ベネッセ教育総合研究所
特集 高等教育分野への新規参入者たち
 
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【レポート3 八洲(やしま)学園大学】
主婦層を対象にしたeラーニングで「家庭教育」の実践を目指す
 横浜市に本校を置く八洲学園大学は、インターネットによるスクーリング授業を導入した通信制大学として、今年度開学した。家庭教育課程を設け、子育て中の主婦層を取り込むことに成功。授業を同時配信するライブ型のeラーニングシステムを独自開発し、対面授業を超えたメリットも生み出している。

父母の再教育に焦点を当てたカリキュラムを構築

 八洲学園大学の設置者である学校法人八洲学園は、不登校や学習障害などにより高校を中退したり、進学を選択しなかった生徒を受け入れる通信制高校や高等専修学校を経営している。
 「こうした生徒の受け入れを通して、日本の教育問題の縮図を見続けてきました。日本の教育をよくするためには、親の再教育こそが最も重要な課題ではないかと考える中で構想したのが『家庭教育』という学問です」と、和田公人理事長は語る。
 一般的に子育て支援は、学校や民間組織の自主的な勉強会などで、必要に応じて行われている。しかし、「科学的分析に基づくデータを蓄積・体系化し、正確な情報として発信できる機関としては大学という形がふさわしく、家庭教育に関する研究もできる。そう考えて、大学を設置する計画が固まりました」と和田理事長。小さな子供を持つ女性をはじめ、できるだけ多くの人が学べるようにとの配慮から通信制を取り入れた。
 設置認可にあたっては、家庭教育というテーマが大学教育としてなじむのかというのが論点となった。設置審との度重なるやり取りを経て、八洲学園大学が考えているのは、個々の問題解決のための学習に終始するのではなく、家庭教育を理論として修得し身近な人に波及させていく学問である、というコンセプトを明確にしていった。
 子育てで勉強から遠ざかっている主婦層に目をつけ、家庭教育というテーマのカリキュラムを構築、独自のeラーニングシステムを導入し、学びやすい環境を整えたことが八洲学園大学の特色となっている。

男性にも家庭教育に関心を持たせる工夫

 八洲学園大学が設置する生涯学習学部には、二つの課程がある。家庭教育課程は、子育て中の女性がメインターゲット。家庭・学校・地域における子供の教育のあり方、問題解決方法などを学ぶカリキュラムとなっている。一方の人間開発教育課程は、意欲の高い企業人の再教育を目的に、マーケティング能力を養う科目など、社会人男性の興味を引きやすいカリキュラムをそろえている。
 「家庭教育では、最終的に父親の関わり方が重要」という和田理事長の考え方に基づき、八洲学園大学が力を入れる家庭教育に男性も引き込むための工夫がされている。男女それぞれの関心事に応じて課程を開設しつつ、人間開発教育課程でも家庭教育関連科目が学べ、いずれの課程でも、決められた科目を履修すれば、日本家庭教育学会が認定する「家庭生活アドバイザー」という民間資格を取得することが可能だ。「学科」ではなく「課程」としたのは、科目履修の柔軟性を最優先にしたからだという。
 入学者の男女比はほぼ半々だが、当初の予想通り、家庭教育課程は女性、人間開発教育課程は男性の比率が高くなっている。しかし、多くの学生がもう一方の科目を履修しており、今後その傾向がいっそう進むことが期待されている。



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