ベネッセ教育総合研究所
特集 専門職大学院の本格展開
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[04年度新設校に聞く]
徳島文理大学大学院 総合政策研究科
〜地域の課題に立脚し、自治体の行政力アップに貢献する〜
政策を立案、施行する能力を育成

 徳島文理大学大学院が設置する総合政策研究科では、地域公共政策専攻を設置する。地方自治体の職員の課題解決能力を向上させることを目的に、地域の公共政策分野を中心としたカリキュラムを組む。修了後は自治体の幹部として活躍することが期待される。
 同大学では03年度に総合政策学部が完成年度を迎えた。学部長の藤岡幹恭教授は「地域の公共政策を担う公務員の育成が学部の目的であったが、大学院はその延長線上で、公務員になった人の能力を高める場としたい。また、徳島という地域性をはっきりと打ち出すことも本学に求められた使命。それならば研究者養成でなくてよいという結論から、専門職大学院とした」と説明する。
 学生層は、20代後半から30代前半の自治体の幹部候補生を想定。理系卒の職員でも法律や行政分野を総合的かつ実践的に学べる場とし、将来的には、交通や銀行、電力など地域密着型の企業からの派遣も期待する。
 「これまで自治体の多くが中央省庁に依存し、主体性を持っていなかったといえるが、これからは地方の行政能力を高めていく必要がある。そのためには、職員自らが政策を立案し、実行する能力を持たなければならない。カリキュラムは自治体職員のスキルアップを図る内容になっている。職場での課題など、学生が各自研究テーマを持って入学するよう期待したい」と藤岡教授。
 カリキュラムは理論系・展開・実践の三つの科目群を設置(図表)。

図表

図表  地域公共政策専攻のカリキュラム体系
 自ら政策を立案、運営する能力を身に付けることを目的とした科目に重きを置く。例えば、実践科目群の「自治体政策法務演習」は、条例制定がテーマで、学生は実在する政策課題に即した条例案を作成し、法令審査にかけ、議会に説明して可決させるまでの過程を実践的に学ぶ。
 実践科目群の「オーラルヒストリー演習」は、既存の政策の立案過程や成果などを議会での発言記録の分析や当事者への取材を通して調べ、政策立案の準備や実行法、記録の整理法を修得する科目だ。  「当然、演習フィールドは四国地域が中心となるが、全国的にも通用する自治行政の手法を学ぶことができる」

派遣が難しい自治体向けに、聴講生制度も検討

 自治体専門誌に学生募集の広告を出すなど、全国的なアピールもしたが、通学の便を考慮すると当面の学生は徳島県と近県の職員が中心となろう。地元での広報活動は、教員が自治体を訪問し、人事担当者ら一人ひとりに説明した。「まさにこういう能力を高めてほしい」と評価は高く、自治体からの大きな期待を感じたという。しかし、いざ職員を派遣するとなると課題は多い。大学院への派遣は前例のない自治体が大半で、条例の改正が必要という所もあった。また、研修させたい人材ほど、2年間も休職されるのは痛手という声もあったという。
 そこで、正規入学でなくても働きながら興味のある科目を受講できる制度を検討中で、当初は聴講生として受け入れることも計画している。演習が中心となる実践科目群も受講でき、正規の学生との共同研究にも参加してもらう。
 初年度の入学定員は10人。教員とマンツーマンともいえる少人数体制をとる。「設置準備の過程では50人程度の規模では、との助言もあったが、立地条件を考え小さく産んで大きく育てる方針」で、定員増は今後の課題だ。当然、大学院自体の採算はとれないようだ。
 同大学の経営母体、村崎学園は05年に創立110年を迎える。「これまで地域に育ててもらったという感謝をこめて、大学らしい役割を果たしたい。採算は学園全体として考える」と同学園の村崎正人理事長は述べている。



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