 |
 |
|
| 教育力の時代―FDのその先へ― |
| 武蔵野大学教授 ガイダンス教育研究会 矢内 秋生 |
| 第2回 中・高の教育のノウハウを補習用eラーニングに搭載 千歳科学技術大学 |
|
昨今、eラーニングを導入する大学は増加しているが、学生支援体制やコンテンツの不足など課題はつきない。その中で、学内ばかりでなく中学・高校などで広く活用され、「特色ある大学教育支援プログラム」にも採択された千歳科学技術大学のケースはひときわ目を引く。
学生のレベルに合わせた、飽きないコンテンツ作成を重視
新千歳空港から車で約15分走ると、広大な敷地に近代的な低層の建物が見えてくる。千歳科学技術大学は光サイエンスを専門とし、光科学部の物質光科学科、光応用システム学科（定員各120人）と、大学院修士課程の光科学研究科（定員12人）から構成され、今春には博士課程（定員3人）も設置される。1998年度に創設された、まだ新しい大学だ。
そんな同大学のeラーニング事業が、文部科学省が実施する03年度「特色ある大学教育支援プログラム」に採択された。中学・高校の教員と連携して、数学の教育プログラムを体系的にデータベース化し、推薦、AO入試合格者の入学前教育や1年次の基礎教育に活用する一方で、それらを学外の教育機関にも無料で配信するという取り組みだ。学外の教育機関がこのプログラムを利用したい場合は、同大学にメール等で申し込むだけでよく、個人からの申し込みも受け付けている。03年11月現在、学内では約1000人の学生が、学外では千歳市内の中学校、道立札幌稲雲高校、メルボルン日本人学校、埼玉工業大学など計50校、約7000人が利用しているという。
事業のきっかけとなったのは、学生の学力低下だ。同大学の場合、特に理工学の基盤として欠かせない数学の学力格差が課題となっていた。
「学力不足の学生に対しても本学のレベルに合った教育を行い、一定の『質の保証』をしてきちんと社会に送り出すことが大学の重要な役割になってきています。99年度から補習授業を始めたのですが、学生のレベルにきめ細かく対応しようとすると教員数が足りない。そこで、既存の教員数で実施でき、学生一人ひとりに個別対応できるeラーニングに着目したのです」と、雀部（ささべ）博之学長は説明する。
こうした経緯から、開発のコンセプトも多くの大学とは異なる。
「eラーニングは、ある程度学力のある学生の自学自習、資格対策ツールに用いられることが多いのですが、基礎学力が不足している学生はそれではついていけない。そのため、学生のレベルに合わせて、飽きず、あきらめず、興味を持って繰り返し取り組めるコンテンツをつくることを何よりも重視しました」
|
|
PAGE
1/3
