ベネッセ教育総合研究所
特集 専門職大学院の本格展開
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福祉分野
社会人大学院で学ぶソーシャルワーカーの場合
 福祉分野で働く人がどんな教育に期待しているか、東京・多摩地域にある公的機関のソーシャルワーカーの男性(35)に聞いた。都内の社会人向け福祉系大学院の2年生で、修士論文を仕上げたところだという。

 通っている大学院の授業は、平日2日の夜と土曜日終日の週3日。「仕事を続けながら通えることが絶対条件で、教員の陣容を基準に学校を探しました」。福祉系専門職大学院はまだなく、比較検討の結果規模の小さな大学を選んだ。「とても満足で2年間では物足りない」という。卒業までの学費は約150万円。
 大学は文学部を卒業、特に強い動機もないまま求人に応じて現在の職場に。主に地域福祉に携わり、00年度からの介護保険施行後はケアプランの策定とサービス事業者の連絡調整を行うケアマネジャー(介護支援専門員)の役割も担う。地域での連携構築の仕事に加え講演も多くなった。働きながら6年前に社会福祉士の資格を取得。
 「現場での実践を通してスキルを磨いてきたという自負はあったし、研修や通信教育で理論もある程度学んだ。でもやはり、社会福祉について一度体系的に学んでおきたいという気持ちが強くなった」
 通っている大学院は、「教員の充実ぶりと実践重視の方針が自分のニーズにぴったり」と評価する。特に刺激的なのは、ソーシャルワーカーとして経験を積み、理論と実践能力を兼ね備えた教員たちの授業だという。「ソーシャルワークの知識や技術、価値に関する話は、実践と理論の両方に裏付けられた説得力がある」。
 介護保険と同時に生まれたケアマネは制度の要とされ、厚生労働省がリーダー養成事業を展開、04年度に日本社会事業大学が専門職大学院を開設するなど、レベルの底上げが図られている。看護師、保健師、理学療法士、社会福祉士など様々な分野のプロが従事。自分の専門分野とそれ以外の知識、スキルの落差が大きく、専門職としての共通基盤が確立しきれておらず質のばらつきが指摘される。専門職大学院でもその解決が期待される。
 同氏は「ケアマネには、高齢者やその家族に必要な介護サービスを把握するため、高いコミュニケーション能力と課題解決能力が求められる。それが不十分な人が多いため、意思疎通が滞りサービスが届かない現状がある」と指摘。さらに「介護はチームケアなのでコーディネート能力も欠かせない。介護保険制度そのものの知識に加え、地域の社会資源に関する情報に強くなるなど、学ぶべきテーマは多い」と話す。



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