ベネッセ教育総合研究所
特集 リーダーシップが生きる職員組織
孫福 弘
横浜市立大学改革推進本部
最高経営責任者(CEO)
孫福 弘(まごふく ひろむ)

1940年生まれ。62年慶應義塾大学文学部卒業。慶應義塾職員として国際センター事務長、湘南藤沢キャンパス事務長、塾監局人事部長、理事・塾監局長、総合政策学部教授等を歴任後、04年4月から現職。この間、フルブライト上級研究員(80年)、大学行政管理学会初代会長(97〜99年)、桜美林大学大学院客員教授(01年〜)、マスダ教育財団理事長(03年〜)も兼任。専門分野は大学経営、大学改革、高等教育。
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寄稿
経営革新をサポートする職員組織の確立を
国立大学法人化は大競争時代の始まり

 国立大学の法人化がついに今年4月に現実のものとなった。
 高等教育の基幹をなす国立大学の設置形態変更であり、形式的な意味ではきわめて重要な変革である。ただそれが単に設置形態の変更にとどまるならば、影響は限定的なものかもしれない。
 しかし、この変更が単なる形態の変更という形式上の意味を超えて、わが国の高等教育全体に大きな波及力を持つ可能性が取りざたされている。それはなぜか。
 国立大学は、法人化に合わせてガバナンス構造の制度的改革を実施した。私学とは比べものにならない莫大な基本資産を国から付与された上、戦略的経営の概念が移植された場合、教育、研究、産学連携などのあらゆる分野にわたって、国立大学群によって席巻されてしまう可能性が出てきたからだ。公立大学はともかく、少子化という逆風ですでに財政基盤が弱体化している私立大学は、国立大学の経営戦略によって一層苦しい立場に追いやられる可能性が否定できない。
 まさに大競争時代の始まりであるのかもしれない。もしそうであるなら、それは、国民の税金をフローとストック両方にたっぷり注ぎ込んだ実質的な国営大学と、自前の資財をやりくりする民営大学との「理念なき」横一線の競争なのだ。ちなみに、「理念なき」というのは、国公私立間にそれぞれの存在意義に照らし合わせた教育や研究面等の役割分担、あるいはその逆に三者で共同して進めるべき「理念に基づく政策」が国レベルで存在しないまま、いまや弱肉強食のサバイバル競争に突入しつつあるとの筆者の認識を表している。
 私学はこの国立大学の攻勢をどう迎え撃つのか? そのためには私学の何が変わらなければならないのか?
 一方、法人化された国立大学にとっても、戦略的なマネジメントが確立できるかどうかが、圧倒的に有利な戦いで確実に勝利するための最大の決め手となる。マネジメント不在の状態でやり過ごしてきた従来型の大学運営をこれからも続けるのなら、潜在的な可能性を生かしきれないまま地盤沈下していくことは避けがたい。
 この大競争時代とは、正しくは大学マネジメントの大競争時代というべきであろう。


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