| 大学は、トップのリーダーシップと、それを支える組織の機能の充実によって、いかに戦略的なマネジメントを確立できるかが問われている。とりわけ経営面をサポートする職員組織の役割は大きい。そこでは、経営トップには革新的なビジョンの提示が求められる。トップを支える理事などの経営層については、責任と権限を伴う担当領域を明確にする必要がある。そして部長・課長クラスの行政管理職層には、政策提言能力が求められる。本特集では職員組織の改革の事例を紹介しながら、いかにしてこれら各層の機能を高めればよいか考える。 |
トップのリーダーシップこそ大学改革の大前提
～改革を育む環境を創造する～ |
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法政大学は、1999年度に国際文化学部と人間環境学部、00年度に現代福祉学部と情報科学部、03年度にキャリアデザイン学部と、新設学部を立て続けに設置し、志願者数を大幅に増加させるなど、大躍進を遂げている。その陣頭指揮をとった清成忠男総長に、大学改革におけるリーダーシップのあり方について聞いた。
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大学のトップには経営センスが必要
――現代の大学運営において、トップの使命はどこにあると考えますか。
清成 大学をめぐる状況を端的にいえば、18歳人口の急減期にあたり、大学は生き残りをかけた大競争時代にあるということです。とすれば、大学には改革を行う以外に道が残されていません。改革を推進していくことがトップの使命であるといっても過言ではないと思います。
――改革を進める上で、トップにはどんなリーダーシップが必要になるのでしょうか。
清成 大学のトップにもいろいろあります。国立大学は法人化によって、学長が最高責任者、つまり文字通りのトップになりましたが、私立大学の場合は事情が少し異なります。まず学校法人が設立され、その法人が大学を設置するという構造になっているからです。学校法人のトップは理事長で、大学のトップは学長ということになります。
多くの私立大学では、理事長と学長が別々に置かれ、理事長は経営に、学長は教育研究に責任を持つことになっています。中には総長、理事長、学長と、ポストが三つある場合もあり、組織によって仕組みが異なりますから、一概にいうことはできません。ただ、多くの大学では、法人側の意向と教授会の意向は食い違っているため、それらを一致させることがトップのリーダーシップだということはできると思います。
――総長が理事長を兼務する法政大学のように、法人と大学のトップが一致していると、リーダーシップは発揮しやすいでしょうね。
清成 確かに政策決定は速やかになる可能性はありますが、経営の才能のない人がトップになった場合、その結果は惨憺たるものになります。逆に、理事長と学長が別々の場合であっても、意見が一致すれば、役割分担がはっきりしている分、政策がスムーズに進行する可能性はあります。いずれにしても、かつてのような放漫経営で大学が運営できるような時代ではなく、これまでよりもいっそう経営的な側面が重視されることは間違いありません。これからの大学のトップにとって、経営センスは不可欠な能力なのです。
明確なビジョンを示し必要な判断を下す
――大学改革を進める上で、トップのリーダーシップはどのように発揮されるべきでしょうか。
清成 まずは、明確なビジョンを示すことが大事です。先が見えにくい時代ですから、方向性をはっきりさせなければ改革は進みません。ただし、トップの独りよがりのビジョンではだめです。本学では、97年度から「開かれた法政21」というビジョンを掲げていますが、これは、その3年前に発足した「21世紀の法政大学」審議会の提案を受けて取りまとめたものです。審議会では、本学の将来像について全学的な議論を積み重ねてきました。そうした合意形成をベースに、ビジョンを簡潔に示したわけです。
このビジョンでは、グローバル化への対応、社会との交流、生涯教育の推進、という三つのコンセプトを提示しました。そして、それを実現するために、新学部の創設、大学院の拡充、二部教育の改革、通信教育の改革、エクステンションセンターの新設、情報システム・施設の拡充などを実現するためのプロジェクトを立ち上げました。この段階でトップに求められるのは、自らが提示したビジョンに基づいて、何を優先させるべきかの判断を下すことです。
――法政大学は、99年度から2年連続で新学部を計4学部も設置していますが、改革に重要だと判断されたわけですね。
清成 本学は80年代に新学部の設置申請を3回行い、3回とも申請を取り下げるという苦い経験をしています。学内の意思統一を図ることができなかったのです。しかし、時間の経過とともに学内の意見対立も緩和され、18歳人口減少への危機感も手伝って、合意形成が必要だとの雰囲気が醸成されてきました。そこで、この機を逃さず、一気に学部増設を行ってしまおうと考えたのです。
――そうは言っても、4学部を2年間で設置するというのは、ずいぶん思い切った改革ですね。
清成 当時、多くの教職員は同じように考えていたと思います。4学部のうち、一つか二つできればいいのではないかと。しかし、私はできると信じていました。というより、一挙に4学部でなければだめだと確信していたのです。
本学は三つのキャンパスを擁していますが、新学部を一つだけ設置しようとすると、学内の合意を得るのが難しくなります。しかし、全てのキャンパスに新学部を設置し、全学的に新しい教育展開を図るのであれば、誰にも反対する理由はありません。
そこで、市ヶ谷キャンパスだけは、第1教養部と第2教養部を改組する関係で2学部を設置しますが、多摩キャンパスと小金井キャンパスにそれぞれ1学部ずつ設置することにしたのです。新学部の設置認可は、現在と違って2年審査でしたから、事務処理量は膨大でしたが、やってやれないことはないと思っていました。
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