ベネッセ教育総合研究所
特集 専門職大学院の本格展開
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[04年度新設校に聞く]
デジタルハリウッド大学院 デジタルコンテンツ研究科
〜IT・コンテンツ業界の知識を併せ持った
ブロードバンド時代の産業リーダー創出を目指す〜
初の株式会社立大学院

 構造改革特区制度を活用し、株式会社による初の大学、大学院設置が実現する。東京都千代田区にあるデジタルハリウッド(株)は、専門職大学院の認可を受けた。CG、Webデザインなどの人材養成スクールを国内外で9校展開する同社は、約3万人の卒業生を送り出している。新設するデジタルハリウッド大学院では、それらの実績を踏まえて「IT・コンテンツ関連分野における高度人材の育成」を掲げる。
 ブロードバンド化が進み、音楽やゲームといったコンテンツのネット配信が増えているが、コンテンツ業界とIT業界の両方に精通する人材はまだ少ない。そのため、同大学院が目指すのは「両方の知識を併せ持ち、一つのコンテンツを多メディアで展開するなど、ブロードバンド時代に即した事業をマネジメントし産業をリードする人材」(藤本真佐代表取締役社長)だ。スクールがクリエイター養成に比重を置いているのに対し、大学院のイメージは「IT・コンテンツ系のMBA」。起業家の育成も視野に入れていくという。
 デジタルコンテンツ専攻に、「ゼネラルプロデューサープログラム」と「コンテンツディレクタープログラム」の2コースを開設する。いわば、プロデューサーは事業全体の指揮官、ディレクターは現場監督。定員は各30人だ。平日夜間中心の開講による2年制だが、IT・コンテンツ分野の職務経験が2年以上ならば、基礎科目の少ない1年制も選択できる。ともに卒業要件は40単位で、学費は、プロデューサーコースの1年制で148万、2年制は226万円(2年間)だ。
 カリキュラムは「デジタルコンテンツ産業概論」などの基礎、「Webプロデュース」「事業計画手法」など実践基礎、「インターネットビジネスモデル研究」「クロスメディア演習」といった科目群と、ゼミなどからなる応用・展開・先端科目で構成される。ゼミでは、実務家教員が仕事を持ち込み、学生と一緒に取り組むことも想定。また、修士論文に該当する課題制作も必須とし、発表の場も設ける予定だ。
 教員は全員実務経験者で、現場の第一線にいる人が多い。ネットビジネスからアニメーション、法務・財務、通信・放送、映像まで専門は多岐に渡る。業績の比較が難しいため、教授、助教授といった役職は校内では使用せず、待遇も横並びにする方針だ。一方、分野自体の歴史が浅くネット経験の豊富な研究者が少ないため、研究家教員はいない。今後も、専任の研究家を置くかは未定だという。

学生の質が教員のインセンティブに

 株式会社が大学院を設置する場合、税金優遇はなく助成金もつかない。千代田区の支援は、経営破綻した時は、同区がセーフティネットの責務を負うという形だ。
 「一般的に、専門職大学院単体で経営するとなると、ビジネスとしては厳しいのではないでしょうか。当社の場合、採算は合う見通しですが、既存のスクールと、建物などインフラをある程度共有できるからこそ可能だったのだと思います」と、藤本社長。
 同社が、専門職大学院設置に踏み切ったのは、知名度や卒業生の社会的地位の向上など、社会に与える「大学院」というブランド力の大きさを意識してのことだ。だからこそ、学生の質は何より気がかりだったという。
 「大学院の前提は高い教育力です。その確保には、高いレベルの学生が必須です。というのも、実務家が教員になるメリットは、ゼミを通じてビジネスのアイデアをもらったり、優秀な人材をリクルートするなど、学生との関わりをビジネスに生かすこと以外はほとんどない。学生の質が悪ければ、教員を担うインセンティブも下がってしまう恐れがあるのです。でも、説明会の参加者などを見て、期待以上のレベルで安心しました」と、藤本社長は話す。  説明会には、テレビ局、新聞社をはじめ大企業の社員や起業家などが数多く訪れている。ビジネススクールの修了者が、コンテンツ事業での専門知識を身に付けたいと、問い合わせてきた例もある。ディレクターコースはクリエイティブ分野の人が、プロデューサーコースには起業志向の人が関心を示す傾向があるという。手応えは十分で、志願倍率は2倍程度まではいくのではないかと、藤本社長は見ている。



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