ベネッセ教育総合研究所
特集 チャレンジする短大
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チャレンジする短大
 18歳人口の減少、女子の4年制大学志向の高まりといった環境の変化のなかで、短大は1999年度以降、定員充足率が100%を下回る、いわゆる「全入時代」に入っている。しかし02年度以降、それまで減少傾向にあった充足率がわずかながら上昇に転じた。また、個々の短大では、さまざまな教育改革や募集戦略によって人気を維持しているところも少なくない。分野を特定せず、地域の多様な需要に柔軟に応じることを目的とした新しいタイプの学科「地域総合科学科」の設置も活性化策の一環として位置付けることができる。本特集では短大の新たな挑戦を紹介しながら、改革の方向性を探る。
数字で見る短大の現状
 少子化の進行や、4年制大学志向の高まりを受けて、ここ数年来の短大をめぐる状況には、極めて厳しいものがあった。しかし、こうした危機に直面したことで、短大は自らの存在意義を見つめ直し、新しい方向性の模索も始めている。その結果、「短大離れ」の動きが鈍る傾向も見え始めた。そこで、ここでは各種のデータから、そうした短大の現状を見ていくことにする。

学校数

 短大が、4年制大学とは目的や修業年限の異なる大学として正式に制度化されたのは1950年。公立17校、私立132校の計149校でスタートした短大は、教養教育と実務教育を兼ねた短期間の高等教育機関として、とくに女子高校生の進学先として重要な位置を占めた。
 その数は急速に増加し、96年度には598校に達した。しかし、進学環境の変化により90年代後半以降は緩やかな減少カーブを描いており、03年度には525校と、ピーク時より73校減少している(図表1)。
図表1  短大数の推移

図表

注:4年制大学への転換は4年制大学・学部の設置等に伴い、短大の全学科の学生募集を停止した学校数で、90年度以降のみ記載。
 これに伴って4年制大学への転換を図る短大も増加。いわゆる4大化は、90年代半ばまでにも毎年数校程度は見られたが、98年度からはずっと2ケタで推移している。また、4大化せずに全学科の学生募集を停止した短大は、00年度1校、01年度4校、02年度4校、03年度6校となっている。
 大学および高等専門学校を含む高等教育全体の中で、短大が占める割合を03年度で見ると、学校数では40.7%を占めるが、1年次の学生数では15.5%にとどまり、小規模校が多いことがわかる。
 短大の大半は私立が占めている。制度発足当初は88.6%だったその比率は、国立短大や公立短大の登場で、以後は80%台半ばで推移する。だが、短大数の減少が始まる97年度からは、徐々にその割合が高まり、03年度は88.2%にまで上昇している。このことから短大は、きめ細かな教育の可能性を秘めた少人数の私立校に、ますます比重が移ってきたと見ることもできよう。

分野別学生数

 短大の本科学生数を分野別に見たのが図表2だ。最も多いのが「教育」の25.6%で、22.5%の「家政」が続く。この2系統で学生のほぼ半数を占める。
図表2  短大の分野別学生数(03年度)

図表

学校基本調査(速報値)より
 「教育」では保育士や初等教育に携わる教員など、「家政」では栄養士などの資格取得に対する需要が高いことが要因と思われる。また、「保健」が9.7%を占めているが、これも看護師や医療関係資格の取得を目的とする学生が多い分野だ。短大は教養と実務を両輪とする教育に特色があるが、現在は実務教育の比重が高まっているといえる。
 ここ30年ほどの学生数の推移を見ると、「人文」は70年代は約20%、80〜90年代は約25%を占めていたが、現在では10%台半ばまで落ち込んでいる。「家政」は、80年代からほぼ安定的な割合を保っており、「教育」も増減はあるにせよ、20%前後だ。大きく伸びたのが「保健」で、70年度の2.2%から躍進している。


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