ベネッセ教育総合研究所
特集 大学広報の今、これから
立命館大学
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REPORT6
1to1コミュニケーション
会員制ネットで受験生との距離を縮め「ファン→入学」のプロセスを構築
立命館大学が2001年8月に開設した受験生向けサイト「Rits Net」の会員制度は、1to1コミュニケーションを追究しながら進化を続けている。即時性、双方向性、動画・音声配信など、ネットの機能を生かして受験生との距離を縮め、「入学式で会おう」というメッセージを発信する。

毎日見てもらうための仕掛け


 入試やイベント、学部・学科の新増設など総合的な情報を提供する「Rits Net」は、誰でも見ることができる。そこからログインする会員専用ページが1to1の場だ。特典の一つ「過去問にトライ」は、本番と同じ時間制限や瞬時の採点に加え、会員内での順位、得点状況を表示する機能もついた。英語のリスニングテストは、ここでのみ挑戦できる。
 本年度からは、何げないキャンパスの一コマを撮った「Ritsな風景」と、入試広報課職員による編集後記風「つぶやき」を掲載。課のスタッフ7人が持ち回りで担当し、毎日更新する。「風景」では、夜のキャンパスやチアリーダーの練習、散歩に来た幼稚園児の列など、大学案内に載る風景とはひと味違う日常の一コマを見せ、キャンパスライフへと誘う。スタッフの頭文字入りの「つぶやき」も、大学を身近に感じてもらうための仕掛けだ。「絶えず立命館を意識してほしいから、毎日HPを見てもらえるよう工夫している」。同課の田中麻由氏はそう話す。
 期間限定のサービスもある。1月には、スタッフによる各入試方式の説明を動画と音声でアップ、パワーポイントでの補足もつく。同じ時期に全国で開く「入試直前ゼミナール」のネット版だ。田中氏は「入試方式が多くても、丁寧に説明すればそれぞれの理念をきちんと理解してもらえる」と話す。「1月にしたのは、あまり早くやるとイベントに来てくれなくなるから」と、笑って付け加えた。
 イベントでも会員限定の特典を設ける。8月のオープンキャンパスでは、オリジナルグッズのプレゼントに加え、事前予約した会員に20分間の個別面談を実施。約40人の予約枠が埋まった。一般来場者の4倍程度の時間をかける上、会員データを用意して臨むため、きめ細かいアドバイスができる。
 メールマガジンには、在学生からの入試アドバイス、学内各部署の若手職員によるエッセー「立命館大学のここが自慢」などを掲載。「お便りコーナー」には、会員制度の威力を示す次のような声も。「家が遠くてまだ直接目で見たことはないけど、立命館大学へ絶対行ってみせる! 皆さん、きついけど4月に必ず友達になろうね。もうみんな仲間だよね」。

保護者・教員との1to1が課題

 サービス強化に伴って入試広報課の作業量も増えているが、運用が軌道に乗り年間スケジュールを立てられるようになったため、負担はむしろ軽減したという。
 約5000人の会員の多くは同大学を第一志望とする受験生で、1、2年生が2割を占める。サイトでのコミュニケーションを通して立命館をもっと好きになり、AO入試で入学するというプロセスが確立されつつある。
 「今後は保護者や高校教員との1to1の仕組みを作りたい」と田中氏。立命館に行きたいという生徒を応援してもらうには、大人たちの先入観や疑問にも丁寧に答え、信頼を得る必要があると考えるからだ。「3万人もの学生を丁寧にみられるのか、Uターン就職は大丈夫か、といった疑問に可能な限り個別に対応したい。生徒を送りだしてくれた教員に、4年間での成長を見てもらう仕組みも必要でしょう」。
 広報の原点には「立命館を(もっと)好きになってほしい」という発想がある。法人の広報を担当する広報課の西川幸穂(ゆきお)課長は「志願者10万人の維持といった数合わせの目標ではとてもやれない。この大学で学びたいと思う生徒をいかにして増やし、どれだけ多く迎えるかという視点が大事です」と強調する。「入学前のモチベーションを最大限に上げて、入学後は総合大学ならではの多彩な選択肢で自己実現を支援する。そう考えると、大学広報の一義的な対象はやはり高校生と在学生です」。
 一方で、大学はどうあるべきか、その中で立命館は何を目指すのかという提言型広報に努め、問題意識を喚起し社会に貢献したいという。「結局はそれが本学を信頼し好きになってもらうことにつながるはず」。田中氏と西川課長は異口同音にそう語った。


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