ベネッセ教育総合研究所
特集 リーダーシップが生きる職員組織
札幌大学
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事例紹介
事務局再編で業務を効率化
札幌大学
 札幌大学では、事務局の部課制を廃止して、担当業務別に四つのオフィス制に再編した。学生支援オフィスでは、職能別の系列によるマトリクス組織を採用する。

マトリクス組織で全学的な課題を把握

 2002年9月、札幌大学は1室5部13課に分かれていた事務局を「運営事業」「学生支援」「広報渉外」「学術情報」の4オフィスに再編した。同大学では従来から法人と大学の事務組織が同一であったため、法人事務も含むあらゆる事務機能が4オフィスに統合された形だ。
 黒澤勝昭専務理事は、「多様化した学生に対応するために、教職員に都合のいい組織から、学生を中心とした組織へと転換を図る必要があった」と、背景を説明する。その際に重視したのは、大学設置基準で学生の厚生補導の組織を規定した第42条。厚生補導は、入学者選抜や修学指導、職業指導など、学生の入学から卒業までに関わるすべての領域が含まれる。従来の組織はその事務を複数のセクションで担っていたが、これを一つのセクションにまとめることで、機能強化を図ろうというわけだ。
 4オフィスのうち、「運営事業オフィス」は従来の企画広報、総務、教職員、経理、施設の各課を、「広報渉外オフィス」は企画広報および総務、就職、入試、国際交流の各課の一部を、「学術情報オフィス」は電算課の一部と図書課を統合したものだ。これらのオフィスでは当面、職員は従来の業務を受け持つ担当制をとっているため、業務上の大きな変化はない。
 最も特徴的なのは、「学生支援オフィス」だ。学生の厚生補導を担う教務、学務、学生、就職、入試、国際交流、電算の一部など、修学に関するあらゆる部署を統合した。オフィスでは学部ごとに分かれてこれらの業務をまとめて担当。それぞれに窓口を設けて各学部の学生の相談等に応じる。
 一方、職員はこの学部ごとの業務を担当すると同時に、「教務」「学生」「入試・就職」のいずれか一つのグループに所属し、全学的な業務も担う。例えば、経済学部の担当者は、同学部の学生の履修相談に乗るとともに、「学生」グループとして全学部で配布する「学生生活の手引き」の編集も行う。
 こうしたマトリクス組織は、職員が全学的な課題を念頭に置きながら担当学部での業務改善に努めるためのシステムともいえそうだ。
 全学共通業務のうち、教職関係や奨学金関係の事務など、専任の職員を置いた方が効率的な業務については、マトリクスからはずしてある。また、学部の窓口とは別に学生のあらゆる相談に応じる全学的な対応窓口として「何でも相談室」が設置されている。
 現在、「広報渉外オフィス」と「学生支援オフィス」に分かれている入試と就職の業務をどうするかという課題も抱えているが、基本的なフレームは完成した。

事務分掌の責任者は個人ではなくグループに

 マトリクス組織では、職員の仕事のやり方が大きく変化する。これまでは自分の担当業務だけでよかったものが、全学共通業務のグループ化によって、他の業務も理解しなくてはならない。そのため、「学生支援オフィス」では、事務分掌の担当責任者が個人からグループへと変更された。豊木昭芳事務局長は、「担当業務さえやっていればいいという意識を変えたかった」と、その理由を説明する。
 グループ全員で責任を持つことになると、担当者がいないために業務がストップすることもなくなり、引き継ぎも不要になる。全員がグループの業務に精通できるようになるわけだ。しかも、1年後の03年9月には組織が見直され、全学共通業務は3グループから「教務」「学生・就職」の2グループに再編され、担当業務の幅がさらに広げられた。「いずれはグループをなくし、1人で入学から卒業までのあらゆる全学共通業務を理解できるところまでもっていきたい」(黒澤専務理事)という。
 新しい組織では、少ない職員でより多くの業務をこなすことになり、経営効率を高める上で大きな効果を発揮する。それと同時に、職員の能力向上にもつながり、「これは企業でいう『現場の力』を強くするものであり、これからの大学経営において、もっとも重要な要素」(黒澤専務理事)と考えている。



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