ベネッセ教育総合研究所
特集 専門職大学院の本格展開
南 学
静岡文化芸術大学 助教授
南 学
1953年横浜市生まれ。東京大学教育学部卒業後、横浜市役所に勤務。環境事業、経済、総務局で勤務、89年からカリフォルニア大学(UCLA)に留学派遣、修士号取得。帰国後横浜市立大学事務局、市長室、企画局で現場業務からトップマネジメントまでを経験。00年静岡文化芸術大学文化政策学部助教授に就任。02年から中田横浜市長のブレーンとして同市参与を兼務。04年4月から神田外語大学教授に転任予定。専門は地域政策と高等教育。
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寄稿
専門職大学院に求められる発想
〜実務家の知識とスキルをプログラムに結びつける
コーディネータの存在がカギに〜
1. 専門職大学院の二つのパターン
「資格」と「品質証明」


 法科大学院が次年度からスタートすることもあり、専門職大学院が注目を集めている。ただし、「専門職大学院設置基準」でも独立した規定がおかれているように、法科大学院は司法試験改革の流れの中でアメリカ型の専門教育をモデルに考えられたものであり、一般の専門職大学院とは違ってくることに注意を要する。
 アメリカの修士号取得に関して、明確に他の分野と区別されている学位がある。これは、「ファースト・プロフェッショナル学位」と呼ばれ、日本がモデルにしたロースクールによる法律専門家、医者の養成を担当するメディカルスクールやデンタルスクールなどがある。法律や医学では、修士号に対して「ドクター」の称号を与えるのが一般的である。これ以外の一般的プロフェッショナルディグリーで最も多いのは、ビジネス、教育などである。
 両者の違いは特定の職業に従事する上で必須となる専門学位と、履修分野の専門知識の修得証明としての専門学位という、修士号の中身の違いといえる。日本の場合、前者に相当する学位は法科大学院のみであり、今後、アメリカと同様に医師や公認会計士などの職業で一定の大学院教育が必須となり、これらの教育を担う専門職大学院も誕生する可能性が出てくる。ただし、これらの分野はアメリカの例を見ても、「資格」が専門職業の分野と一致し、その資格によってある程度の地位と所得が保障される分野に限られるだろう。
 その他の分野では、専門学位の持つ意味は、その職業分野へのパスポートとはならないが、専門知識によって、未取得者に比べ地位や給与が高くなる可能性が高い、という「品質証明」のような位置づけになる。従って、専門職大学院には、専門領域に関する職業へのアプローチが、大きく分けて2種類あることを明確にする必要がある。


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