ベネッセ教育総合研究所
特集 顧客・応援団としての卒業生
重名恬
東京オフィス統括を務める
重名恬(じゅうなやすし)氏
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【レポート3】関西学院大学
異世代間交流のしかけ
東京オフィス設置で組織を強化
 関西学院大学は、03年9月に東京オフィスを開設し、様々な活動を展開している。オープンな雰囲気のサロン交流をはじめ、卒業生による卒業生のためのリカレント教育、学部学生へのキャリア教育支援構想など、今後の同窓会と大学の関係を考える上で興味深い取り組みが多い。
同窓会が先導した、大学の東京進出

 地方の国公立大学や大手私立大学が東京にオフィスを構える動きが目立つようになった。首都圏に基盤を持つことは、大学にとって情報の収集や発信に何かと有利なことが多いためである。関西学院大学東京オフィスは、その後発組として設置された。
 同オフィスの特色は、同窓会東京支部の事務局兼サロンと一体化している点にある。通常、同窓会は大学から独立した組織であり、事務局は大学と別に設置されることが多い。学内に置く場合でも、同窓会は「間借り」という位置づけで、機能は明確に区別されているのが一般的だ。
 しかし、同オフィスでは、大学の理事と同窓会支部長を兼ねる重名恬(じゅうなやすし)氏を統括とし、6人のスタッフは全員支部のメンバー。このほか同オフィスには常駐教授が1人いて、公開講座の開催など、東京での教学の核となる活動を担当している。
 大学職員は現地採用の4人で、本部からの派遣はない。大学との信頼と協力関係の下、同窓会が大学の業務も担っているわけだ。そこには、大学の東京進出を同窓会が先導した背景がある。
 1998年、同窓会は大学に対し、東京在住の卒業生の組織化と合わせて、大学本体を東京に進出させることを提案した。同窓会が先行して東京に支部を構えることになり、日本橋本石町に同窓会東京支部を開設。以来、そこを拠点とした交流を続けながら、東京における同窓生間の連携強化を図ってきた。
 大学の東京進出について、重名氏は「関西ではブランド大学としてのポジションを確立しながら、東京での知名度は今ひとつという、長年の課題に対応するための戦略」と説明する。この目的を果たす上で、東京の企業などで活躍する卒業生との連携が有効であると考え、活動実績のある同窓会支部との同居を決めた。
 東京オフィスは、本部の広報担当者による活動とは別に、戦略拠点として独自の活動を展開していくことを目指す。その役割の大きな部分を同窓会が担っているというわけだ。
 「社会にしっかりと根をおろしている卒業生には、大学にとって有益な情報が集まり、そこから情報が発信されていきます。つまり、卒業生一人ひとりが大学をPRする『メディア』となり得るのです。同窓会の大きな役割は、こうしたメディア力の育成と活用を考えることだと考えています」
 同窓会東京支部の試算では、現在、首都圏に約1万5000人の卒業生がいるという。その一人ひとりがメディアとして活性化すれば、これほど大きなアピール効果はないはずだ。同窓会会報とは別に支部独自の会報誌「コパン」を発行。「同窓生から大学に望むこと」や「同窓生として大学にできること」といった特集企画を組み、母校愛を育む働きかけも続けている。


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