ベネッセ教育総合研究所
特集 国際化教育の現在
亜細亜大学
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全学生の4割が留学を経験、中国留学を核にした新プログラムも開始
 亜細亜大学は、世界10カ国以上への留学プログラムを持ち、他に先駆けて特定学部での留学必修化を導入したことで知られる。この4月からは、中国留学と就業体験、学部教育を組み合わせた新しい形の国際教育プログラムも立ち上げる。
「国際感覚は全ての人に必要」と大規模な留学プログラムを実施

 亜細亜大学は経営、経済、法、国際関係の4学部から構成される。「アジアをはじめとする国際社会への貢献」を設立理念とし、外国語学部を持たないにもかかわらず、英語をはじめベトナム語、中国語、モンゴル語など14の外国語科目を設置。希望者が、4年間を通じて基礎から上級まで体系的に学べるカリキュラムを組む。さらにその実践として、各言語を使用する国々の多くへの留学プログラムを設け、全学生中延べ4割を海外に送り出している。
 同大学の留学プログラムは、短期、中期、長期に分けられる。最も規模が大きいのは『亜細亜大学単位認定アメリカ派遣留学プログラム(AUAP)』だ。ワシントン州立大学のウエスタン、セントラル、イースタンの3校に分けて、5カ月間学生を派遣する。宿泊費も含めた参加費用は95万円だ。1988年のスタート以来、国際関係学部では必修で、2年次前期に実施。それ以外の学部については、希望者全員が参加できる。現地で修得した17単位は卒業単位として認定される仕組みだ。これまでの参加者は延べ8500人強に上り、年間で平均500人を送り出してきた。これだけの規模で実施している背景には、「国際感覚は、エリートだけではなく全ての人に必要」という同大学の考えがあるという。
 主な狙いは英語能力の向上や異文化体験で、受け入れ大学の教員による、AUAPのための特別プログラムが組まれている。その中心となるのは、『聴く』『話す』能力を養う英語の授業で、そのほか各学部の専門の関連トピックを扱うディスカッション形式の授業、アメリカの社会、文化の授業などが、月〜金曜の1日4時間展開される。
 英語力によって3、4クラスに分け、各25人以下で構成。十分な語学力が認められると、現地学生に混じって正規の講義を聴講する機会も与えられる。
 留学中に滞在する学生寮では、ネイティブと同室になるよう調整。実際、9割以上がアメリカ人のルームメートと生活しているという。日常的に英語を話す機会を増やそうという狙いだ。それらの成果を実感してもらうために、留学前後の2回、無料でTOEICも実施する。
 04年度入学生からは、国際関係学部の留学時期を1年次後期に前倒しにする予定だ。というのも、海外での経験を踏まえたうえで、地域言語、地域研究といった専門科目に、2年次初めから入ることができるからだ。国際交流部の齋藤広課長は、こうも話す。「留学によって、自立心や学習意欲、人生観を刺激される学生が多い。早い段階でそうした体験をさせることは、大学生活にも良い影響を与えると考えています」。

留学中は職員が毎日現地大学とメール交換

 短期留学プログラムには、春・夏季休暇中に実施している『亜細亜大学グローバルプログラム(AUGP)』がある。アメリカをはじめイギリス、ロシア、中国やモンゴル、インドネシア、韓国など12カ国のうち興味のある国を選び、現地の大学で4〜7週間その言語を学ぶ。英語圏以外は、原則としてその国の言語を履修していることが条件で、4単位が認定される。なおAUGPは学内ばかりでなく、他大学の学生や社会人も参加できる。参加費用は国によって異なるが、20万〜50万円だ。
 このほかにも、同大学には様々な留学プログラムが用意されている。アメリカ、シンガポール、タイなど学術交流協定を結んだ12カ国14大学に、各校1、2人ずつ1年間長期留学させる『交換・派遣留学プログラム(AUEP)』や、1年間のモンタナ州立大学留学プログラム、学生の自治組織が主催する海外研修「洋上大学・春季語学研修」などもある。
 一方で、留学を支援する仕組みも充実している。AUAPに参加する学生を対象とした給付型の奨学金や、自主的な海外活動に対する奨学・助成金制度を設けているほか、私費留学についても現地で修得した単位を認定したり、留学スケジュールに合わせたカリキュラムの弾力化を図っている。
 留学を念頭に置いた授業も設けられている。1年次には、ネイティブの教員による実践英語の授業をレベル別に実施。留学した学生の向上した英語力や学習意欲を維持する狙いで、英語での講義やディスカッションの授業も充実させている。さらには、専門科目のうち数科目についても、授業を英語で行う。
 国際交流部職員によるきめ細かいサポートもある。AUAPでは、出発5カ月前から異文化適応の講義や相談会など10回にわたる事前研修を開催。研修の最終日には、学生一人ひとりに三つの留学・行動目標をシートに書かせる。現地での生活にも慣れ、つい気持ちが緩みがちな留学2カ月後にこのシートを学生に送付し、初心を再確認させるのだという。
 留学に教職員は同行しないが、職員が現地校の担当者とほぼ毎日メールをやりとりし、学生の学習・生活状況の把握や支援に努める。AUAPでは、事故や病気などの緊急事態の発生に備えて24時間対応の専用電話も設置している。  国際交流部の専任職員は11人。加えて、総勢500人を超える事前研修会では他部署の職員も支援する。川口博久副学長は、「教育面では教員が主体になりますが、実際に留学の細かい運営業務を担っているのは職員です。国際交流部以外の職員も携わることによって、大学全体でプログラムをバックアップしようという姿勢が作り上げられ、成功に導いているのだと思います」と話す。

中国でのインターンシップと学部教育を融合させた「夢カレッジ」

 04年度からは、全く新しいタイプの国際教育プログラム『アジア夢カレッジ―キャリア開発中国プログラム―』もスタートする。このプログラムでは、政治経済の分野で今後成長が期待されるアジアをキーワードに、より実践的な教育を行い、日本とアジア地域の経済、国際交流のコアとなる人材の育成を目指している。初年度は、まだ履修要件を調整中の経済学部は対象外だが、他の学部の1年生なら誰でも応募できる。
 定員は40人で、希望者は入学直後に選抜試験を受けなければならない。合格者が、留学を含めた4年間の一貫教育を受けるシステムだ(図表)。
図表
図表 「アジア夢カレッジ」の教育プロセス(予定)
 そのため、学生は各学部の授業と併行して中国語、中国の市場状況の授業やゼミなど夢カレッジ独自のカリキュラムを4年次まで受講することになる。これらの授業のほとんどは他の学生には開放されない。いわば、夢カレッジはアジア圏をにらんだエリート養成プログラムだ。
 プログラムの最大の特徴は、2年次後期に実施される『亜細亜大学単位認定中国派遣留学プログラム(AUCP)』だ。これは、製造業を中心に発展する大連市への150日間の留学プログラムで、大連外国語学院での集中的な中国語研修に加え、現地の日系企業での4週間のインターンシップも組まれている。文化・社会構造や企業の実態を理解させるとともに、自分の職業観を確立させるのが狙いだという。この経験を踏まえ、3年次からは各学生の専門にそって、中国に関する個別のテーマをゼミ形式で追究する。留学を大学教育とより密接に連動させた試みといえるだろう。
 もう一つの特徴は、企業が単なるインターン先ではなく、プログラム全体に協賛者としてかかわっていることだ。企業担当者による中国のビジネス事情の講義をはじめ、選抜試験への面接官としての参加、試験内容への助言など連携は多岐にわたる。同大学によると、このような全面的な産学連携の教育プログラムは、文系の大学では珍しいという。
 アジア夢カレッジ事業推進プロジェクトリーダーの小木曽雅光氏は、「自分で考え、学び、疑問を持ち、解決するという『自学』力と『考』動力を持った学生を育てるのが目的。産学で手を携えて取り組んでいきたい」と語る。同大学では、将来的にベトナムや韓国、タイなど他のアジア諸国にも留学先を広げていく構想だ。


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