ベネッセ教育総合研究所
特集 リーダーシップが生きる職員組織
産能大学
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事例紹介
部門横断型組織で課題に対応
産能大学
 産能大学では、部門横断型のプロジェクトを複数結成して全学的な課題に対処している。成果を人事考査の対象とすることでインセンティブを高め、職員個々の能力向上もねらう。

学生募集業務を束ねるプロジェクトが発足

 学校法人産業能率大学は、学生教育部門として産能大学と産能短大を、社会人教育部門として経営開発本部を設置している。各組織の業務には、重複するものも少なくない。
 例えば学生募集については、大学、短大、通信教育部などで個別に行い、それぞれにノウハウを蓄積してきた。しかし、志願状況が厳しさを増していることから、これらのノウハウを結集して全体的な活性化を図る必要が出てきた。こうした状況を背景に登場したのが、部門横断型のプロジェクトである。
 2003年4月に発足した「短大募集・広報強化プロジェクト」は、短大のとくに二部の学生募集や広報業務を強化する目的で設置された。
 メンバーは入試センター(大学事務部)、入学・職業支援センター(短大事務部)、教育交流室(通信教育事務部)、企画広報室、役員室から選ばれ、マーケティング・リサーチから戦略策定、具体的な広報ツールの制作までを行う。
 このプロジェクトによって、募集パンフレットの制作や交通媒体への広告展開などが、より戦略的に行われるようになったという。さらに、今年度から大学と短大の学生募集関係の部署が入試企画部に一本化されるなど、プロジェクト活動は組織の再編にもつながっている。
 このほか、経営開発本部、入試センターに、経営学部の教員が加わる「代官山プロモーションプロジェクト」(2003年7月発足)、入試企画部、マーケティングセンター(経営開発本部)、産能ビジネススクール(同)、役員室からなる「2005年度版MBAコース入学案内作成・広報プロジェクト」(2004年4月発足)など、年間10前後のプロジェクトが活動している。

ノウハウはメンバー一人ひとりの財産

 個々の部署では市場調査に基づいた戦略の策定までなかなか手が回らなかったが、学生募集のノウハウ共有を目指すプロジェクトだからこそ実施が可能になった。結果的に募集戦略が大きく変わることはなかったが、林巧樹入試企画部長は、「それまで経験と勘に頼ってきたことを、客観的なデータとして理解できたことは大きな成果。共同作業を通して、メンバー一人ひとりの中にそのノウハウを財産として残すこともできた」と、プロジェクトの意義を強調する。
 プロジェクトのメンバーは、各部署の責任者によって指名される。選ばれた職員は、所属部署の日常業務のほかにプロジェクトの業務もこなさなければならず、負担は増える。だが、プロジェクトは常勤理事会または大学改革推進委員会の下部組織として、理事長や常務理事が直轄するため、職員にとって「トップマターに加わることへのモチベーション」(林部長)となる可能性はある。
 ほかにもインセンティブを高める仕組みはある。同大学では、MBO(目標による管理)を使った人事考査を導入しており、職員は年度ごとに立てる五つの目標の達成状況で評価される。プロジェクトメンバーはその活動を目標にすることができるため、プロジェクトに取り組む姿勢や成果が評価に結びつくわけだ。
 とはいえ、評価はあくまでも所属長が行い、プロジェクトはMBOの五つある目標の一つにすぎず、通常業務の方が評価の比率が高い。「プロジェクト評価が前面に出ると、本業のミッションの達成がおろそかになりがち」(林部長)との懸念があるためだ。「プロジェクトに参加することで能力が高まり、求心力を持った人材として、その次のプロジェクトのコアメンバーに成長することが理想」(林部長)と、人材育成面での意義を強調する。
 他方、日常活動では会議スペースの確保をはじめ煩雑な業務も多く、必ずしも効率的な運営が図られているとはいえない面もある。「プロジェクトの支援、あるいは全体を統括する『企画室』のような組織ができれば、より効率的に活動できるのではないか」(林部長)と、今後の展開に期待する。



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