ベネッセ教育総合研究所
特集 国際化教育の現在
鈴鹿国際大学
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Report 6
ボランティア等の各種研修を単位認定、資金も支援し主体的な海外体験を促す
 鈴鹿国際大学では、2004年度からの入学者を対象に、3年次以上での留学や海外研修を単位認定し、資金を支援する「ドリーム・キャンパス・プロジェクト(DCP)」を導入する。従来1年次を対象に一律に実施していた研修プログラムからの切り替えで、一人ひとりの目的意識と主体性を尊重する国際化教育への移行を図る。
海外留学を最低4単位として認定、最大50万円を支給

 鈴鹿国際大学はこれまで、アジアからの留学生を大量に受け入れる一方で、新入生全員に海外を経験させる「プレゼミ海外研修」を実施、国際化教育において大きな成果をあげてきた。02年度の研修先は台湾、シンガポール、韓国、ドイツ、スリランカ、カナダ、マレーシア、中国の8カ国・地域。1年次の夏休み前後に、10人くらいのグループで1週間程度滞在、現地の日本企業を訪ねたりボランティア活動を行うなど、生活や文化に深く触れるプログラムで構成されている。費用は、研修先によっては一部を自己負担する場合もあるが、原則として大学が負担する。森下忠章広報室長は、その目的を「入学してすぐに海外を経験させ、インパクトを与えることで、その後の学習へのモチベーションを高めてもらうこと」だとする。必修ではないが、ほぼ全員が参加し、国際学部で学ぶ動機づけのための科目として重要な役割を果たしてきた。
 しかし、このプレゼミ海外研修は04年度の1年次が最後となる。これに代わってDCP海外研修を導入。対象は3年次以上で、提携大学への長期・短期の留学を中心に、フィールドワークやボランティア活動を目的とする研修、実績ある体育会系の部単位でのスポーツ研修など幅広く認める。受け入れ側の大学や団体は、同大学が開拓する。希望する留学や研修について学生から申請があれば、特に問題がない限り「DCP」として認定。4単位の科目「海外研修I〜X」として扱い、研修内容によっては約1カ月間の滞在で最低4単位に換算、最大20単位まで卒業単位として認定する。半年間留学しても4年間で卒業できる設計だ。
 上限50万円という資金援助も学生にとっての魅力といえる。3〜6カ月の長期留学、ホームステイなど1カ月程度の短期留学には最大額が支給されるのに対し、フィールドワークやボランティアなどの研修だと最大でも20万円。支援は一度だけだ。支給額に差をつけることで、研修ではなく留学を選び、「海外の大学で学ぶ」ことを一度は経験するよう誘導する。

進級可能な単位修得とTOEIC受験が応募の条件

 プレゼミ海外研修からDCP研修への移行には、学生の主体性にもとづく海外経験を重視しようという同大学の姿勢がうかがえる。1年次に大学がお膳立てをした1週間の研修を体験することは、学習への導入には役立っても、ベースとなる知識や問題意識が備わっていないため、イベントに終わってしまうこともある。2年間大学で学んだ上で、それぞれの目的意識や研究テーマに応じた内容で自分で留学や研修の内容、行き先を選んで海外に出ることは、学習成果の検証になると同時に、卒業後の進路を考える上でも有益な経験になるはずだ。「3年次での留学を目標に、2年間しっかり学習してもらいたいという意図もあります」と森下室長。
 DCPに応募するための条件は、その時点で3年次に進級できる単位数を修得していることと、点数に関わらずTOEICまたは英検を受験していることの二つのみ。長期留学も、希望すればほぼ全員が参加でき、資金援助も受けられるわけだ。「英語力や成績を条件にすることも検討しましたが、たとえそのときは苦い思い出になったとしても、学生にとっては貴重な体験ですから、海外に出て行くことを優先したのです」(森下室長)。帰国後は報告レポートの提出は義務付けるが、教育効果をどのように検証するかについては検討中だという。
 留学先の大学や研修先となる団体等については、現在、治安の面でも安心できる提携先を探している。これまでに中国、韓国、オーストラリア、ニュージーランド、カナダが決定し、ウクライナとは交渉中だ。大学がリストアップした提携先以外でも、学生が希望すれば、「最大限の努力をして期待に応えられるようにする」(森下室長)とのことだ。


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