ベネッセ教育総合研究所
教育力の時代
PAGE 1/3 次ページ


教育力の時代―FDのその先へ―

第6回  ISOや地域連携を核として学生の実践力を育成する
武蔵工業大学環境情報学部
 武蔵工業大学環境情報学部は1997年度の開設以降、教育機関初のISO14001の認証取得、大学初の地球環境大賞特別賞受賞など環境活動が高く評価されている。それらの実績を教育とうまく融合させた取り組みは、03年度の「特色ある大学教育支援プログラム」にも採択されている。
EMSの啓発活動で環境意識を根付かせる

 武蔵工業大学環境情報学部のある横浜キャンパスに足を踏み入れると、7種類に区分されたゴミ箱が目に付く。学生がリサイクルのために、自主的に置いたものだという。横浜市のゴミは一括処理で分別は行っていないため、同学部では独自に分別したゴミの処理を専門業者に依頼している。建物内に入ると、「学生はエレベーターを使わないように」「使用後には消灯しよう」と書かれたポスターがあちこちに張られている。これも学生の手によるもので、キャンパス全体の環境への意識の高さがうかがえる。
 同キャンパスは、1998年に教育機関として初めて、国際標準化機構(ISO)が設けた環境に関する規格ISO14001の認証を受けた。それを教育にうまく融合させているのが、同学部の特徴だ。ISOの認証取得要件は、組織が事業活動を行う中で環境への影響を少なくするための目標の立案から実行、点検、改善までを行う環境マネジメントシステム(EMS)を確立し、外部審査に合格すること。社会的な環境意識の高まりを背景に、大学や高校など教育機関による取得は、04年3月末現在80件に上るが、EMSの構成員として学生全員を含めているのは同学部だけ、と環境情報学科の増井忠幸教授は話す。「4年間で卒業する学生を入れることには議論もあったが、環境教育の場なので、学生を入れなければ意味がないだろうと考えたのです」。
 ISO14001は、認証後もきちんとシステムが運用されているか毎年1回外部機関によるサーベイランスが行われ、3年ごとに更新審査も設けられている。EMSの構成員として位置付けられると、運営に直接携わらないまでも、ゴミの減量、省資源化など同学部が設定した環境目標を理解し、守らなければならない。学生にその自覚を促すための働きかけが入学式直後から始まり、導入教育の役割を果たしている。
 正課では、1年次前期に「環境マネジメントシステム」という科目を必修で設置。学部の教員や、ISOの審査を担う日本環境認証機構(JACO)の講師による、国際的な環境動向や環境技術などの講義のほか体験学習も盛り込む。ときにはキャンパスのゴミ箱の中身を全部出し、どの程度それらが分別されているかをゲーム感覚でチェックさせることもあるという。これは、身近なゴミ問題をきっかけに、環境問題を自らの問題として考えさせるための工夫だ。
 同学部には環境情報学科のほか、02年度に開設された環境メディア学科もある。その専門分野は情報システムや情報社会であるが、「環境マネジメントシステム」が必修となっていることについて増井教授は、このキャンパスで学ぶことによって、より高い環境意識を持ってもらいたいからと説明。
 環境情報学科の1年生に対しては、東京都や横浜市の汚水処理や廃棄物処理の施設などの仕組みを学ぶための見学も必修で設定。昨年度は、225人の学生が横浜市の南本牧最終処分場や金沢下水処理場など5施設を回った。その他、毎年希望者を対象に、オーストラリアの熱帯雨林保全活動や中国での砂漠緑化活動など海外フィールド研修も実施し、これを単位認定するなど、環境問題に対する意識を高めるための場を設けている。


PAGE 1/3 次ページ
トップへもどる
目次へもどる
 このウェブページに掲載のイラスト・写真・音声・その他のコンテンツは無断転載を禁じます。
 
© Benesse Holdings, Inc. 2014 All rights reserved.

Benesse