教職員の協力体制が課題

　マーランドは「すべての教育は、キャリア教育であるべきだ」と言った。学校全体として取り組む必要があるという意味だ。しかし現段階での日本の大学におけるキャリア教育は、一つの部署単独で取り組まれているケースが多い。私たちが02年に大学を対象に行った調査では、56.1％の大学が、キャリア教育の実施部署を「就職・キャリア・進路担当部署」と回答している。主に教員が担当している大学はわずか6.6％である。
　この調査では、実施上の課題を「教員と事務部門間の協力体制」とした大学が68.9％と最も多かった（図表）。

　回答者のほとんどが就職部等の事務職員のため、事務側の問題意識が強く表れたのだろうが、教員がキャリア教育に協力的でないことを表している。次いで高いのが「カリキュラム編成上の問題」（57.7％）で、実施時間や教室の確保が課題になっていると思われる。キャリア教育が依然として課外活動的に位置付けられ、優先順位が高くないということであろう。教育活動全体として位置付けるという理念からはほど遠い。キャリア教育にしろ1年次教育にしろ、どんな効果を生み出すかはその手法にかかっている。
　学生に対する取り組みは、「マス対象」「中集団対象」「個別対象」という三つの段階に分かれる。最近はゼミなどを活用した中集団対象、面談による個別対象に力を入れる大学が多くなっている。
　アセスメント結果等の資料を活用しながら、入学時から学生一人ひとりときちんとコミュニケーションをとりたいという大学が増える中、私はこう助言している。個人面談の前提として、学生に「この先生は話をちゃんと聞いてくれる」という認識をもってもらうこと。そのために「最初に教員の判断を押し付けない」「学生のあいまいな話に耐える」という点に留意していただきたい。
　これに対して、「そんなことまでしなくてはいけないのか」という拒否反応を示す教員も多い。しかし、そこまでしなくてはいけないし、そんなことをする意味は大いにある、と私は思う。