ベネッセ教育総合研究所
特集 専門職大学院の本格展開
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1年コースと2年コースで出願資格を分けるケースも

 専門職大学院の標準修業年限は、専攻分野の特性などによって1〜2年の間で弾力化することが認められており、1年コースを設定したり、3〜4年での履修を認めている大学院もある。コース設定には授業時間帯も関係する。昼間授業のみにすると一般社会人は会社を休・退職しなければならないため、昼夜開講または夜間開講で2年間というシステムを取っているところが圧倒的に多い。働きながら2年間で専門職学位を取得するというのが一般的な専門職大学院の姿といえる。
 1年コースと2年コースを併設している大学院では、1年コースの募集人員を絞ったり、出願資格を厳しくしているところもある。企業派遣の学生や退職者を対象とし、短期間で集中的に学ぶカリキュラムにするため、それに見合う職務経験と高い能力を要求しているとみることもできそうだ。同志社大学大学院ビジネス研究科の場合、2年コースは実務経験3年以上、TOEIC650点以上が条件だが、1年コースでは実務経験5年以上、TOEIC700点以上となっている。
 なお、1年コースしか設定していないのは、日本社会事業大学大学院福祉マネジメント研究科と、法政大学大学院イノベーション・マネジメント研究科の2校のみ。
 学費は通常の大学院よりも高めに設定されている。要因の一つは、規定される専任教員の数が一般の修士課程よりも多く、さらに一定数の実務家教員の配置が義務付けられている点にある。専攻分野に関連した職業の第一線で活躍する人材を採用することで、その報酬が学費に反映されるからだ。アンケートでは、専任教員の3〜5割を実務家教員としている大学院が多い。
 国立の場合、初年度学費は一律80万2800円だが、この4月に法人化されるため、05年度以降、変動する可能性もある。
 私立は軒並み100万円を超え、250万円近い大学院もある。
 修業年限を1〜4年の中から選択可としている同志社大学のビジネススクールでは、固定授業料と1単位ごとの従量制とした単位授業料を設定し、長期コースの授業料負担を軽減させるシステムを採用する。
 独自の奨学金制度がないところの方が多い中、青山学院大学、早稲田大学などの給付型奨学金が目を引く。一方で、中央大学、東京理科大学など希望者全員を対象とした貸与制度も入学希望者の関心を集めそうだ。

プロジェクト研究などのレポートが修了要件に

 実務経験を出願要件としていなくても、入試では実務経験を含めて総合的に評価するところがほとんどで、学科試験を課すところは少ない。既設のビジネススクールの中では、神戸大学では有職の学生が100%で、一橋大学でも99%を占めている。
 また、医学系、医療経営系のほか、公共政策系の専門職大学院では学部新卒も対象とする割合が高い。公共政策系の新設では東北大学大学院がアンケートで「主として学部学生を念頭においている」と答えている。
 専門職大学院は研究者養成が目的ではないため、修士論文を課さないところが目立つ。論文に代わるものとして、プロジェクト研究のレポートや、自分の研究テーマに沿ったリサーチペーパーを課すところもある。高度職業人には、問題解決に至るプロセスや追求してきたテーマを、文章にまとめたりプレゼンテーションで表現したりする能力が求められる。その具現化の手段が大学によって異なっているということだろう。

国からの財政援助や制度の拡充に期待

 専門職大学院制度の中でも、各大学院にとって実務家教員の確保は大きな課題であり、法科大学院でもこの点の不備を指摘された例が多かった。
 アンケートでは、専門職大学院制度に関する意見や提言を求めた自由記述欄で、専攻分野によっては実務家教員の人材不足や、新設時の環境整備のための予算不足を指摘する回答があった。
 また、学費に関しては、「設置基準の緩和(により質を落とす方向)ではなく、高額な学費に見合う教育の質を維持していくためにも国からの十分な財政支援を期待したい」という意見が見られた。このほか、「より高度な専門家の育成のために、ビジネススクールの上に博士課程を設置できるようにしてほしい」など、制度改革への要望も寄せられた。


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