| 日本の景気回復や国際競争力の強化のために、大学の果たす役割は大きいと言われる。
近年、教育に国際的視点を取り入れる日本の大学は増加しており、「特色ある大学教育支援プログラム」では、多くの語学教育や国際的なプログラムが採択された。一方で、将来のキャリアを考え個人で留学を目指す人も増えている。では、国際社会で求められる能力を養うために、語学教育や留学プログラムはどうあるべきか、大学事例をもとにレポートする |
| 概説 多様化する留学プログラムと課題 |
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「留学生受け入れ10万人計画」のもと、これまで日本の大学の国際交流は留学生受け入れ制度の拡充を中心に推移してきた。
日本人学生との合同授業を行ったり、授業以外での学生同士の交流が図られており、国際的なキャンパス作りを謳（うた）う大学も増えてきた。
2003年12月に出された中教審答申「新たな留学生政策の展開について」では、留学生受け入れとともに、海外へ留学した日本人学生数も増加しているが、大学等の在学生全体でみれば、受け入れは2.6％、派遣は2.6％と、どちらも欧米諸国と比較して低いことが指摘されている。日本の大学が受け入れた外国人留学生の国籍を見ると、9割以上がアジアからの留学生であり、中国からが7万人とトップで、韓国、台湾を加えれば全体の8割を占める。受け入れはアジア中心であるのに対し、派遣先は欧米中心と、偏りがあった。これまでの留学生政策は国際貢献という観点から外国人の受け入れに重点を置いてきたが、今後は諸外国との相互理解の増進、友好関係の深化という観点から、交流を重視するべきと、同答申では述べている。つまり、留学生受け入れと送り出しの双方向型による国際教育交流を推進すべきという方針を打ち出しているのだ。
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諸外国の国際教育政策
海外の大学の教育政策に目を向けてみる。
87年にEU諸国の大学が連携し、加盟国の大学間での留学を容易にし、グローバルな労働市場で活躍できる優秀な学生を育成しようとするエラスムス計画がスタートした。欧州レベルで高等教育の拡充を図り、社会の発展と大学および学生の国際競争力増強を図ることを目的とした政策だが、複数国の教育機関間の単位互換を可能にした画期的なシステムとして教育関係者の注目を浴びた。同計画は、95年にEUの教育分野の行動計画であるソクラテス計画の一部（高等教育部門）として統合され、02年12月現在で年間30カ国、1800校以上、約10万人の学生が参加、約1万2000人の教職員の交流が行われている。
一方、アメリカは、大学等で学ぶ海外からの留学生数は02年度で58万4000人と、世界で最も多くの留学生を受け入れた国である。しかし、1学期中に海外に留学したアメリカ人学生は全学生の約1％強と極端に少ない。その3分の2がイギリスやスペイン、フランスなどの西ヨーロッパに留学するという偏った傾向を持つ。
こうした現状を踏まえ、NAFSA（注1）は03年11月、報告書「Securing America's Future : Global Education for a Global Age」を発表。この中で、9・11（同時多発テロ事件）は、アメリカ人がいかに世界の国に関して無知であったかを知らせる警鐘になったと指摘、第二のスプートニクショック（注2）としても位置付けられている。アメリカ国民はもっと他国の宗教や言語、文化などを個人的な経験として学ぶべきであると述べている。
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注1：
NAFSA（Association of International Educators）：1948年にthe National Association of Foreign Student Advisersとして、アメリカの大学を中心に設立された。国際教育交流に携わる大学の教職員を中心とする団体で、現在、80カ国から8000人以上の会員が参加
注2：
スプートニクショック：1957年、当時のソビエト連邦が人工衛星「スプートニク号」を打ち上げたことに、アメリカが先をこされたとショックを受け、後の教育改革に結びついたと言われる |
さらに、今後、アメリカの学生が1学期や1カ月など短期間のものも含め、何らかの形で海外留学すべきと提言。具体案として、2010年までに全学生の20％、2040年までに半数が留学による単位を修得するという目標や、多様な留学経験を持つことを目的に、アラビア語やロシア語、中国語、日本語など、これまでアメリカ人が一般的に学んでこなかった言語の習得や国際的なインターンシップの機会を増やすことなどの方針が提示されている。
また、中国をはじめとするアジア各国で、国家の経済的発展を視野に入れた教育制度の拡充と留学生政策の推進も目立つ。
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