攻からなる。栄養士や幼稚園・小・中学校教諭、保育士、介護福祉士といった資格・免許を取得できる学科が多いのが特徴で、02年度の就職率は95%と高い。
 渉外部渉外課の丹羽康之課長は、近年の女子の進路について、4年制大学への進学率が上昇する一方で、就職が非常に厳しいこと、一度社会に出てから専門学校などに通って資格を取得する人が増えている現状などを指摘する。
 「不況だからこそ、社会に出てすぐに役立つ技術や資格につながる教育を行う短大で学ぶ意義は大きい。短大卒業後、4年制大学への編入やその他の進路も考えられ、若いうちに将来の軌道修正がしやすく、2年間という短期教育のメリットは十分ある。また、就職後も結婚・出産という道が想定される女性にとっては、そうしたフレキシブルな選択肢があることが有利に働く場合もある」
 同短大では、他学科への再入学を希望する卒業生に対し、学費を減免する「卒業生リカレント制度」も設けており、この制度を利用してさらなる資格取得を目指す者も少なくないという。

資格をわかりやすく解説し、学科説明のツールとしても活用

 こうした資格志向は高校生も例外ではないという。この秋に完成した「資格ナビゲーション」(以下、資格ナビ)には、イラストをふんだんに盛り込み、同短大でも取得が可能な資格や取得までのステップをわかりやすく解説している。主なターゲットは高校1、2年生だ。
 「3年次は受験校を決定する時期であり、取得できる資格などを検討する段階ではない。一方、1、2年生は大学まで絞り込んでいるケースは少なく、将来何になりたいか、どんな専門を目指すかを考えている生徒が大半を占める。そこで、『資格ナビ』を進路選択の手段として利用してもらい、資格を正しく把握し、一つでも多く取得することで、将来の可能性も広がるということを理解してほしい。また、知識と技術を身に付けた上での『資格を生かした就職』という本学の強みをアピールしていきたい」と丹羽課長。
 「資格ナビ」は、発行して間もないため、近隣の高校に送付したり、大学説明会用の資料として使い始めたばかりだが、高校主催の合同大学説明会で配布したところ、栄養士や介護福祉士に興味を持つ生徒数人が説明を求めてきたという。自分の将来像に直結する「資格」を入り口としているため、広く高校生の興味を引きつけ、進路意識を育てる効果が期待できそうだ。
 また、教職員からも重宝されている。各学科で取得できる資格は複数あり、取得までのプロセスは様々だ。「資格ナビ」は、資格ごとに養成課程や年限から試験、採用までのステップをチャート化し、高校生が理解しやすいように表記されているため、従来よりも資格の説明がしやすくなったとの声が上がっているという。
 このほか、教員がその学科に的を絞って説明しやすいようにと、大学案内を学科ごとの分冊パンフレットとして作成し、今後、「資格ナビ」と合わせて入試広報の補強ツールとしていく方針だ。
 「誰でも簡単に説明できるようにサポートしてくれる便利なアイテムで、教職員に有効に使ってほしい。また、高校の先生方にも進路指導の際に利用していただきたい。資格の取得方法だけを考えるのではなく、資格によってどのような活躍の場があるのか、将来の可能性まで考えてもらう機会を提供したい」


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