ベネッセ教育総合研究所
特集 高等教育分野への新規参入者たち
 
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【レポート2 グロービス・マネジメント・スクール】
学位ではなく教育内容と独自の履修スタイルで受講生集める
 グロービス・マネジメント・スクール(GMS)は、文部科学省の認可を受けていない民間のビジネススクールとして、その実績を積み上げてきた。教育内容と履修スタイルがビジネスパーソンから支持を集めており、顧客(受講生)重視の姿勢は既存の大学にとっても参考となりそうだ。

1科目が3カ月で完結

 (株)グロービスが運営するグロービス・マネジメント・スクール(GMS)は、1992年に開校した経営分野専門の教育機関だ。受講生の約半数は30歳代のビジネスパーソンで、うち40%近くは企業からの委託研修者が占める。
 開校以来、延べ2万5000人以上が学んでいるが、これほど多くの受講生が集まっていることについて、統括責任者の寺西厚人氏は「必要に応じて1科目を3カ月間で学べる便利さや実践的な教育内容が、仕事を抱え多忙な毎日を送っているビジネスパーソンから評価されている」と見ている。つまり、教育内容や履修スタイルに魅力を感じているわけだ。文科省の認可を受けて教育を行うという方法もあるが、「学位を発行することよりも、まず教育内容を重視したい」(寺西氏)という姿勢を示している。
 GMSのカリキュラムは、1科目が3カ月で完結する。授業時間は平日の午後6時半以降と土曜日に設定されており、仕事を休まずに受講することが可能だ。また、十分な予習時間を確保するために一つの科目の授業は2週間に1度のペースで行われる。
 最も受講生が多い科目は「クリティカル・シンキング」で、7〜9月期は15クラスで約450人が学ぶ。論理的な思考方法の習得が目的で、他の科目を学ぶための基礎として位置付けられている。その他、マーケティングや人事管理に関する科目に人気が集まっている。
 修了生に対する企業側の評価は「論理的で説得力ある提案書が書けるようになった」「以前にも増して仕事に意欲的になった」など概ね良好だという。そのことが直ちに昇給・昇格に結びつくわけではないが、例えばマーケティングや経営企画など希望する部署への異動を果たした修了生も多い。

問題解決のプロセス学ぶ

 授業はケースメソッドを中心に行われる。急成長したあるカジュアル衣料専門店のケースメソッドでは、受講生は最近の経営状況に関する文章と財務諸表から、その企業の現状分析と今後の成長戦略を考えていく。例えば、ある受講生から「女性向けの商品を拡充してはどうか」との考えが示されると、別の受講生から「なぜ女性をターゲットとするのか」「販促活動はこれまで通りでいいのか」などの質問が飛ぶ。それに対して「価格面で消費者を引きつけてきたが、ファッション性を重視する女性層への浸透は十分でない」「女性誌とタイアップして販促活動を進めてはどうか」といった意見が提案者や他の受講生から示されるといった形で、ケースメソッドは進んでいく。その中での講師の役割は知識を教えることでなく、円滑に議論を展開させるファシリテーター(進行役)になることだ。
 GMSが「ケーススタディ」でなく「ケースメソッド」と呼んでいるのは、前者が客観的立場で事例から原理・原則を学ぶのに対して、後者は当事者の立場で問題解決のプロセスを学ぶという違いからだという。ケースメソッドを中心に授業を進めるのは「事例を通じて、経営知識だけでなく、論理的に考えて意思決定する手法を学び、ビジネスの現場で生かしてもらいたい」(寺西氏)との狙いがあるからだ。



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